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2003年06月26日(木) 17時10分

遺伝子組み換え食品をめぐる米国とEUの対立でアフリカが焦点にWIRED

 ワシントン発——遺伝子組み換え食品をめぐる米国と欧州連合(EU)の対立は日を追うごとに醜い争いへと発展し、この争いに巻き込まれたアフリカは板ばさみになっている。

 米国のブッシュ政権は、 http://www.hotwired.co.jp/news/news/culture/story/20030625203.html EUによる遺伝子組み換え食品の輸入禁止措置がアフリカの貧困と飢餓を助長していると非難している(日本語版記事)。また、米国は、ヨーロッパへのトウモロコシの輸出から得られるはずの売上約3億ドルを失うという懸念も抱えている。同政権はこの禁止措置が不当だと主張し、世界貿易機関(WTO)にEUを提訴した。

 アフリカはこの問題で板ばさみになっている。というのも、アフリカのいくつかの国は農家に遺伝子組み換え作物を栽培させたいと考える一方で、最大の貿易パートナーであるEUからの制裁を恐れているのだ。

 南アフリカ共和国の『 http://www.mbendi.co.za/orgs/cdee.htm 全国アフリカ農民組合』のピーター・ラムトラ会長はワイアード・ニュースのインタビューに答え、次のように述べた。「問題なのは、植民地時代の遺産として、ヨーロッパとの間に消し去ることのできない歴史と、経済的な強いつながりが出来上がっていることだ。ヨーロッパは条約で結ばれたパートナーだ。商品の価格だけでなく何を栽培するかまでもが、彼らの決定に委ねられている」

 南アフリカ共和国で綿の栽培に従事するタンディウェ・ミエニ氏は、ワシントンDCで開催中の http://www.bio.org/events/2003/media/ バイオテクノロジー産業機構(BIO)の会議に出席し、遺伝子組み換え綿の栽培によっていかに生活が改善されたかを語った。ミエニ氏は夫を亡くし、5人の子どもを1人で育てている。

 ミエニ氏はインタビューの中で、「(子どもたちに)父親がいないために、援助を求めて一軒一軒回ることなど、もう必要なくなった」と述べた。「今では車を持っていて、支払いも滞りなく行なっている。4年前にはトラクターを購入した。こちらの代金は支払済みで、整備も問題なく行なえる。申し分ない生活を送っている」

 ミエニ氏は現在、自ら殺虫成分を作り出す http://www.ucsusa.org/food_and_environment/biotechnology_archive/page.cfm?pageID=360 Bt綿を栽培しているが、それ以前は4〜5種類の農薬を使用していた。これらの農薬によって気分が悪くなる作業員もおり、農薬に汚染された水を飲んで4人の子どもが命を落としたこともあった。ミエニ氏によると、Bt綿の種子は従来の品種よりも高価だが、高品質な綿を売って得る利益のほうが経費を上回るという。

 このような賛辞を聞いてしまうと、否定的な意見が出しづらくなる。

 しかし、環境保護論者たちは、短期的に見れば(綿やトウモロコシ、イモに導入された)Bt遺伝子は作物を改良するが、その効果は長続きしない可能性があると http://www.organicconsumers.org/patent/cottonban091001.cfm 主張している。Btとは、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)と呼ばれる土壌中の細菌から得られる一群の毒素のことで、有機農家も殺虫剤として用いている。

 Bt遺伝子が組み込まれた作物は絶えず毒素を放出するため、害虫が急速に——3年から5年以内で——耐性を獲得するのではないかと、環境保護論者は懸念している。そうなれば、有機農家も頼りにしていた自然の農薬を失うことになる。

 南アフリカ政府の農政担当者たちは、米国とEUの対立の板ばさみになりながらも、遺伝子組み換え食品の研究を進めており、こうした作物を植えたり、自国の科学者を独自製品の開発に取り組むよう促したりしている。

 ディラン・マキンデ氏によると、南アフリカの農家と科学者は、キャッサバ、サツマイモ、ソルガム(モロコシ)、ヤムイモ、雑穀といった国内向け作物の丈夫な品種を開発することを最優先しているという。マキンデ氏は非政府組織(NGO)『 http://www.africabio.com/index.shtml アフリカバイオ』の責任者を務めており、南アフリカにあるベンダ科学技術大学の農林・農村開発学部の教授でもある。

 「貿易について考えるよりも、自分たちを養うほうが先だ」とマキンデ氏。

 しかし、ジンバブエをはじめとするそのほかのアフリカ諸国は、EUとの貿易の将来を案ずるあまり、現在、自国の食糧問題を救う可能性のある遺伝子組み換え作物の栽培を控えると述べている。

 ワシントンDCにある『 http://www.nationalcenter.org/ 全米公共政策研究センター』のデビッド・アルマシ所長は電子メールで次のように述べた。「狂牛病のときのような事態の再発を恐れるヨーロッパの指導者たちは、貿易制裁を受けたくなければ遺伝子組み換え食品は諦めるよう、アフリカ各国の政府に圧力をかけている。ジンバブエなどの政府は、EU加盟国の中にある貿易パートナーを失うくらいなら飢餓の危険もいとわないという考えだ」

 EUは、自分たちの行動がアフリカの飢餓を助長しているとする米国の主張を否定している。

 EUの広報担当者は記者会見の席で、「米国の指摘は間違っている。われわれがバイオテクノロジーや発展途上国に対立する立場を取っているというのは誤りだ」と反論した。

(この記事にはロイターが協力した)

[日本語版:米井香織/長谷 睦]

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