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2003年06月25日(水) 17時40分

横行する「ドメイン乗っ取り」、登録会社の責任は?WIRED

 ジョン・ウィリアム・ラシーン被告(24歳)が今年3月、中東の衛星テレビネットワーク『 http://www.aljazeera.net/ アルジャジーラ』のウェブサイトを乗っ取った際、手の込んだプログラミングを行なったり、こっそりとデータを傍受したりする必要はなかった。ラシーン被告の手口は、身分証明書と署名を偽造し、ドメイン名登録サービスの最大手、 http://www.netsol.com/ 米ネットワーク・ソリューションズ(NSI)社に必要書類をファクスしただけだった。

  http://www.verisign.com/ 米ベリサイン社(カリフォルニア州マウンテンビュー)の子会社、NSI社はこれだけであっさりと、中東最大規模のニュースソースとなっているアルジャジーラのサイトを、カリフォルニア中部に住むラシーン被告へと http://www.hotwired.co.jp/news/news/culture/story/20030616206.html 移管してしまった(日本語版記事)。アルジャジーラはサイトを取り戻すため、技術や管理上の込み入った諸問題を解決するはめになった。しかし被害はこれだけでは収まらず、アルジャジーラには、NSI社のミスによって失われた広告収入と信用とを取り戻す術はなかった。

 アルジャジーラが被ったような被害は、それほど珍しい出来事ではない。ドメイン名の乗っ取りは何年にもわたって横行しており、規模の大小にかかわらず複数の企業が、単純な詐欺の犠牲となっている。2000年、現在は米ベライゾン・コミュニケーションズ社に吸収されている名門電話会社、米GTE社が、ドメイン名を乗っ取られた。GTE社のような大企業ならば、それほど苦労せずにドメイン名を取り戻す力がある。しかし小規模な企業や個人の場合、二度と取り戻せない可能性もある。そしてベリサイン社は、同社に責任はないと主張している。

 レスリー・ハーポルド氏は、盗まれた『 http://www.hoopla.com/ hoopla.com』というドメイン名を取り返そうと何年も争っている。しかしドメイン名登録会社は、この問題に関して中立を主張している。

 同様に、ドナルド・ワシリーナ氏は2月、『 http://www.gamesnet.net/ gamesnet.net』というドメイン名が盗まれていることに気づいた。数人の協力者が同名の会社を立ち上げた後のことだった。その後、登録アカウントのパスワードをリセットするようベリサイン社に要求している。ワシリーナ氏は、このような災難を防止するため可能な限りの厳重な対策——変更を実施する際にベリサイン社との間で間違いのない認証が行なわれるような設定をするなど——をとっていた。

 ワシリーナ氏によると、ベリサイン社はgamesnet.netを返還すると述べていたが、窃盗者たちはその前にこのドメイン名を別の登録会社に移管してしまっていた。これはドメイン名を盗む際の常套手段で、最初の登録会社の権限だけではトラブルを解決できなくなる。

 ワシリーナ氏はもはや、ドメイン名に関する方針を決定する『インターネット・コーポレーション・フォー・アサインド・ネームズ・アンド・ナンバーズ』(ICANN)が定めた仲裁規則をあてにせず、この窃盗に関与した複数の個人を相手取って連邦裁判所に提訴している。当初はベリサイン社を直接訴えることも考えたが、最終的に勝ち目がないと判断したという。

 ベリサイン社がユーザーに対して、ドメイン名をめぐる紛争で訴訟を起こす権利を放棄するよう求めていることも、同社が裁判を免れた理由に挙げられるだろう。同社はドメイン名登録の過程で、「弊社が負う全責任ならびにお客様ご本人に対する救済は……本契約の期間内にお客様が当該サービスに支払った金額を上限とします」という条項をユーザーに提示している。つまり、ベリサイン社は不正行為による損害賠償の上限をせいぜい200ドル程度と定め、ドメイン名の乗っ取りが起こった場合に、全損害額を補償する責任を回避しているのだ。

 ベリサイン社にコメントを求めたが、回答は得られなかった。

 インターネットを専門とするベテラン弁護士のブレット・フォーセット氏は、次のように述べている。「ベリサイン社は、商品ではなくサービスを提供している点と、契約にもとづいてサービス規約が定められている点を強調している。ここで言うサービスとはとくに、ドメイン名の登録サービスと、トップレベル・ドメインのゾーンファイルに特定のDNS情報を収容するサービスのことだ。もし問題が発生しても、登録者への法的救済は契約不履行に対するもので、不法行為責任に対する賠償ではない」

 過失に関するベリサイン社の見解については、裁判所がまもなく判断を下すかもしれない。

 ゲリー・クレメン氏は『sex.com』ドメインを乗っ取った男に6500万ドルの支払いを命じる http://www.wired.com/news/business/0,1367,54962,00.html 判決を勝ち取った。同氏はこれに加えて、そもそもドメイン名の移管を許したベリサイン社に対しても、4000万ドルの支払いを求めている。この訴訟でクレメン氏の専門家証人となっているエレン・ロニー氏によると、ベリサイン社の申し立ては第9巡回控訴裁判所で審理中だが、2月から進行が滞っているという。法律の専門家たちは、この訴訟で下される最終的な判断が、以降のケースに広範な影響を及ぼすと予想している。

 フォーセット氏はクレメン氏が勝訴すると思うと述べ、裁判所が現在、「株券のように法的権利を表わすものは、一種の財産でもある」と認識するようになっていると指摘した。

 今回のドメイン名乗っ取りに関する訴訟のほかにも、ベリサイン社は多数のトラブルを抱え込んでおり、不正マーケティングから代金の紛失にいたるまで、さまざまな問題で集中砲火を浴びている。また、『威力脅迫および腐敗組織に関する連邦法』(RICO法)に基づく訴訟も係争中となっている。さらに、シリコンバレーの『ベタービジネス・ビューロー』(BBB)は、同団体が処理したベリサイン社への250件余りの苦情に基づき、同社を「 http://www.bbbsilicon.org/commonreport.html?compid=204813 不満足」と評価している。

[日本語版:米井香織/湯田賢司]

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