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2003年06月23日(月) 00時00分

食糧庁、半世紀の歴史に幕 東京新聞

 食品の安全、安心への関心が高まる中、農水省は七月一日から、食品の安全管理や消費者行政を総括して担当する「消費・安全局」を新設し、消費者に軸足を置く行政へ組織上も転換する。同時に、農業生産者保護の代名詞だった食糧庁は廃止され、半世紀の歴史の幕を閉じる。牛海綿状脳症(BSE)問題を教訓にした組織改正は、戦後の食品・食料行政の流れを変えることになるのか、注目される。(経済部・砂上麻子)

●栄光の日々

 日本農業のシンボルといえばコメ。米価、流通に大きな影響力を持っていた食糧庁は、戦前の旧農林省食糧管理局を引き継いで一九四九年に誕生した。

 旧食糧管理法下は、政府のコメ全量買い入れで安定的な経営ができる稲作農家が、日本農業の主流となった。この間、食糧庁は米価決定を武器に、本省より政策面で大きな影響力を誇示した。

 「農水省といえば食糧庁だった」。全国農業協同組合中央会(JA全中)の山田俊男専務理事は振り返る。

 毎年夏の生産者米価(政府買い入れ価格)決定は、政府与党間の折衝で、六十キロ当たり数円、数十銭単位の激しい攻防となった。「早朝から深夜まで議論を見守った。年中行事のようなものだった」(山田専務)

●転 落

 だが、朝食にパン食が定着するといった食事の西洋化などで、コメ消費量が減少。生産過剰でコメ余りが問題になるにつれ、食糧庁の力は次第に衰えていった。ピーク時の六二年には国民一人当たり年間百十八キロものコメを食べていたが、二〇〇一年は約半分の六十三キロにまで落ち込んだ。消費量の低迷で生産量も減少。減反面積も拡大し〇三年度目標は百六万ヘクタールと過去最大になった。

 九五年の新食糧法施行で流通に市場原理が導入され、食糧庁の業務は、政府米管理に絞られてしまった。BSE問題をきっかけに組織見直し論が高まった際、矛先が食糧庁に向けられたのも、業務縮小に目を付けられたからだった。

 食糧庁は総合食料局食糧部に格下げとなる。各地の食糧事務所・支所も農政局と統合し、新設の地方農政事務所が仕事を引き継ぐ。

 食糧庁廃止に省内から疑問の声も一部にあった。だが農水省の幹部は「BSE問題で批判され、表立って反対しにくかった」と打ち明ける。

●BSEの教訓

 従来、食品のリスク(危険性)評価とリスク管理は同一省庁が担ってきた。このため生産者を重視する農水省は、BSEが発生した時、生産現場への打撃にまず配慮し、消費者向けの危険な情報を軽視した。

 消費者代表らが参加したBSE問題調査検討委員会は昨年、「重大な失政」と農水省の対応を批判した。

 これを受けて政府は消費者保護の観点から、リスク評価と管理の組織を分離。リスク評価は農水省から独立した新設の「食品安全委員会」へ移し、農水省には流通を監視する機能などリスク管理を担当する「消費・安全局」が設けられることになった。

●消費者の視点

 安全委員会は、寺田雅昭・先端医療振興財団副理事長ら科学者や専門家で構成され、食品の安全性を判定。農水省、厚労省に規制強化などを勧告する。消費・安全局は、食品分野の消費者行政とリスク管理を一体的に担うのが特徴だ。生産局が行ってきた動植物検疫、飼料の安全管理も消費・安全局に移る。生産振興中心の生産局から分離させて、省内で緊張関係を持たせる。

 これら組織の見直しで、失われた信頼を取り戻し、消費者の視点に立った行政を実現できるだろうか。

 雪印乳業社外取締役の日和佐信子さん(全国消費者団体連絡会前事務局長)は「リスク管理で透明性の高い情報公開が求められる」と指摘。安全委員会と行政が内部での議論を消費者に公開した上で「消費者をはじめ生産者、流通業者が十分、話し合う場もつくってほしい」と注文する。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20030623/mng_____kakushin000.shtml

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