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2003年06月22日(日) 11時36分

行政への暴力頻発、机たたき威圧「身すくむ恐怖」読売新聞

 暴力をちらつかせ、自治体職員に不当な要求を繰り返す「行政対象暴力」が頻発している。栃木県鹿沼市の幹部は、廃棄物処理をめぐる不当な要求に毅然(きぜん)とした態度をとったため、逆恨みされて殺された。

 検察側は公判で、市と業者のなれ合い体質を指摘したが、関係者は口をつぐみ、真相はいまだに明らかになっていない。行政対象暴力の背景には、役所の事なかれ主義も浮かんでいる。(社会部 清水健一郎、宇都宮支局 田中健一郎)

 ◆執ような攻撃◆

 「なぜ就任あいさつに来ないのか」。2001年4月、神奈川県大磯町役場の会議室。就任したばかりの助役(当時)は、十数人の男たちの執ような攻撃に耐えていた。

 ある団体を名乗る男らが1年ほど前から、10回以上も役場を訪れ、住宅貸付制度の限度額1980万円を上回る金額の融資を要求していた。渋る担当者に、男は「野焼きを放置する役場の姿勢は問題」と繰り返した。役所側は常に2人以上で対応したが、「机をたたいて、床に空き缶をたたきつける。恐怖で身がすくんだ」と職員は振り返る。「これ以上突っぱねると混乱を招く」と、町長(当時)は助役のもとに男たちが押しかけた直後、「政治判断で6000万円融資する。議会で補正予算を組む」と伝えた。2000万円の上乗せを要求されたが、それは断った。

 助役は「特定の者に便宜を図り、町に損害を与えれば、背任罪に問われる」と即日辞表を提出。退任のあいさつで、「公務員は一部の奉仕者ではない」と言い残して役所を去った。

 1週間後。不眠状態が続いた町長は、窓にカーテンを張ったワゴン車で役場を抜け出し、弁護士事務所に駆け込んだ。協議の結果、弁護士会や警察で処理チームを作り、約束撤回の通知書を送付することになった。1か月後、狭心症で倒れた町長に代わり、幹部が会見で事態を公表すると、執ような要求はぴたりと収まった。神奈川県警が、別の要求行為で男2人を職務強要容疑で逮捕したのはその年の11月だった。

 ◆甘かった「穏便に」◆

 当時の町長は21日、読売新聞の取材にこう答えた。「背後に組織的な圧力を感じた。穏便に済ませるつもりが、逆に食い込まれた。一時的にしろ要求をのんだことは甘かった」

 こうした行政対象暴力に取り組む関係者に衝撃を与えたアンケートがある。香川県警が2月、県内39市町の職員1426人に聞いたところ、「不当要求を受けた」と答えた280人のうち、56人が「要求に応じた」と回答したのだ。金を渡したケースも多く、その理由については、「何回も来るので面倒」「前任者からの引き継ぎ」という答えが目立った。

 ◆「お前の命30万で」◆

 千葉市産業廃棄物指導課には、「おまえの命を30万円で請け負う人間がいる」という脅迫電話が掛かってきたことがあった。不法投棄現場で、職員がパワーショベルで頭から砂をかけられたり、鉄パイプを振りかざされることもあり、同課はついに防刃ベストを購入した。「着ると、少しは気が楽になった」(職員)というが、特殊勤務手当は1日わずか120円。同課へ配属を希望する職員はほとんどいない。

 日本弁護士連合会(日弁連)と警察庁が今年初め、745自治体を対象に行ったアンケートで、回答した部署の3割が「不当要求を受けたことがある」という結果も出ている。日弁連民暴委員会委員長の矢島正孝弁護士は「行政では、周囲が見て見ぬふりをし、担当者だけが苦しむ傾向があるため、よけいにつけ込まれる。個人任せにせず、組織として対応すべきだ」と指摘している。

 ◆「癒着の職員、責任取らない」◆

 栃木県鹿沼市の環境対策部担当参事だった小佐々(こささ)守さん(当時57歳)が帰宅途中に拉致された後、殺害されたのは2001年11月。首謀者は市環境クリーンセンターに持ち込むごみを巡って小佐々さんと摩擦が絶えなかった元廃棄物処理会社社長(同61歳、自殺)とされる。「大声を出し、まるで暴力団」。元社長の振る舞いを、市の関係者はそう振り返る。「おれのごみのどこに問題がある」と小佐々さんをどなりつける一方で、市の上層部に巧みに取り入ろうとしたといい、ある幹部は「家の新築祝いに高級茶だんすを贈られて困った」と打ち明ける。

 検察側によると、こうした「なれ合い」は11年に及び、元社長は「便宜を受けるのが当然」と考えるようになった。「厳しすぎるほどきっちり仕事をする」と同僚に評される小佐々さんは、無法な要求を拒み、元社長に逆恨みされた。

 現在、市議会の調査特別委員会(百条委)が癒着の実態を調べているが、関係者は口を開かず、肝心の証言が集まらない。

 小佐々さんの妻、洌子(きよこ)さん(55)は「癒着のあった職員は責任をとらない」と憤る。仕事の愚痴を言わなかった夫が1度だけ、「不正をした業者にもうけさせてしまった。なぜ早く気づかなかったのだろう」と漏らした時の悔しそうな表情が忘れられないという。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20030622it02.htm

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