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2003年06月21日(土) 00時00分

食と安全−サクランボ編(1)山形新聞

 県内はいよいよサクランボの収穫がピークを迎えた。無登録農薬問題に悩まされた「果樹王国」にとって、再出発のシーズン。関係者は「山形の代名詞であるサクランボで、何とか弾みをつけたい」と口をそろえる。農作物の安全確保対策はようやく始まったばかり。産地の真価と実力が問われるのはこれからだ。
(食と安全取材班)

 「いや、見事だね」

 20日午後、全農山形本部が天童市内で開催した県サクランボ品評会。栽培管理が行き届いた鮮紅色の果実がきらきら輝き、審査員からため息が漏れた。

■極めて良好
 今シーズンのサクランボは、天候に恵まれて着色が極めて良好。最新の18日現在のデータで、同本部が扱ったサクランボの卸売価格は1キロ平均2214円で、やはり品質が良かった昨年の2147円を67円上回る。数字を見る限り、無登録農薬問題の影響は感じられない。

 時に宝石にも例えられる県産サクランボだが、県農林水産部が昨年度行った調査で、サクランボ農家33戸が輸入品の無登録農薬「ビーナイン」を購入していたことが判明した。散布すれば、果実が一層輝きを増す着色促進剤だ。

 無登録農薬問題が発覚したのは、サクランボの出荷が終わった昨年7月下旬だった。「ダイホルタン」「プリクトラン」の陰に隠れてあまり目立たなかったが、サクランボの生産現場にも無登録農薬の魔力に勝てなかった農家がいたのは厳然たる事実だ。こうした無登録農薬を購入した農家がいなかった寒河江市。特に300もの観光サクランボ園を抱えるだけに、以前から安全には気を配ってきた。さがえ西村山農協の担当者は「無登録農薬に関する問い合わせは皆無。こちらから営業で回った際に、1件あったぐらい」と話す。

■攻めの販売
 サクランボの生産量が全国トップの東根市。17日に市内3農協による「佐藤錦コンテスト」が開かれ、3人の組合長が顔をそろえた。東根市農協の青柳忠組合長は「絶対に安全、安心と言い切れる態勢ができた。見ての通り、品質と味が最高のサクランボばかり」と胸を張った。

 「農薬の懸念は払しょくされた。攻めの販売に取り組む段階だ」と山形東郷農協の岡田正義組合長。神町農協の安達宗一郎組合長も「安心感から大量注文が舞い込んでいる。むしろ出荷量が確保できるかどうか心配だ」と自信をのぞかせた。

 県と関係団体で構成する県安全・安心農産物生産流通システム管理委員会は本年度、全国に先駆けて主要品目の出荷前残留農薬検査を開始した。大部分の生産者は安全対策に敏感になったが、一部には『出荷前検査が面倒』とシステム構築に否定的な声が残る。

 天童市農協は昨年度、無登録農薬の影響で果樹・野菜部門の売上高が5億円も落ち込んだ。土屋完治組合長は「食という文字は、人に良いと書くでしょう? 安全・安心という言葉が上滑りしないように、苦い経験を忘れるべきではない」とくぎを刺す。

 ドル箱であるサクランボの季節に、あえて無登録農薬の話題を持ち出す必要はないという雰囲気があるのは確か。しかし、全国の関係者と消費者にとって、山形はもう「安全な産地」なのだろうか。

http://www.yamagata-np.co.jp/kiji/20030621/0000018393.html

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