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2003年06月15日(日) 11時12分

ネット心中・悲劇の連鎖、とめるつもりが…読売新聞

 インターネットで知り合った人が誘い合い、自殺を図る「ネット心中」が止まらない。今年に入って、少なくとも12件(未遂2件)にのぼり、30人が死亡した。大学生、会社員、フリーター……。2、30代の男女が大半だが、50代の男性も含まれていた。ネットで結ばれた「悲劇」の連鎖を断ち切らなくてはならない。(社会部・福島利之、甲府支局・大野潤三)

 ■パソコンに夢中

 「気付いたら、仲間に引き込まれていた」。ネットで知り合った3人と自殺をしようとしたが、一命を取りとめた埼玉県の男性(23)は入院中のベッドの上で、母親に打ち明けた。

 山梨県上九一色村の県道脇に止めた乗用車の中で、男女4人が倒れているのが見つかったのは、3月16日だった。窓は粘着テープで目張りされ、七輪の中で練炭がくすぶっていた。奇跡的に4人とも助かったのは、この男性がもうろうとする意識の中で、ドアを開けたからだ。

 男性は、親元を離れて1人で暮らしていた。のめり込みやすい性格で、大学に入ってからパソコンに夢中になった。父親がたまに立ち寄っても、パソコンに向かいながら生返事をするだけ。自殺系サイトにアクセスしたのは、志願者を思いとどまらせようと考えたからだという。その中に「生きるのがつらい。でも1人ではさびしい」という静岡の大学生の書き込みがあった。

 男性は、志願者の相談に乗るうちに、自分も就職に失敗したこと、アレルギーの持病を抱えていることが、心に重くのしかかるようになった。大学生が「練炭で逝きたい人、募集します」と書き込んだのは、2月22日のことだ。男性はその呼びかけに応じ、上九一色村に向かう車を用意する役を引き受けた。

 男性は4月に退院し、実家に戻った。駅に出迎えた父親に「すまなかった」と謝り、先月からはアルバイトも始めた。一緒に自殺を図った静岡の大学生から「立ち直った」というメールが届いたが、「返信しない」と話しているという。

 事件後、父親は自殺の話に触れないようにしている。「いつの間にか、息子が何を考えているのかわからなくなっていた。ネットのせいで、外の世界と離れていたから、死に向かおうとしたのか。友達もいた。内向的な性格でもなかった。それがどうして——」

 ■サイトに方法

 今年、ネット心中を図った37人(未遂7人)は男性23人、女性14人。20代が25人と多く、30代が8人、10代が3人、50代も1人いた。5月だけで4件あり、6月もすでに2件起きている。多くは、密閉した部屋や車で七輪を使う一酸化炭素中毒死だが、これは、「自殺系サイト」で方法が詳細に紹介されているためだ。

 埼玉県内のアパートで今年2月、男女3人が川の字になって死亡していた事件では、消防隊員が「よくもこれほど周到に準備をしたものだ」と驚いている。床にシートを敷き、窓には粘着テープの目張り。多数の練炭が、七輪の中などに置かれていた。部屋を用意した男性は「心中相手を募集しています。(自殺に必要なものは)全(すべ)て揃(そろ)え終わりました」とネットに書き込み、これに女性2人が応じていた。

 こうした「ネット心中」について、京都女子大の野田正彰教授(精神病理学)は「ネットで伝えられた通りの道具を用意し、手順通りに実行する。冷静な思考や、生きていることをいとおしむ感情が入り込む余地がなくなるのだろう。1人では寂しくて死ねない。2人だと特別な関係と思われてしまうから、3、4人が多くなる」と話す。

 また、日本いのちの電話連盟の斎藤友紀雄常務理事は「若者は、自己が確立されておらず、人の暗示を受けやすい。だれかが『死にたい』と言ったら客観視できずに同一化し、のめり込んでしまう」と分析。自殺志願者と日々応対している「いのちの電話」の担当者も「家族や友人など身近な人が小さな変化に気付き、どうして死にたいのか根気よく聞いてあげることが大切」と話している。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20030615ic02.htm

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