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2003年06月11日(水) 00時00分

にゅーすリポート 矢祭町の住基ネット接続拒否朝日新聞・


是正「要求」が焦点に

 矢祭町が住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)への接続拒否を続け、県から是正を勧告された問題は、今後、「是正の要求」が出されるかどうかに焦点が移った。法的拘束力がない「勧告」と違い、「要求」に対して、町は従わなければならない義務が生じる。だが、現実には従わなくても強制力はない。今後の流れを追ってみた。
(古源盛一)


義務伴うが強制力なく

■「要求」とは

 00年4月の地方自治法の改正で、「要求」が盛り込まれた。各大臣は都道府県や市町村の「自治事務」が法令違反または「著しく適正を欠き、かつ明らかに公益を害していると認める場合」に文書で是正を要求できる。これまで是正要求が出たことは一度もなく、矢祭町に出されれば全国初のケースとなる。

 今回の場合、総務相が県知事に指示を出して県が町に通知する方法と、総務相が直接町に通知する方法がある。ただし、直接の場合は「緊急を要するとき」に限られる。

 住基ネットを担当する総務省市町村課は「要求を出すかどうかを含めて今後の状況をみて検討したい。原則は県を通してと考えており、県と調整する」と話す。判断の時期は8月25日のネットの本格稼働の前か後かも未定という。

 是正要求が出されると町は「違反の是正に必要な措置」を講じなければならない。


■実効性は

 地方自治法の改正は、475本の法律が新設・改正された地方分権一括法の一つ。一括法は国と地方を対等の関係と見なすのが大原則だ。国が地方に関与する是正要求を巡っては当時、野党から反対論があった。同省も「中身にまで指導するのは強制にあたり、できない」という。

 必要な措置が仮に同省や県にとって「不十分」な内容であっても、町が「十分」と思ったり、実施時期を先に延ばしたりしても、同省や県は法律上はそれ以上の関与はできない。町が「要求」を無視した場合も代執行できない。

 そもそも「要求」については省内でも異論がある。同省行政課は「『要求』は伝家の宝刀。自治事務は本来、国が口出ししてはならず、規定があっても発動しないのがベストだ」と話す。


町側、拒否姿勢貫く構え

■不服ならく


 町が是正要求に不服がある場合、県から要求が出されたときは審査の申し出を総務相に出す。総務相は学識経験者ら3人を自治紛争処理委員に任命し、審査を要請する。

 総務相が直接要求した場合は、常設の国地方係争処理委員会(委員長・青山正明桐蔭横浜大教授)が審査する。JRA新税をめぐり、横浜市が審査を申し出たのが唯一の例だ。

 二つの審査は、町と総務省・県が互いの主張をぶつけ、意見陳述もある。審査結果は裁判の判決と同じように重く、さらに不服がある場合は高裁で争う。

 同町に要求が出た場合の対応について、根本良一町長は「住基ネットは拘束力も罰金も強制力もない自治事務」と話し、接続拒否を貫く姿勢だ。不服の審査を申し出た時に総務相が任命する自治紛争処理委員の独立性にも問題があるとの見方をしており、審査の申し出は「接続するのではないかと住民に余計な心配をさせる」と話している。


法の趣旨からは国は要求すべき

「新地方自治法」(岩波新書)などの著作がある兼子仁・都立大名誉教授の話

 地方自治法の趣旨から言えば、総務省は是正の要求を出すべきで、矢祭町も不服を申し出て争うべきだ。ただし、町が無視して断固頑張る方法も可能だ。接続の全部拒否が「問題なし」となっても、これ以上、全部拒否の自治体が増えるとは思えないが、是正勧告もない「個人選択方式」が広がる可能性がある。全国一律の住基システムへの影響は大きい。




《自治事務》

 地方分権一括法により、自治体の仕事は「法定受託事務」と「自治事務」に分けられた。本来は国の役割だが、国政選挙にかかわる事務など地方で処理した方が効率的な事務を自治体が法令によって引き受けるのが法定受託事務。自治体が違法の場合、国や県は「是正の指示」を出し、是正されない場合は代執行も可能となる。

 自治事務は、法令の範囲で自治体が地域の実情に合わせて自主的に扱うもの。住基ネットは住民基本台帳法によるが、住民票にかかわる事務は分権一括法ができる前から市町村の役割とされてきた。「法定自治事務」という法学者もいる。

(6/11)

http://mytown.asahi.com/fukushima/news02.asp?kiji=4226

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