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2003年06月10日(火) 16時50分

米加州、製造者に費用の全額負担を求める「電子機器リサイクル法」を審議WIRED

 電子機器廃棄物のリサイクルについて規定する法案が4日(米国時間)、カリフォルニア州議会上院を通過した。この法案は、コンピューターなどの電子機器の回収およびリサイクルに関して、その計画の策定と費用の負担をメーカーに義務付けるもの。

 法案は州下院における審議に移る。仮に下院で可決され、グレイ・デイビス州知事が署名すれば、メーカー各社は、ユーザーが古くなったコンピューターやモニターを持ち込むための回収拠点を設けることを余儀なくされる。さらにメーカーは、機器のリサイクル計画も提出しなくてはならない。こうした機器には、さまざまな有毒物質が含まれている。

 米連邦政府はこれまで、電子機器廃棄物の適切な廃棄方法に関して明確な指針を示していない。そのためいくつかの州議会が、法制化に向けて動いている。仮にカリフォルニア州で法案が可決されれば、業界全体に大きな影響を及ぼすとみられる。

 リサイクル問題は今日、コンピューター・メーカーに重くのしかかっている。カリフォルニア州環境保護局の有毒物質規制部門で廃棄物の識別に携わるチャールズ・コーコラン氏によると、カリフォルニア州内で1年間に廃棄されるテレビとコンピューター用モニターは、合わせて275万台に達するという。1日当たりおよそ7500台という計算になる。

 今回の法案を起草したバイロン・シャー州上院議員(スタンフォード地区選出、民主党)は「われわれのねらいは、不法投棄を禁止することだ」と話す。

 現状では、メーカー側には自社製品をリサイクルする義務はない。

 規制がないため、不要になった機器は、普通のゴミ収集車によって回収されるなど、不適切な場所に廃棄されることもある。非営利団体『 http://www.cawrecycles.org/ 無駄な消費に対抗するカリフォルニアの会』(CAW)の責任者を務めるマーク・マレイ氏によると、ゴミ収集車の中でもみくちゃにされると、モニターのガラスに含まれる微細な鉛が、他のゴミといっしょにされたあげく、埋立地に投棄されてしまうのだという。そうした投棄場は、鉛などの有害廃棄物を処理するには不適切だ。

 さらに、環境保護団体『 http://www.svtc.org/ シリコンバレー有害物質問題連合』(SVTC)と『 http://www.ban.org/ バーゼル・アクション・ネットワーク』(BAN)が昨年発表した報告書によると、米国内で排出される電子機器廃棄物のうち、かなりの割合——5割から8割とみられる——が中国、インド、パキスタンといった途上国に輸送されているという。これらの国では、環境に関する規制はないに等しいためだ。

 シャー議員が提出した法案では、すべてのコンピューター・メーカーに対し、不要になった機器をリサイクルする計画の立案と実施が義務付けられている。また、電子機器廃棄物の回収および運搬にかかる費用も負担しなくてはならない。こうした行動をとらない場合、メーカーは、金額は未定だが、州に対して何らかの支払い義務を負う。

 米ヒューレット・パッカード(HP)社でグローバル・パブリック・ポリシーの責任者を務めるデビッド・アイザクス氏は今回の法案に対して次のように述べる。「この法案により、メーカーが全面的に責任を負わされることを懸念している。われわれとしては、消費者、政府、小売業者なども含め、関係する者が責任を分担すべきものと考えている」

 アイザクス氏は、HP社としては、山積みにされた電子機器廃棄物を回収拠点から輸送することは厭わないが、各地域に回収拠点を設ける責任まではないと話す。一方、CAWのマレイ氏は、製品に有毒物質を使用したのはコンピューター・メーカーである以上、廃棄についても、メーカーが全面的に責任を負うべきだと主張する。

 「責任を分担するのはいい考えだが、実際には、製品の設計について決断し、有害物質を使用したのはHP社だ」とマレイ氏は言う。「他の関係者にはそうした権限はない」

 今回の法案では、メーカーに対し、まず2005年までに、販売した機器の50%を回収するよう義務付けている。さらにその数字は、2010年までに90%に引き上げられる。

 「こうした回収の目標数値は現実的ではないし、実情を考慮していない。根拠のない数字のように思われる」とアイザクス氏は話す。

 CAWがまとめたデータによれば、2002年には、カリフォルニア州内で不要になったコンピューターのうち、リサイクルされた割合は、わずか11.5%にとどまる。電子機器のリサイクルを行なう組織としては、カリフォルニア州では民間会社が数社と、労働力として囚人を使う政府傘下の組織が1つある。ただしリサイクル方法はまちまちだ。

 HP社のリサイクル施設では http://www.wired.com/news/images/0,2334,58850-7365,00.html 破砕機(写真)が使われており、大きなコンピューターが、ものの数分で http://www.wired.com/news/images/0,2334,58850-7369,00.html 粉砕される(写真)。これとは対照的に、米デルコンピュータ社が電子機器廃棄物を持ち込んでいるカリフォルニア州アトウォーターの連邦刑務所では、囚人たちがハンマーを使って機器を解体している。

 どちらの方法が効率がいいかは、明らかだ——HP社が1ヵ月間に処理する廃棄物は1300トン強にのぼる。刑務所における処理量は明らかにされていないが、HP社のほうがきわめて効率的なのは、政府関係者も認めるところだ。

 シャー議員による法案が、現在の内容のままで承認され、電子機器廃棄物の90%を回収する義務が生じれば、コンピューター・メーカーは、消費者からの回収率を大幅に引き上げなければならない。

 現在でも多くのメーカーは、何らかのリサイクル・プログラムを実施している。通常は、消費者が15〜50ドルの費用を支払えば、メーカーが不要になったコンピューターを引き取り、リサイクルに回す。

 シャー議員提案の法案が州下院で承認されるかどうかは、現在のところ定かでない。昨年、同様の法案がカリフォルニア州議会の上下院を通過したものの、デイビス州知事が拒否権を行使した経緯もある。

 昨年廃案になった法案は、メーカーがリサイクル費用を州に支払うよう義務付けるものだった。一方で現在審議中の法案では、メーカーが独自のリサイクル計画を立てるか、あるいは州に費用を支払うかを選択できるようになっている。メーカー側は、独自の計画を立てる方がコストを抑えられるのではないかとみている。

 カリフォルニア州では現在、州の財政赤字が380億ドルに達すると見積もられている。このためデービス州知事は、州にこれ以上の負担を強いることになる案件には難色を示してきた。シャー議員は、今回の法案を起草するにあたって、そうした事情を十分に考慮したと述べている。

[日本語版:長谷 睦/多々良和臣]日本語版関連記事

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