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2003年06月06日(金) 03時00分

裁判員制度:メディア規制 出身母体で割れる意見毎日新聞


 国民が裁判官と一緒に刑事裁判の審理・評決に加わる裁判員制度をめぐり、裁判員に課せられる守秘義務や裁判員への接触禁止規定などと、裁判員や報道機関の「表現の自由」、国民の「知る権利」とをどう調整するかが重要テーマに浮上している。議論を進めている政府の司法制度改革推進本部「裁判員制度・刑事検討会」の委員の意見も割れているが、裁判官や検察官ら「官」経験者が厳しい守秘義務やメディア規制は必要との立場をとる傾向が目立っている。【伊藤正志】

 政府の骨格案(たたき台)では、(1)裁判員に評議について広範な守秘義務を任務が終了しても課し、違反には懲役刑も科す(2)裁判員に対する第三者の接触禁止の規定を設け、実質的に報道機関の取材行為を制限する(3)裁判員の予断を排除するとの理由で、報道機関に偏見報道をしないよう配慮させる義務を課す——との規定が盛り込まれている。

 (1)の守秘義務については「裁判終了後まで厳しい罰則を伴うのは、国民に与えるプレッシャーが大きすぎる」(四宮啓委員=弁護士)、「裁判終了後、本人が自分の責任で意見を言うのは許されるのではないか」(大出良知委員=九州大教授)などの意見に対し、「評議の秘密は裁判の信頼性、公正さを守るために最大限守らねばならない」(高井康行委員=弁護士、元検事)、「評議の秘密は罰則で担保するしかない」(本田守弘=検事)などの反論が出た。

 (2)の接触禁止については「裁判員だった者への接触禁止については削除すべき」(四宮委員、土屋美明委員=共同通信論説委員)、「メディアの自制に期待したい」(大出委員)に対し、「裁判が終了しても守秘義務は守られるべきで、裁判員終了者についても接触は認められない」(本田委員、酒巻匡委員=上智大教授、平良木登規男委員=慶応大教授、元裁判官)と意見は真っ二つ。

 (3)についても「業界の自主的ルールづくりが進んでおり、削除すべき」(土屋委員)、「社会にとって自由な情報の流通は大切。外国でも法律での規制は例外的」(四宮委員)との規制不要論に対し、「偏見のない裁判員確保のためには規定は必要」(本田、高井、酒巻各委員)と対立している。

 議論に参加した委員は、座長の井上正仁・東京大教授を除き9人。学者3人、弁護士2人、裁判官、検察官、警察庁課長、通信社論説委員が各1人。このうち弁護士と学者の各1人は、それぞれ検察官、裁判官出身者。全体的に「官」経験者は第三者やメディアの裁判に対する影響を極力避けることを重視し、「知る権利」「表現の自由」に重きを置くのは一部の弁護士や学者ら「民」に偏る傾向が出ている。

   ◇各委員の主な発言◇

池田修委員(東京地裁判事)

 現職の裁判員へはメディアは接触すべきでない。裁判員終了者については「知り得た事件の内容を公にする目的」での接触を禁止すると若干広すぎるので、守秘義務を侵す目的での接触を禁止すべきだ

大出良知委員(九州大教授)

 守秘義務に刑罰をもって対処するのが妥当なのか検討の余地がある。裁判員への接触は、メディアの自制に任せるべきで、偏見報道の禁止規定も設けない方がいい

酒巻匡委員(上智大教授)

 裁判員に対する裁判官と同様の守秘義務や、接触禁止の規定は骨格案通り必要。裁判員は公正な裁判をするのが仕事だ。偏見報道を禁じることにも異論はない

四宮啓委員(弁護士)

 裁判終了後にまで罰則を伴った守秘義務を国民に課すのは相当なプレッシャーになり、制度にとってマイナス。報道・表現の自由を重視すべきで、裁判員終了者への接触禁止や偏見報道禁止規定は削除すべき

高井康行委員(弁護士、元検察官)

 評議は判決書がすべてで、自由な意見表明などしたら、裁判への信頼が揺らぐ。ただし、メディアが制度の運用の検証をするのは必要。偏見報道禁止規定は、現実問題として必要

土屋美明委員(共同通信社論説委員)

 メディアの自主的ルールづくりが始まっており、偏見報道の禁止や、裁判員終了者への接触禁止は削除すべき。裁判員への守秘義務は範囲や期間を限定し、量刑も罰金刑にすべき

本田守弘委員(最高検検事)

 評議の秘密が守られなければ裁判体の結論は不安定になる。守秘義務は必要で、罰則で担保するしかない。裁判員終了者への接触も認められない。偏見報道の禁止も、配慮義務に過ぎず必要な規定

平良木登規男委員(慶応大教授、元裁判官)

 守秘義務が必要なのは裁判の独立が必要だから。裁判員を事件関係者から守るためにも、接触禁止の規定は必要で、裁判員終了者への規定も置くべき

樋口建史委員(警察庁刑事局刑事企画課長)

 社会が裁判員の経験を共有できることがあるのではないか。裁判員の守秘義務について言えば、その経験の共有を罰則が阻害しないようにすべきだ

[毎日新聞6月6日] ( 2003-06-06-03:00 )


http://www.mainichi.co.jp/news/flash/shakai/20030606k0000m040137000c.html

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