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2003年06月05日(木) 00時00分

カルテ開示 やはり法制化が必要だ 東京新聞

 厚生労働省のカルテ開示に関する検討会がまとめた法制化見送りの報告書は、国民の信頼に全くこたえていない。医療機関の都合で開示が左右されないような体制を早急につくるべきである。

 五月末にまとめられた検討会の報告書に多くの国民は失望したことだろう。反対に、喜んでいるのは日本医師会ぐらいではないか。

 先に成立した個人情報保護法により、患者本人が求めれば原則として医療機関はカルテを開示することが義務付けられた。日医にすれば、これ以上の法的な措置は不必要ということだろう。

 だが、個人情報保護法の対象は、生存している個人であり、遺族への開示は対象外である。これについて報告書は、医療機関の自主性に任せ、指針を示すにとどまった。

 日医の言うように、医療機関が自発的に開示すれば問題はないが、医師と患者の力関係が対等でない中では、患者の方からはなかなか開示請求はしにくい。まして遺族となると、訴訟のためと勘ぐられ、いっそう言い出しにくくなる。

 法制化は、こうした事態が起きないように、言い換えれば、開示請求は患者や遺族の権利としてはっきりさせるために必要なのだ。

 個人情報保護法は、カルテについていえば、そこに記載された情報を保護するということに重点が置かれているが、カルテの開示の意義はそれだけにとどまらない。

 報告書が冒頭に、カルテ開示の必要性について、患者と医療従事者との信頼関係の構築、情報の共有化による医療の質の向上、医療の透明性の確保、患者の自己決定権や患者の知る権利の保障などを挙げているように、もっと積極的な意味を持つ。

 個人情報保護法の付帯決議に、医療などについては早急に個別法を検討するよう盛り込まれたのはこのためのはずである。報告書がこれをあいまいにしたのは納得できない。厚労省は個人情報保護法とは別に、患者の権利を主体にした医療に関する基本法の立法化に向けた検討に乗り出すべきだ。その際、カルテ改竄(かいざん)防止も法的に整備する必要がある。

 カルテ開示については、旧厚生省の検討会が一九九八年に法制化の提言をまとめたが、日医の反対で日の目を見なかった。五年経過して、先の検討会よりも後退した結論を出したのでは、国民の理解は得られないだろう。

 今回の検討会では、以前のような活発な論議は見られず、最初から結論が予想されていた。委員の選任、構成にも問題があったことを厚労省は反省しなければならない。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20030605/col_____sha_____003.shtml

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