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2003年06月01日(日) 03時02分

腸閉塞を放置、男児死亡 東京・東部地域病院朝日新聞

 東京都内の病院で今年3月、5歳の男児が亡くなった。腸がねじれて急激に悪化する腸閉塞(へいそく)だった。苦しむ子が病院に運ばれたのは朝。家族や看護師は何度も「早く診て」と訴えたが、当直医は「待たせておいて」と放置した。容体が悪化するなか、日勤の医師も昼過ぎまで、一度も病室を訪れなかった。小児救急の充実をめざす病院で起きた出来事だった。

 東京都葛飾区に住む保育園児、豊田理貴(りき)ちゃんが苦しみだしたのは、父親の実家に泊まりに行った3月9日未明、日曜日のことだ。

 急におなかを抱えて「痛い、痛い」と泣き始めた。母親(35)がみると、腹部がパンパンにはれている。午前4時半ごろ、近くの東京都保健医療公社「東部地域病院」に運んだ。以前、治療を受け、休日でも小児科が診てくれるので選んだ。

 いったんは痛みが治まったので、家に戻ったが、はれが引かない。心配で再び病院に連れて行ったのが午前7時半。顔は真っ青。苦しいのか、何度も寝返りをうった。

 だが、当直の小児科医はなかなか現れない。

 看護師が当直室に3度、連絡した。看護師が気づいたことを医師ら病院職員が回覧できるようにつづっておく「状況報告書」には、こう記されている。

 看護師 顔色が悪くおなかもふくれている。待てそうにないのですが。

 当直医 なに考えている。待たせておいて。病棟処置中とか言ってさ。

 3分後、再び電話。

 看護師 すぐ診ていただけませんか。

 当直医 いいから待たせておいて。

 さらに10分後。

 当直医 いま顔洗ってるから。

 医師が診察した時刻は「午前8時前」となっている。

 母親によると、腹部のX線撮影などをした後、理貴ちゃんを診察した。「腸が詰まってガスがたまっている。もう一度浣腸(かんちょう)して検査しましょう」と言い残して、部屋を出た。点滴、通常の浣腸以外の処置はなかった。

 当直医はその後、一度も様子を見に来ず、午前11時ごろに帰宅した。日勤の小児科医に「重い腸閉塞の子がいる」と引き継いだが、X線写真は見せていなかった。

 病棟に移った理貴ちゃんの容体は次第に悪化した。

 突然、起き上がろうとする。「ハアハア」。息が荒い。母親が「痛くない?」と聞くと、「痛くない」。ニッコリほほ笑む。我慢強い子だった。

 やがて、「アリさんのおうちが見える」。うわごとだった。天井に手を伸ばし、何かをつかもうとする。

 母親が看護師に「先生に伝えてください」と訴えたが、医師は来ない。

 午後1時半すぎ。急に口と鼻から、液状のものを吐いた。黒茶色。呼吸が弱まる。看護師が医師を呼びに走った。

 日勤の医師が駆けつけた。パジャマをまくりあげると、下腹部がどす黒く変色していた。内出血だ。薬剤投与に心臓マッサージ。一時、持ち直した。が、午後4時すぎ、亡くなった。死因は司法解剖で、絞扼(こうやく)性イレウス(腸閉塞)と判明した。

 家族はX線フィルムを病院から入手した。下腹部に、ふつうではあり得ない水平な線が何本も写っている。腸閉塞の証拠だ。大量のガスが充満していることは、カルテに書かれている。

 本紙記者が複数の小児科医にX線写真をみてもらった。「重い腸閉塞の場合、鼻から管を入れてガスを抜くか、高圧浣腸で様子をみる。だが、これだけたまったら、すぐに手術を検討するケースだ」と指摘した。

 救急外来の看護師は報告書に医師を非難する言葉を残した。「迅速な対応をしてほしかった」

 病院側は、その日の当直の状況や引き継ぎなどについて調べている。

     ◇

 鈴木謙三・東部地域病院長の話 当初はベストを尽くしたと考えていたが、内部調査で医師が入院から急変までの間、回診に行けなかったことなど至らない点が明らかになった。ご家族におわびするとともに、病院の診療体制を見直し、医師をはじめとした医療スタッフの対応が適切だったかどうかについて、今後検討していきたい。(06/01 03:00)

http://www.asahi.com/national/update/0601/006.html

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