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2003年05月26日(月) 18時12分

ウェブの生みの親、ウェブ技術の特許を主張する風潮に警鐘WIRED

 ハンガリー、ブダペスト発——人間とその思考はワールド・ワイド・ウェブと同じだ。つながることで、より有益で興味深いものになる——1980年にウェブの基本構想を生み出したティム・バーナーズ=リー氏は、こう主張している。

 ブダペストで開催された第12回『 http://www2003.org/index.html ワールド・ワイド・ウェブ国際会議』で、21日(現地時間)に http://www.w3.org/2003/Talks/0521-www-keynote-tbl/ 基調講演を行なったバーナーズ=リー氏は、「データはウェブであり、人生はウェブだ……断片化と統合化の間にはつねに緊張関係が存在する」と述べた。

 「ウェブの予言者」の異名をとる http://www.wired.com/news/images/0,2334,58942-7415,00.html バーナーズ=リー氏(写真)は、現在ウェブの開発標準を勧告する国際組織『W3C』(ワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアム)の管理責任者を務めている。

 バーナーズ=リー氏が取り組んでいるのは、細分化で革新を抑圧する商業的な利益追求からウェブを解放し、同時にウェブの発達から利益が得られるよう機会を提供することだ。

 だが、この2つの均衡を取るのは非常に微妙で、ときには相反する利害の調整が必要な問題を含むことは、今回の講演でも浮き彫りになった。同氏は、ウェブを繁栄させるためにはオープンでフリー、革新的で包括的で、何者にも独占されない状況を維持するべきだと強く主張している。

 講演が終わりに近づくと、バーナーズ=リー氏はデータ管理とアクセスのための新しい方法が必要だと語り、いかにも衝撃的だという身振りとともに、「うわあ、世界が丸ごとノートパソコンに入っているぞ」と大声で叫んだ。

 そして聴衆に向かい、ウェブには商業的関心と技術的関心の両方からの取り組みができることを納得させようと説いた。

 バーナーズ=リー氏がウェブを将来も機能させるための計画として新たに打ち出したのが、論議を巻き起こしている『 http://www.w3.org/Consortium/Patent-Policy-20030520.html W3C特許ポリシー』(W3C Patent Policy)だ。これによって、ウェブ・インフラの発展を阻害している特許権という脅威を緩和できるという。

 この特許ポリシーは、今まで一般に広く認められてきた原則を正式な形にしている。すなわち、標準として採用された技術は、ライセンス使用料を課されることなく、使用を望む者すべてに自由に提供されるべきだというものだ。

 バーナーズ=リー氏は、 http://www.hotwired.co.jp/news/news/business/story/20030325106.html コンピューターのオペレーティング・システム(OS)(日本語版記事)から http://www.hotwired.co.jp/news/news/business/story/20020826105.html ハイパーリンク(日本語版記事)、 http://www.hotwired.co.jp/news/news/business/story/20030127104.html ウェブサイトのデザイン(日本語版記事)に至るまでのありとあらゆる技術で、広く普及して何年も経ってから突然だれかが特許権を主張し、ライセンス使用料を請求するという事態が大きな問題になっていると語った。

 新しい特許ポリシーはW3Cのメンバーに対し、標準として検討されている技術に関連しそうな特許を保有している場合はすべての情報を公開すること、審査中のウェブ標準の草稿を閲覧して特許関連の問題に気づいたときはW3Cに警告することを求めている。

 さらにW3Cは今後、ウェブの基幹フレームワークに関する勧告を作成する際には、特許が設定されていないフリーの技術を優先して用いるという。

 予期せぬ特許権を主張された場合は、諮問機関による調査を行ない、特許の法的な分析が必要かどうか、その技術を標準勧告から外すべきか、あるいは——非常にまれなケースとして——該当の特許技術を標準に含めるべきかを決定する。

 バーナーズ=リー氏は、このポリシーにより「標準に準拠したアプリケーションにライセンス料を課すことで」収入を得ようとする戦略を阻止できるのではないかと考えている。

 「このポリシーは、確かにある種のビジネスモデルにとって脅威と取られかねない決定を含んでいる。だが、ウェブの発展に貢献し、ウェブの成長によって利益を得たいと願うすべての人々にとっては、売上という観点からも、正当な指針だと思う」

 「しかしこれは、すべてのウェブ技術からライセンスを排除しようとするものではない。むしろ、基幹ウェブ・インフラの継続的な成長を支え、ウェブ関連市場を全体として成長させることで、ウェブを利用するアプリケーションから(特許ライセンス料を含めた)金銭的な利益を得る機会は増える」

 バーナーズ=リー氏によれば、W3Cメンバーの大多数はこのポリシーに賛成している。「反対を表明したメンバーも……ウェブの発展に協力するほうが利益になるとわかるときが来るだろう」

 ポリシーには、限定付きで特許技術を開発標準として採用する場合の条件も含まれている。ウェブ標準には絶対に特許技術を含めるべきではないという主張があることはバーナーズ=リー氏も認めており、この条文も数年にわたる議論の末、やっとW3Cで承認された。

 バーナーズ=リー氏を壇上に導いた会議の共同議長、ベボ・ホワイト氏は、この会議を「ワールド・ワイド・ウェブの歴史上最もとんでもない(pluggest)会議」とあだ名をつけた。会議が開催されているブダペスト会議センターの電気コンセント(plug)の数が足りなかったことを皮肉ったのだ。

 21日にも、ワークショップやプレゼンテーションの合間に、ノートパソコンを抱えた参加者たちが会場を歩き回り、貴重なバッテリー残量を少しでも長持ちさせようと腐心しつつ、会場の無線ネットワークに接続しようと何度もトライする姿が見られた。

 会場でいちばん耳にしたのは、ハンガリー語の「コンセントはどこ?」という質問だった。

 会場の無線インターネットサービスはいささか心もとなかった。そもそも、オンラインへのべつ接続していたがるような技術オタクたちが1000人も集る事態は想定していなかったせいかもしれない。

 でも心配は無用だ——会場の周囲の公園では、良好なワイヤレス接続が提供されている。カールマン・コバーチ情報通信大臣によれば、それもこれもすべて、技術面でヨーロッパの中心になることを目指すハンガリー政府のたゆまざる取り組みの一環なのだという。

 コバーチ大臣は、会議の冒頭、ハンガリーにおけるハイテク産業の状況(非常に良好であり日を追って向上している)を語った。

 「実り多い1週間と切れ目のないブロードバンド接続」を祈って、観客の笑いと拍手喝采を得たのち、コバーチ大臣はバーナーズ=リー氏を壇上へと招いた。

 バーナーズ=リー氏は、長年温めてきた計画『 http://www.w3.org/2001/sw/ セマンティック(意味論的)・ウェブ』に力点を置きすぎているという批判を受けている。商業的に不可欠なウェブの開発、たとえば別個のウェブサイトやアプリケーションに簡単にアクセスしてパッケージし直せるウェブサービスといったような、差し迫った問題がなおざりになっているというわけだ。

 こういった批判に対し、バーナーズ=リー氏は基調講演でセマンティック・ウェブとはデータ統合のメソッドだと定義し、ウェブサービスとセマンティック・ウェブは十分に両立が可能だと述べた。

 ウェブサービス標準は早急に開発が必要だが、セマンティック・ウェブは将来像なのだという。来るべきセマンティック・ウェブ標準がウェブを塗り替え、はるかに便利で使いやすいものにすると、同氏は強調した。

 第12回ワールド・ワイド・ウェブ国際会議で披露されたアイディアやニュースなどの生の情報は、出席者によって作成された http://www2003.xmlhack.com/ コミュニティー・ブログで入手できる。

[日本語版:長谷 睦/鎌田真由子]日本語版関連記事

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(WIRED)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030526-00000002-wir-sci

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