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2003年05月24日(土) 00時00分

個人情報保護法 識者はどう見る朝日新聞・

法必要だが未熟 運用監視しよう
会津大助教授(IT法) 清野正哉教授


 欧米に比べて、法制化が遅れていた日本にとっては最初の一歩。ネット社会が進展する中で法は不可欠であり、そこは評価したい。

 しかし、内容は未熟だ。例えば、個人情報の勝手な利用、目的外使用があったら本人は利用停止を請求できるが、本人が気づいていなかったらどうするのか。一瞬で情報が世界中に配信される現在、知らぬ間にプライバシーがネット上で公開される事件もある。このようなITの現状を法は十分踏まえていない。

 地方自治体の対応も問われる。法は地方自治体に個人情報の適正な取り扱いを求めているが、個人情報保護の条例や考え方は自治体で異なる。自治体職員の人権感覚は本当に十分か、と不安が残る。また、隣町で保護されていることが我が町で公開される、という心配はないか。

 すべての人に関係ある法であり、私たちは今後、運用を監視し、不正があれば、法をてこに国を追及しなくてはいけない。また、医療、金融などの個別法づくりや法の運用について、国はさらに、国民の声を反映させる努力をすべきだ。


目的外利用可能 満足できぬ内容
住基ネット訴訟弁護団 斉藤正俊氏


 住民基本台帳ネットワークの導入が決まったとき、政府は個人情報保護法を整備すると言ったが、満足できる内容ではない。防衛庁が犯した一連の情報の不正使用をみれば、目的外の利用はやろうと思えばできてしまう。法律には不正アクセスを抑制させる防波堤がない。

 行政個人情報保護法は情報漏洩(ろうえい)があった場合の対処を、各省庁に任せている。日弁連は、各省庁を超えて強い権限を持った第三者機関の設置を提言したが、法律に生かされなかった。処罰の対象は漏らした職員だけで、再発防止策もない。もちろん一度、情報が漏れたらプライバシーはなかなか回復できないのに、その配慮もない。

 住基ネット訴訟で、自分たちは国民一人ひとりに自己情報のコントロール権がある、と主張している。法律には当然、この権利を盛り込んでいないから、本人の知らない間に情報が使われる危険性が残っている。

 国は今後、「保護対策は万全」と主張するだろうが、住基ネットが違法であることに変わりはない。今回の成立が訴訟に影響することはない。


信頼関係が不在 役所の活動危惧
奥会津書房編集長 遠藤由美子氏


 個人情報保護法の背景として、住民基本台帳ネットワークなど、行政機関による国民の管理をまず、思い浮かべてしまう。自由でいたい、と思うのは人間の基本的な欲求だと思うし、行政による大量、一括の個人情報の管理に反発や危険を感じているので、今回の個人情報保護法づくりは、管理強化のための方便に思えてならなかった。

 編集の仕事では、取材で出会った人のことを書く時、まず顔を見合わせて信頼関係をつくるところからスタートする。それを築けなければ取材は成り立たず、その人のことを書くことは困難だ。だが、行政機関の個人情報の扱いは、住民との信頼関係とは遠いところにある。法律ができたからといって、担当者たちが個人を思いやって作業するわけではない。

 役所は情報を集めたがる所だ。どこにどんな人が住んでいるか。金回りはいいか、体の調子はどうか。施策に生かすという言い訳があるかもしれないが、この法律ができたからといって、勝手に個人情報を集めて利用される危惧(きぐ)はなくならないと感じている。
(5/24)

http://mytown.asahi.com/fukushima/news02.asp?kiji=4140

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