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2003年05月22日(木) 02時25分

恐怖疑心あおり支配 小倉監禁殺人冒陳 弱み握り巧みに西日本新聞

 「身内の犯罪」をたねに実家を揺さぶり、財産を搾り取ると、次々に互いに殺害させていく—。二十一日、福岡地裁小倉支部であった小倉監禁殺人事件の公判。検察側は冒頭陳述で、松永太被告(42)が共犯とされる緒方純子被告(41)の犯行を親族らにほのめかすことで「体面」を重んじた資産家一家から次々に金を巻き上げ、ついには殺し合いまでさせた事件の構図を生々しく描き出した。

■体面

 「指名手配中で殺人者でもある純子の面倒をみるためには多額の現金が必要」

 詐欺容疑などで指名手配され、緒方被告とともに各地を逃走していた松永被告は一九九二年、北九州市に「潜伏」。その後も、地元で資産家として知られた緒方被告の実家にたびたび「潜伏資金」を要求した。

 検察側によると、それは、共犯とされる緒方被告が監禁事件の被害少女の父親=当時(34)=殺害に関与していたことをほのめかし、親族らを揺さぶる手口だったという。

 「元来犯罪と無縁な生活を送り、その体面を気にする環境にあった」緒方一家は、「身内の犯罪」という弱みにつけ込まれ、次第に自由に操られていった。

 実家に無心を続ける松永被告をみて、不安を覚えた緒方被告は一時松永被告の元を逃げだしたこともあったが、松永被告はこの「離反」を巧みに利用。自分が投身自殺をしたことにして、マンションの部屋で葬式のまね事をさせ、緒方被告を呼び戻した。

 検察側はこのごろから松永被告の「支配」が強まっていったとみる。

■不信

 「遺体解体の痕跡が残っている可能性がある」

 松永被告はその後も一家を揺さぶる。父親の誉(たかしげ)さん=当時(61)=にはマンション台所の配管を交換させ、証拠隠滅に加担するという「負い目」まで植え付けた。“潜伏資金”と称して三千万円を借り入れさせてもいる。

 しかし、別の親族が一家の財産を保全。土地が売却できなくなると、「利用価値がない」と即座に「一家殺害を決意した」という。

 マンション一室に一家を閉じこめると、通電虐待を続ける。一方、酒食を与えながら、親族らから聞き出した秘密をあばいては、互いの不信感をあおった。一家は疑心暗鬼に陥り、結束して松永被告に立ち向かう意欲を次第に失う。

 誉さんが金属クリップをつけた電気コードを緒方被告にあてられ絶命したのは九七年十二月二十一日未明。次いで精神に変調をきたした静美さん=当時(58)=が犠牲になった。

■連鎖

 「主(かず)ちゃん、私死ぬと」「理恵子すまんな」

 妹の理恵子さん=同(33)=殺害の実行犯は、夫の主也(かずや)さんだった。

 松永被告はあいまいな表現で殺害を指示し、形の上では親族たちに「殺害を決断」させた。「緒方家で結論を出しておけ」。周到に共犯意識を植え付けられた家族が身内を殺害する連鎖が続いた。

 その主也さんが九八年十月に死亡すると、残された姪(めい)の彩ちゃん=同(10)、甥(おい)の優貴君=同(5つ)は「金のかかる足手まとい以外の何物でもない状況」に。

 「もう、お父さんもお母さんもいないし優貴もかわいそうだね。お母さんのところに帰してやったら?」

 松永被告は彩ちゃんにそう殺害をもちかけた。その三週間後、緒方被告に絞殺される彩ちゃんは「はい」と答えたという。

■凶悪犯と知能犯の側面/起訴状には弱点も

作家・佐木隆三さんの話

 緒方被告の罪状認否は、正直な内容だったと思う。少女の父親に対する殺人罪で「松永被告の指示がなければ、しなかった」と述べていたが、そのほかの事件も同じ構造だろう。オウム真理教事件での教祖と実行犯の関係に似ていると感じた。

 緒方一家を破滅に追い込む流れは、すべて松永被告のシナリオ通りに進んだようだ。今までの報道でわからなかった部分が、検察側の冒頭陳述でかなり肉付けされた。十歳の女の子(彩ちゃん)に親族の殺害を手伝わせたり、行方をくらました緒方被告をうその葬式で呼び戻したり、松永被告は凶悪犯と知能犯の側面が入り交じっている。そのときの状況に合わせて発言を変える傾向もみられ、今後の法廷での証言に注目している。

土本武司帝京大教授(刑法)の話

 緒方被告はやはり女性であり、松永被告への隷属がみてとれ、ある意味ではかわいそうな人だと感じた。オウム事件のように、松永被告の指示・命令があったかどうかが立証の最大ポイントとなるだろう。

 起訴状には弱点もある。例えば少女の父殺害について「生存に必要、十分な食事を与えず」とあるが、誰にどのような作為があったのかが出ていない。今後は両被告を分離し公判を進めていくべきだろう。(西日本新聞)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030522-00000027-nnp-kyu

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