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2003年05月21日(水) 11時49分

カイワレ業者逆転勝訴、O157原因公表で国に賠償命令朝日新聞

 大阪府堺市で発生した病原性大腸菌O(オー)157による集団食中毒事件に絡み、厚生省(当時)が「カイワレダイコンが原因である可能性がある」と発表したことで被害を受けたとして、カイワレ業者らが国に総額1億1392万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が21日、東京高裁であった。江見弘武裁判長は「原因が疑われる業者以外によって生産されたカイワレは、汚染とかかわりがないと明示せずに公表した過失があった」と認定。業者側の請求を退けた一審・東京地裁判決を変更し、18業者と業界団体に各40万〜100万円の計1691万円の賠償を国に命じる逆転判決を言い渡した。

 同様の訴訟で大阪地裁は国の責任を認める判断を示しており、今回の判決も業者勝訴の判決を言い渡した。

 訴えていたのは、業者でつくる日本かいわれ協会と18のカイワレ業者。

 判決などによると、堺市で96年7月に起きた食中毒では数千人が発症し、児童3人が死亡した。当時の菅直人厚相は同年8月、発症者が食べた学校給食に共通する食材にカイワレがあったなどとして、府内の業者が生産したカイワレが原因となった可能性が捨てきれないと発表。カイワレの価格が急落し、店頭から撤去される騒ぎが起きた。府内の業者の施設からO157は検出されなかったが、同省は同年9月にも「特定の生産施設のカイワレの可能性が最も高い」と再び発表した。

 この日の判決はまず、同省が行った疫学調査を検討。「府内の業者の施設からは菌が検出されず、流通経路での汚染が疑われるべきで、カイワレそのものの汚染には疑問がある」と指摘。中間報告の段階で厚生省の検討が不十分だったことを指摘した。

 そのうえで、公表が相当だったかを考察。「公表すること自体は、情報不足による不安感の除去のため、隠すよりは、国民にはるかに望ましく適切だった」と述べ、公表の目的には違法はないとした。

 しかし、「公表によって、ほかのカイワレ業者の事業が困難に陥ることは容易に予測できた」と指摘。当時、農林水産省も公表による悪影響について懸念を表明していた状況も踏まえ、「中間報告が公表されたことは違法だ」と結論づけた。

 結局、O157の原因が何であるかは、いまもはっきりしていない。

 一審・東京地裁は01年5月、「厚生省の発表は相当だった」として業者側の請求を全面的に退けていた。

 発生源と疑われたカイワレを生産した府内の業者が国家賠償を求めた別の訴訟では、大阪地裁が02年3月、「過渡的な情報を公表する緊急性はなかった」として慰謝料など600万円を支払うよう国に命じ、大阪高裁で控訴審が継続中。(05/21 11:33)

http://www.asahi.com/national/update/0521/013.html

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