悪のニュース記事

悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。

また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。

記事登録

2003年05月08日(木) 18時05分

携帯電話各社の特典を抜け目なく利用するユーザーたちWIRED

 携帯電話業界の裏事情に通じているアレックス・クラーク氏は、その知識をフルに活かしてさまざまな特典を得てきた。

 クラーク氏は、ロサンゼルスに住む宣伝マン。携帯電話業界が料金値下げ競争のまっただ中にあり、加入者を確保するためにはどんなことでもやる、ということをよく知っている。

 だから、昨年10月に http://www.sprintpcs.com/ 米スプリントPCS社との契約が切れるとき、クラーク氏は顧客サービスに電話し、契約を継続する代わりに特典をアップグレードするよう要求した。月35ドルで、夜間と週末の350分、時間や曜日に関係なく計2000分、それに無料の長距離電話という条件を求めたのだ。実際は、それまでのスプリントPCS社のサービスに満足していたのだが、要求が満たされなければ他社に乗り換えると脅しを入れた。

 「窓口担当者と交渉したが、新規加入者への特典以上のものは提供できないと言い張ったため、上司と話をしたいと要求した。上司はすぐに、曜日や時間に関係なく500分、夜間と週末は無制限、無料長距離電話、それに新しい携帯電話を買うために100ドルの現金という特典を、月35ドルの契約を継続することと引き換えに提供すると申し出た」

 「言うまでもなく私は快諾し、1年間の契約延長をした」とクラーク氏。

 業界内の競争が激化し、さらに他社への乗り換えを容易にする新しい規制の発効が目前に迫っていることから、携帯電話会社は、割安な料金プランや携帯電話の無料提供などのさまざまな特典を準備して、既存顧客の引き止めと新規顧客の誘い込みに懸命だ。

 こうした事情につけ込んで、通常の規定よりも有利な条件を引き出しているのはクラーク氏だけではない。ニューヨーク市に住むスーザン・スチュワート氏は、宣伝会社に勤務しながら女優業も営んでいるが、 http://www.verizonwireless.com/ 米ベライゾン・ワイヤレス社から多くの特典や景品を得たことで、同社のデータベースに「マトリックス」として登録されているのだという。

 「先日ある店に行ったとき、店員が私の記録をチェックして、『ああ、あなたはマトリックスですね』と言うので、『マトリックスって何?』と尋ねたら、『他社のサービスに乗り換えると脅す人のことです』と答えた」とスチュワート氏。

 ベライゾン社に確かめたところ、加入者に「マトリックス」などというラベル付けをしている事実はないという。

 「聞いたこともない。わが社はそんなやりかたはしていない」と、ベライゾン社。

 しかし、スチュワート氏が体験から知っているように、マトリックス——あるいは業界がどんな呼び名を使ったとしても——になれば、多くの特典を得られる。ベライゾン社はそうした特典で、6年間にわたってスチュワート氏を引き止めてきた。それでもスチュワート氏は、300ドルを超える請求を受け取って驚いたことが1度ならずある。

 「1回は特典の期限が——何の通知もなく——切れたときのこと。そんなことが起きるとは思っていなかったから、驚いたし残念だった。でも、ベライゾン社はたいてい、継続してもいいと思わせる好条件を示してくれる」とスチュワート氏。

 ベライゾン社は業界内でも、顧客との交渉には消極的な企業だ。おそらく、米国最大の規模を誇っているからだろう。「わが社は顧客の確保を目的に取引することない」

 「わが社の目標は、安い通信業者になることではない。最高のサービスを提供することだ」と、ベライゾン社は語る。

 しかし、加入者の引き止めに多大な投資を行なっていると明言する大手事業者もある。

 「わが社は顧客をつなぎ止めるためのプログラムに多くの努力を払っている。社内には、加入者のつなぎ止めと新規顧客の獲得だけを行なう部門もある」と、 http://www.cingular.com/ 米シンギュラー・ワイヤレス社の広報担当者は明かす。

  http://www.t-mobile.com/ 米TモバイルUSA社は、契約期間が切れる前に加入者に連絡する。「引き続き契約してくれる顧客には、お礼の意味で特典を提供することがある」

 スプリント社と契約しているクラーク氏は、大手通信事業者の中ではスプリント社が最も多くの特典を提供しているようだと言う。米国市場の1位と2位を占めるベライゾン社やシンギュラー社を使っている友人たちによると、両社は「かなりの特典を提供しているが、スプリント社ほど思い切ったことはやっていない」らしい。

 スプリント社は、顧客サービス向上のためにかなり大胆な方策を採ってきたことを認めた。同社は顧客からの問い合わせを機械による自動応答サービスで処理していただけでなく、問い合わせに対する電話料金まで請求していたため、過去2年間、サービスに対する顧客からの評価が他社に比べて非常に低かったという。そのため、『クレア』と呼ばれる自動応答サービスを廃止し、料金も抜本的に改定した。

 「わが社は移動体通信業界の米アメリカン・エキスプレス社になりたいと思っている。加入者を大切にし、特典を提供する。(クレアは)お払い箱にした」とスプリント社の広報は語る。

 だが、運が悪いと、特典を獲得できないユーザーもいる。

 マサチューセッツ州フレーミングハムに住む引退した精神科医のハロルド・ソック博士は最近、 http://www.attws.com/ 米AT&Tワイヤレス社からスプリント社に乗り換えた。AT&Tワイヤレス社がそれまで提供していた料金プランを終わりにしたうえに、不良品の携帯電話を交換してくれなかったからだという。

 ソック博士がAT&Tワイヤレス社に電話をしたとき、同社は契約継続を促すような特典をほとんど提示しなかった。「愛想も悪かったし、応対にも気遣いが感じられなかった」とソック博士。

 AT&Tワイヤレス社の広報担当者は、ソック博士の電話に応対した担当者が引き止めようとしなかったことに驚きを示した。

 「わが社は加入者、とりわけ利用の多い上得意客のつなぎとめに真剣な努力を払っている。何しろ、ビジネスの視点から言えば、一度離れた顧客に戻ってもらうのは継続してもらうよりずっと難しいのだから」

 こうした交渉ではつねに顧客が有利な立場にあるため、業界専門家たちは、事業者の収支悪化を懸念している。

 今年第1四半期、大手移動体通信事業者は全社とも前年同期比で収入が増加し、新規加入者も急増した。しかし、通信事業者にとって重要な業績指標である加入者の1ヵ月平均通話料は、昨年第4四半期に続いて下がっている。スプリント社を例にあげると、今年第1四半期に新規加入者を19万9000人も獲得したにもかかわらず、依然として赤字が続いており、損失は1億8200万ドルに上った。また、加入者1人当たりの1ヵ月平均通話料も62ドルから59ドルに下がった。

 特典の提供は利用の多いユーザーに限定すべきだと、ビジネス情報会社である http://www.teradata.com/ 米テラデータ社のマーケティング統括責任者、アル・シュルツ氏は指摘する。「1ヵ月に3、4回しか電話しないような利用者に割引料金プランを適用すれば、よほど利用頻度が伸びるという見込みがある場合でない限り、得られる利用料より、コストのほうが高くなってしまう」

 一方で、業界専門家の中には、通信事業者の利用者つなぎ止め作戦は、激化する競争に勝ち抜くためには避けられないという意見もある。携帯電話会社を乗り換えても、それまでの電話番号をそのまま使えるようにするという、 http://www.fcc.gov/ 米連邦通信委員会(FCC)の http://www.hotwired.co.jp/news/news/business/story/20030310105.html 新しい計画が11月に開始されれば(日本語版記事)なおのことだ。ベライゾン社と業界団体の http://www.wow-com.com/ 米国セルラー通信・インターネット協会(CTIA)は、この規定について米連邦控訴裁判所に異議を申し立てているが、業界の専門家たちは、両者の言い分が通る可能性は低いと考えている。

 「基本的には、ユーザーは加入する電話会社を変えても以前の電話番号をそのまま使えるようになるだろう」と、比較ショッピング・サイト『 http://www.myrateplan.com/ マイレートプラン・コム』のアラン・キーター社長も言う。「おそらくこれは、顧客の乗り換えを今よりさらに激化させる原因としては、最大のものになると思われる」

 「通信事業者はこれを見越し、あらゆる手を尽くして加入者を引き止めようとする。そして、11月に向けて、とどまってくれる人への特典をあからさまに口にするようになるだろう」

[日本語版:中沢 滋/鎌田真由子]日本語版関連記事

http://www.hotwired.co.jp/news/news/business/story/20030423108.html 米国で急成長する携帯電話の定額制「市内かけ放題」サービス

http://www.hotwired.co.jp/news/news/business/story/20030320106.html 『CTIAワイヤレス2003』で各社が最新携帯電話を発表

http://www.hotwired.co.jp/news/news/business/story/20030310105.html 「携帯番号を変えずに加入会社変更」方式で業界地図が激変か

http://www.hotwired.co.jp/news/news/technology/story/20030220304.html 携帯電話からワイヤレスでプリントアウト

http://www.hotwired.co.jp/news/news/business/story/20021105102.html AT&Tワイヤレスの『GPRS』サービスが苦戦

http://www.hotwired.co.jp/news/news/business/story/20021021107.html ワイヤレス業界の新しい動き——米国は、そして世界は?

http://www.hotwired.co.jp/news/news/business/story/20021007107.html ウォールストリート・ジャーナル、携帯電話部門でベライゾンに最高の評価


WIRED NEWSのメール購読申込みは http://www.hotwired.co.jp/reception/index.html こちらへ


(WIRED)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030508-00000004-wir-sci

この記事に対するコメント/追加情報を見る

ニュース記事一覧に戻る

トップページ