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2003年05月07日(水) 00時00分

個人に厳しくIT時代に逆行 個人情報保護法案 記者座談会 東京新聞

 個人情報保護法案が六日、衆議院で可決されたが、「官に甘く、民に厳しい」との批判が依然として強い。政治部、社会部の担当記者が法案の問題点などを話し合った。(個人情報問題取材班)

 ■官に甘い

 A 官に甘いことは、自衛隊が若者の家族の職業、健康状態など他人に知られたくない情報を自治体から集めたり、集めようとした問題ではっきりした。この法案では民間がやると「個人情報の適正取得」違反で罰金刑や懲役刑なのに、役人には「適正取得」義務がない。

 C 経済活動も委縮してしまう。電話帳データベース機能がある年賀状作成ソフトのユーザーまで規制対象。政府はカーナビゲーションや名簿ソフトに得意先データを加えると対象になると答弁した。個々人の創意工夫、営業の自由が侵害され、規制緩和の流れにも逆行している。

 D 政府は「社会的に認知された事業の反復継続」に限り、規制対象の「個人情報取扱事業者」になると答弁したが?

 C 法律実務では反復継続すれば「遊び」でも「事業」だし、国会答弁より条文優先だからソフトを使えば小学生でも取扱事業者。「年賀状ソフトは念頭になかった」と野党議員に告白した官僚もおり、IT(情報技術)に乗り遅れた法案だ。

 A 政府系シンクタンク有志や産業界からも批判が出てるし、「稀代(きだい)の悪法」と言っている官僚もいるよ。

 ■戦後初の明記

 B 法案は「報道とは、不特定かつ多数の者に対して客観的事実を事実として知らせること」と、戦後初めて「報道の定義」を明記した。「市民団体やPTAの会報、メーリングリストも規制され戦前の新聞紙法より厳しい」と批判された。

 C 細田博之IT担当相は「報道の範囲が、恣意(しい)的に判断されないよう判断基準を客観的にした」と述べたが、権力側が報道を線引きする危険を追及され「本人が『報道』と言う限りは報道。そう割り切っている」と答弁を変えた。

 D じゃあ、なんで定義するんだ(笑)。大臣が何と言おうと法律は独り歩きするから、他人の表現活動や営業活動を妨害する道具になり得る。

 A 非政府組織(NGO)も規制対象だ。「なぜ、NGOもしばるのか」と聞いたら「よいNGOもあれば悪いNGOもあるから」と言った官僚がいた。今ある法律に抵触していないNGOも、取り締まりたいという気持ちが透けて見えた。

 B 政府案では政治団体、宗教団体、報道機関、学術研究機関は義務規定の適用対象外で、大臣の勧告、命令や罰金、懲役を受けない。特別扱いされて安心する報道関係者もいるから情けない。

 A 学術研究機関に属さない研究者や街の発明家も差別されている。お上公認の団体、機関に属さない者は信用しません、と言っているような、嫌な感じがする。世界中の人がインターネットで研究発表や意見交換する現代にマッチしない、時代錯誤の法案だよ。

 ■個別法は必要

 D 政府は「取り締まるのは悪質業者だけだからご心配なく」みたいな答弁をしていたが、政府案には悪用できる余地がたくさんあるし、「年賀状ソフト」の件のように民間が委縮する。そういう短所もさらけ出して「実は全国民が規制対象になり息苦しい世の中になるけど、この法律が必要だから我慢してください」と国民の理解を求めるべきなのにね。

 A 野党が当初方針通り医療、教育などプライバシー性の高い分野だけ対象の対案を作れば、両者の優劣を議論できた。野党の責任は大きい。

 C 緊急分野に関する個別法の必要性は明らかだ。政府案の規制対象は五千件以上の個人情報を保有する者だが、開業したての医師は患者が少ないから規制されない。こういう医師が患者のデータを不適切利用しても、この法律には違反しないんだ。

 B 政府も個別法の必要性を認めたが、ならば、なぜ焦って包括規制の一般法を先に作るのか、そこの説明がない。

 D 竹中平蔵金融担当相は「審議中の基本法は傘に該当する」と、政府案を「基本法」と位置づけ、さらに金融分野の個別法が必要、とした。

 A ちょっと変だね。罰則なしで理念だけうたう基本法を作り、さらに分野別の個別法も作るなら分かる。でも政府案は既に罰則がある。さらに罰則付きの個別法を作ったら二重規制になるよ。

 ■問われる野党

 C 野党の担当者は知恵袋の日本弁護士連合会や市民団体から「なぜ個別法にしなかったのか」と激しく非難されたね。

 B 野党案を出す直前まで、一般法で行くことを市民側や党内に隠していたし、抗議電話に応じない議員もいた。提出後の集会では社民党議員が袋だたきだったが、議員が来なかった民主、共産、自由には「裏切り者」の声が上がっていたよ。

 A 国民を包括規制する「一般法」を作った政府を批判したくせに、開けてみたら野党案も一般法だったからね。日弁連や市民団体の意見を、なぜ無視したんだろう。

 B 民主党は、個別法は分野による差別を生むから作れなかった、と説明している。

 A 変な説明だな。じゃあ、現存する業法(特定業種対象の法律)も差別的な法律ということになる。一般法に加え個別法も作れという野党の主張とも矛盾する。

 C 有事関連法案をめぐる与党との「取引説」や、野党結束だけを優先した「見切り発車説」、住民基本台帳ネットワーク推進派議員が狂言回しした「住基ネット応援説」も出ている。

 D 参院の審議も国民の監視が必要だな。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20030507/mng_____kakushin000.shtml

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