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2003年05月02日(金) 00時00分

白装束集団の占拠騒動 新興宗教から分派、77年設立 『電磁波から守る』各地転々 東京新聞

 岐阜県の林道を占拠していた、自称「パナウェーブ研究所」の集団に対し、同県警が1日、道交法違反容疑で“排除”に乗り出した。末期がんの代表の女性を守るため、10年近く各地を転々としていたという集団だが、ここにきて一挙にマスコミの注目を集めた。「5・15」には、「地球に異変が起きる」との予言も口にするが−。

 「郡上おどり」で知られる岐阜県八幡町。人口約一万六千人、小さな町のはずれで「白装束」の集団が突然、林道を占拠してからちょうど一週間がたった一日、県警が初めて本格的に動き始めた。

 三十日までは、集団が団体生活を送る白ずくめのワゴン車の車列近くまで寄っての取材が可能だったが、逆に、取材を嫌う集団側とのトラブルも。このため、この日は一転、地元八幡署が早朝、「生活現場」から数百メートル離れた場所に車止めを置き、警察官を配置して急ごしらえの「検問所」を設置、出入りを規制した。

 ■住民は睡眠不足 本音は実力排除

 午後一時前、「現場」から約五百メートル離れた集落の住民ら六、七人が、集団側に早期退去を求めるために訪れた。農作業を中断してきたという男性は「夜中になると、車がひんぱんに行き交う。やじ馬なのか、報道陣なのか。それとも集団の車なのか分からないが、ゆっくり寝ることもできない」と疲れた表情。「(警察に)実力行使で排除してもらいたいというのが本音」と言い残した。

 そんな住民の願いが通じたのか、午後二時四十分、岐阜県警がようやく腰を上げ、約三百人の捜査員を現場に投入。約一時間後には、報道陣も現場近くまで誘導、上空には五、六機の取材ヘリが飛び交った。

 集団側に対する「説得工作」は延々続けられ、あたりが真っ暗になった午後七時前、ようやく集団側が時速約十キロの低速でワゴン車を連ね、移動を始めた。

 一方、「清里」の南西方向に別荘地が広がる山梨県大泉村。同村西井出地区に建設中のドーム型施設を、パナウェーブ研究所関連の出版社社長が所有していることから、集団がここに現れるのではないかとの見方が広がっている。

 住民男性は「所有者は体も大きく、物腰も紳士的。しっかりした対応をしている」と話すが、不安は隠せない様子だ。現場近くの別荘に滞在中の都内の女性は「みんな静かな環境を求めて別荘を買ったのに、白いお化けみたいな格好でうろうろされては困る」。

 ■ドーム内に犬猫 特に不審点なし

 同村によると、施設は直径約十一メートルのドームが四つ並ぶ構造。今年二月ごろに着工、六月上旬に完成予定という。現在、犬猫それぞれ四十匹ほどが施設内で飼われているという。

 同村の小林明助役は「二十四日に所有者から連絡があり、二十八日には施設内を見学した。犬は地下にゲージに入れ、猫は一階のフロアで飼い、しっかり管理されているようだ。ドーム内はワンフロア。地下室も基礎部分の空間を利用しているだけで別荘といわれれば納得する構造。特に不審な点はなかった」という。

 また小林助役は、所有者の会社社長から「『今月十五日ごろに第十惑星が近づき大地震が起きるので、家族や知人を守るためにマグニチュード15にも耐える建物を建設している。キャラバン隊(白装束の集団)はここには来ない』と説明された」と話す。

 ドーム型施設から南へ数百メートルの別荘地には、「タマちゃんのことを想う会」が、「タマちゃん」を一時「保護」するとされたビニールハウスがある。週刊誌で、想う会の関係者が白装束の集団と関係があると報じられたため、集団が一挙に注目を集めた。このハウスは、ペンションだった建物を借り、敷地内に設置していたが、所有者から退去の申し入れがあり、今月中旬には出ていくという。

 同村は、三十日に住民や議員への説明会をとりあえず開いたが、白装束集団が大泉村に向かったらどうするのか。小林助役は「県や県警とも情報交換をし、来ることを想定して対策を練っている」とはいうものの、「法的規制はできない。入らないよう要請するくらい。それでも入ってきたら止められない。たいへん迷惑している」と困惑した。

 ■福井には研究所 人の出入りなし

 また、福井市内には「パナウェーブ研究所」を名乗る施設もあるが、近所の人の話では現在ではほとんど人の出入りはないという。

 カルト教団に詳しい浅見定雄・東北学院大名誉教授などによると、この集団は、新興宗教団体にいた女性(69)が分派して、一九七七年ごろ設立した「千乃正法(ちのしょうほう)会」。一時、会員数千人と自称していたこともあるが、「現在は約千二百人」(警察庁調べ)という。

 九四年四月から、車を連ね全国を回る「キャラバン隊」を始めたが、目的は「大王妃様」などと称されるこの女性会長を「敵のスカラー波という電磁波攻撃から守るため」。共産ゲリラなどの攻撃で、女性会長は末期がんにかかっているとしている。一昨年以降の動向でも、鳥取、兵庫、京都、福井、滋賀、岐阜、福井、そして今回の岐阜県の林道と、長くても数カ月、短いときには十数日間で移動を繰り返していた。

 ■「ソ連から攻撃」 82年夏集団渡米

 宗教研究家の菅田正昭氏は「かつて女性は正法の集いというグループをつくっていたが、八二年夏ごろ、『ソ連(当時)が攻めてくる』といって、集団渡米を図ったことがある。現象的には今回と同じだろう」と、話す。各地を転々としていることについては、「霊的スポットのネットワークづくりの意味もあるのではないか」と話した。

 昨年十月、会の専属になるという息子のことで親から相談を受けたという、滝本太郎弁護士は「ここ数年先鋭的になっているようだ」と危ぐする。同弁護士によると、集団内では、今月十五日に、地軸の磁南極と磁北極が入れ替わるポールシフトが発生、地球に大変動が起きるとの予言があるといい、「予言が外れた時に、内部的に粛清などが起きないか心配」と話す。

 ■ミニカルト 分散化傾向

 一方、こうした集団について、浅見氏は「いわゆるミニカルトは国内に何万もある。不況、価値観の喪失の時代の中で、増えているのは事実だ」としたうえで、こう話す。

 「私が相談に乗った例でも、神道系の三十数人の集団に、男友達に引きずられて娘が入信してしまったというケースや、お金を払って自然農法の団体に入会したが、事実上、宗教のようなグループだったりというケースなど数多い。道徳観や一定の価値観が喪失する中で、インターネットなどで小さいカルト集団が次々生まれ、“信者”から金品など搾り取っていく」

 こうした宗教に詳しい紀藤正樹弁護士も「オウム事件以降、社会的規制が厳しいためミニカルトは分散化傾向にある。社会的ニーズはあるため、オウムなどのように破滅的にはならないが、十人、二十人といった小さい集団で、社会の中で注目を集めないまま拡散している」と話している。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20030502/mng_____tokuho__000.shtml

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