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2003年04月26日(土) 20時30分

<カルテ開示>後退する法制化論議 患者の権利保障は毎日新聞

 医療機関にカルテ開示を義務づける法制化の論議が後退している。厚生労働省の「診療に関する情報提供等の在り方に関する検討会」は28日に報告書案を示す見通しだが、日本医師会は法制化に強く反対し、厚労省にも日医への配慮が目立つ。「医師の領分」を侵されまいとする意図がのぞき、医療事故の被害者らは「患者の権利が保障されない」と訴えている。【江刺正嘉、渡辺英寿、小出禎樹】

 ■出し渋り

 カルテの閲覧は原則1回のみ1時間で、コピーは不可。「残り1分……」とカウントダウンし、時間がくると「終了」を宣告する——。

 娘を医療事故で亡くした両親が一昨年、埼玉県の大学病院でカルテを書き写していると、主治医から途中で打ち切られた。「あと7枚です」と頼んでも断られたという。全国の大学病院は日医と同様に自ら開示指針を作って「情報公開」を進めている。しかし「出し渋り」によるトラブルが後を絶たない。

 2月6日の第4回検討会。日本看護協会の古橋美智子副会長は、カルテ開示の規定を持つ医療機関は49%にとどまるというアンケート結果を基に「開示の体制は不十分で、法制化が必要だ」と指摘した。だが、委員の桜井秀也・日医常任理事は「規定がないのは、むしろ開示がうまくいっているからではないか」と反論し、失笑を買った。

 日医はなぜ法制化に反対するのか。現場の医師には「法律で縛られれば患者が権利ばかり訴え、医師の裁量が狭まる」という声が多く、日医もそれを無視できない事情がある。

 ■抜け道

 開示の法制化は99年に日医の反対で見送られ、00年度から3年間、自主的な開示を進めたうえ「改めて議論する」ことで収まった。ところが先月、厚労省は検討会の「論点整理」で、個人情報保護法案に基づいて開示する方針を明記した。

 法案によれば、カルテの内容は「個人情報」に含まれ、患者が自分の診療情報を知る権利が保障されるという。しかし、そこには「医師の抜け道が用意されている」(厚労省幹部)という。「個人情報」は生存者の「情報」に限られているため、患者本人が死亡した場合に遺族にはカルテを見る権利はない。医師が最もカルテ開示を拒むのは、患者が死亡して医療ミスを疑われる時である。

 厚労省のある幹部は「サラリーマン医療費の3割負担は日医の反発を押し切って実現した。今回は(法制化を見送って)妥協を図るしかない」と舞台裏を明かす。

 ■改ざん防止を

 「検討会ではカルテの改ざん防止や記載内容の充実など、もっとも大切な議論がない」。埼玉医大の医療ミスで長女を失い、死亡診断書に「病死」と書かれた埼玉県鴻巣市の古館文章さん(49)は批判する。

 個人情報保護法案では、医師がカルテに何をどう書くかまでの規定はなく、改ざんしても罰則もない。医療問題弁護団の鈴木利広代表は「カルテの記載のルールを含めて開示の法律を作らなければ医療の質は向上しない」と指摘する。

 検討会は5月に2回会合を開いて報告書をまとめる予定。

 ◆カルテ開示をめぐる国の論議の流れ

98年6月 厚生省の私的検討会が開示法制化を提言

99年6月 厚生省医療審議会が法制化見送り

00年1月 日本医師会がカルテ自主開示を開始

02年7月 厚労省の「診療に関する情報提供等の在り方に関する検討会」が初会合

03年3月 厚労省が個人情報保護法案に基づく開示を提案(毎日新聞)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030427-00000056-mai-soci

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