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2003年04月25日(金) 00時00分

麻原裁判 『適正』『迅速』の両立を 東京新聞

 裁判に求められる「適正」と「迅速」はしばしば矛盾する。その時は「適正」を優先すべきなのはいうまでもないが、両立させるために法曹関係者はもっと協力して知恵を絞るべきだ。

 オウム真理教(現アーレフ)の元教祖、麻原彰晃被告(本名松本智津夫)に対する極刑の求刑は予想された通りだった。被害者・遺族の多くは求刑通りの判決が早く言い渡されることを期待しているだろう。

 その心情は理解できる。「裁判が長すぎる」という一般の人々の印象もあながち的はずれとは言えない。

 しかし、ここで確認しなければならないのは、どんなに極悪非道な人間でも、法で定められた手続きを厳格に守って責任を決めるのが刑事裁判の鉄則、ということである。そうでなければ、ごく普通の市民の人権が裁判で守られる保障はない。

 また、密室で作られた調書で有罪を決めず、法廷で証人を直接調べて決めることも原則である。

 これらに照らせば、麻原弁護団の活動は決して異例ではなかった。

 責められるべきは、事件と真摯(しんし)に向き合おうとせず、裁判を無視した被告であって、弁護団ではない。そんな被告の権利でさえ守るのが弁護人に与えられた使命なのである。

 だが、事件を時の流れに埋没させるのは正義に反する。迅速な裁判は被告の義務ではなく権利だが、社会的要請でもある。この事件を刑事裁判改革の教材として生かしたい。

 例えば、起きたことをすべて起訴して裁くことが常に正義に合致するだろうか。検察は早期判決を狙い比較的軽微な事件の起訴を取り消し、サリン事件の被害者数も絞ったが、さらに大胆な工夫も必要だ。

 真実発見だけにこだわらず、国民に分かりやすい透明な手続き、迅速な審理なども正義の要素としてもっと重視すべきではないか。

 そのためには、調書裁判から脱却し、裁判開始前に争点を整理し弁護側が反論の準備ができるよう、検察側の証拠を事前に完全開示するなどの改革がいる。

 裁判員裁判では“市民裁判官”を何年も拘束するわけにはいかない。だからといって被告の人権を軽視した迅速では本末転倒である。適正と迅速の両立へ向けて法曹が率直に意見交換すべきだ。

 絶対に許されないのは、オウム事件のような難しい事件を裁判員裁判の対象から除外することである。難事件こそ国民の常識を反映して裁かなければならない。どんな事件でも市民が参加できる裁判システムを構築することである。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20030425/col_____sha_____002.shtml

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