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2003年04月24日(木) 22時23分

4月25日付・読売社説(2)読売新聞

 [松本被告求刑]「オウム裁判にみる長期化の弊害」

 初公判から、まる七年も経過しながら、社会を震撼(しんかん)させた事件の真相解明からほど遠い。

 オウム真理教の麻原彰晃こと松本智津夫被告に対する論告求刑公判が東京地裁で開かれ、検察側は、一連の事件の首謀者と断罪し、死刑を求刑した。

 地下鉄、松本両サリン事件、坂本堤弁護士一家殺害事件などで、二十七人が命を奪われ、負傷者は五千人を超えた。被害者の多くは今も後遺症に苦しむ。

 殺人罪など十三の起訴事実に問われた松本被告は、「弟子がやった」と無罪を主張した。

 これに対し、論告は「刑事責任逃れの虚偽」とし、「危険極まりない教義」を説いたことから当然の帰結として、弟子らに犯行を指示した共謀が認められるとした。こうした判断は公判前から予測されたことだろう。

 長期にわたる公判中、松本被告が法廷で沈黙を続けた。未曽有の事件はなぜ起きたのか、闇に包まれたままだ。

 裁判の長期化で、事件関係者の記憶は薄らぎ、真相解明は遠のく。被害者、遺族に失望感が広がり、事件の再発に有効な対策が取れなくなる。

 こうした松本裁判の経過を厳しく検証し、現在進行中の司法改革の教訓として生かしていかなければならない。

 この裁判が長期化したのは、起訴事実や被告数が多く、事前の争点整理も裁判所の訴訟指揮も不十分だったためだ。

 そのうえ、とくに国選弁護団の姿勢に問題があった。争点整理には応じず、検察側の証人に対する反対尋問でも、重箱の隅をつつくような場面も目立った。

 二百五十四回の公判で、弁護側の証人尋問の時間が検察側の五倍の約千時間に及んだ。被告の防御権は憲法上の重要な権利だが、裁判の常識を超えている。

 なぜ裁判官は、弁護団に対し、効果的な訴訟指揮が出来なかったのか。

 殺人罪など重罪事件では、弁護士がいないと開廷できない。強い訴訟指揮に反発し、弁護団が辞任すれば、後任の選任が難航し法廷が空転しかねない。それを恐れたためだ。

 この背景には、意思も能力もある刑事弁護士の数が、絶対的に不足しているという積年の問題がある。これを解決するために、国選弁護制度を拡充する「公的弁護制度」が検討されているが、法曹三者の意見が対立し、結論はみえない。

 現在、二年以内に一審判決を終結させる裁判迅速化促進法案が国会で審議されているが、このままでは迅速化も絵に描いた餅(もち)になりかねない。法曹界の一致した努力が、強く求められる。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20030424ig91.htm

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