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2003年04月22日(火) 00時00分

オウム・麻原被告24日に求刑 7年裁判対立に終始 東京新聞

 一連のオウム真理教事件の首謀者として麻原彰晃被告(48)=本名・松本智津夫=の論告求刑公判が、初公判から丸七年の二十四日、東京地裁で開かれる。元弟子たちに死刑判決も相次ぐ中、法廷で沈黙を通した教祖。その姿勢も影響して裁判の「迅速」と「適正」をめぐって激しい対立が生じた。公判は事件の真相以上に現行の刑事裁判制度のきしみを浮き彫りにした。(社会部・浜口武司)

■異例

 私選弁護人の突然の解任による初公判の延期。十二人もの国選弁護人の選任。主任弁護人の別事件での逮捕。そして起訴の取り下げ−。日本の犯罪史上空前の罪状だけでなく、教祖の裁判は異例ずくめだった。

 「弁護側はいつまで認否を留保するのか」「検察側は証拠を全面開示しろ」。検察側と弁護団は開廷ペースや尋問の仕方などあらゆる面で激しくぶつかった。これに麻原被告の不規則発言が加わり、審理の混乱に拍車をかけた。

 検察側は当初、十七事件で起訴。被害者は地下鉄サリン事件だけでも約四千人に上った。弁護団は被害者の調書や診断書などの証拠採用をすべて不同意とし、法廷での直接調べを請求。関係者からは「十年裁判になる」とため息も漏れた。

 事件の風化を避けたい検察側は比較的軽い四事件の起訴を取り下げ、地下鉄事件などの起訴状にあった被害者数も大幅に減らした。「裁判迅速化のため、断腸の思いだった」と検察幹部は振り返る。

■鉄則

 七年間で法廷に立った証人は計百七十一人。検察側によると、質問時間は検察側が約二百六時間。弁護側は千五十二時間と五倍以上という。検察幹部は「これだけ見ても、なぜ裁判が長期化したか分かる」と弁護団を批判する。

 だが、弁護団が裁判所からも「じゅうたん爆撃」と皮肉られた事細かな尋問を強いられたことには理由があった。

 自らの意に反し、弁護団が元弟子への尋問を強行したことから同被告はへそを曲げ、弁護団との接見を拒否。肝心の被告との意思疎通を欠いたまま弁護団は、麻原被告の著作や説法集、過去の発言から本人の言い分を推測して無罪主張するしかなかった。

 苦肉の策を続けた弁護団に理解を示す司法関係者は少なくない。法廷での直接調べは刑事裁判の鉄則。効率化のため書証で済ます「例外措置」が法廷では日常化しているが、日弁連幹部も「被告が弁護人にも黙秘する場合、鉄則通りやるしかない」と話す。

 「起訴事実の多さ、事件の大きさを考えると審理は非常に速かった」。証拠調べがすべて終わった今月十日、渡辺脩弁護団長は七年という長さをそう評価した。

■課題

 「裁判官には強い訴訟指揮権があるが、(互いに納得できる)ギリギリの線で進めてきた。検察は重大事件だけ起訴し、弁護団も事件ごとに分けて担当するなど方法はあった。もっと争点整理ができなかったのか、今後の課題だ」と裁判所幹部は話す。

 日弁連司法改革調査室長の四宮啓弁護士は「現行の刑事裁判の目的には真実の解明がある。そのためには時間もかかるが、その一方で、早い裁判を望む被害者の気持ちを犠牲にしてきた」と指摘する。

 今国会には二年以内の一審判決を目指す裁判迅速化法案が提出され、来年の通常国会には国民が刑事裁判に参加する裁判員制度導入への法案提出も予定される。

 四宮弁護士は「裁判員裁判になれば迅速な審理が必要になる。検察側も弁護側も積極的に証拠開示し、争点整理に協力しないといけない」と強調する。

 麻原被告の判決は来年中に言い渡される。控訴、上告があれば確定までさらに数年かかる。

■麻原被告の起訴事件一覧

 田口修二さんリンチ殺害(1989年2月、殺人)

 坂本堤弁護士一家殺害(89年11月、殺人)

 サリン量産プラント建設(93年11月−94年12月、殺人予備)

 落田耕太郎さんリンチ殺害(94年1月、殺人・死体損壊)

 滝本太郎弁護士サリン襲撃(94年5月、殺人未遂)

 自動小銃密造(94年6月−95年3月、武器等製造法違反)

 松本サリン(94年6月、殺人・殺人未遂)

 冨田俊男さんリンチ殺人(94年7月、殺人・死体損壊)

 水野昇さんVX襲撃(94年12月、殺人未遂)

 浜口忠仁さんVX殺害(94年12月、殺人)

 永岡弘行さんVX襲撃(95年1月、殺人未遂)

 仮谷清志さん監禁致死(95年2月、逮捕監禁致死・死体損壊)

 地下鉄サリン(95年3月、殺人・殺人未遂)


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20030422/mng_____kakushin000.shtml

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