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2003年04月22日(火) 15時35分

社員の「発明の対価」認定…最高裁が初判断読売新聞

 「オリンパス光学工業」(東京都渋谷区)の元社員が、自分の発明に対して支払われた対価が低すぎるとして、同社に不足分の支払いを求めた訴訟の上告審判決が22日、最高裁第3小法廷であった。

 上田豊三裁判長は、「社内規定で定められた対価が相当な額に満たないときは、差額を請求することができる」として、オリンパス社側に約229万円を支払うよう命じた1、2審判決を支持し、会社側の上告を棄却した。会社側の敗訴が確定した。

 社員の発明に対する対価について、最高裁が「会社側が一方的に確定させることはできない」という判断を示したのは初めて。特許法は「社員が特許権を会社に譲渡した際、相当な対価を受ける権利がある」と定めているが、多くの企業は、社内規定に基づく報奨金支払いなどで済ませてきており、今後、企業側は新たな対応を迫られることになりそうだ。

 この日の判決で、第3小法廷は「対価の額などをあらかじめ決めておくことはできるが、これがただちに相当な対価の全部にあたるとは言えない」などと認定。「対価は社内規則で定めるのが合理的であり、その水準も他社と比べて見劣りしない」などとした会社側の主張を退けた。

 訴えていたのは、同社でビデオディスク装置の研究開発部門に在籍していた元男性社員。元社員は1977年、職務としてディスクの性能改善に関する発明をした。同社は元社員から特許権を継承して、特許を取得したが、元社員は社内規定に基づき、報奨金など計約21万円を受け取っただけだった。これに対し、元社員は発明の対価を約9億円以上と算定し、受取額との差額のうち、2億円の支払いを求めて提訴した。

 1審・東京地裁、2審・東京高裁はいずれも、「報奨金だけでは対価として不十分」と認定。元社員の発明が別の発明を利用したものだった点などを考慮して、元社員が受け取るべき対価を約250万円と算定した上で、会社側に不足分の支払いを命じる判決を言い渡していた。

 ◆企業に意識改革迫る◆

 オリンパス光学工業の特許権訴訟で、最高裁が22日、発明対価について、社員は社内規定に拘束されず相当額を請求できる、と認めたことは、企業で働く研究者の権利意識を一層高めることにつながりそうだ。

 「社員の発明」を巡っては、企業研究者が企業側に受け取るべき「相当な対価」の支払いを求める訴訟が相次いで起こされている。「青色発光ダイオード」(LED)訴訟では、東京地裁が昨年9月に示した「中間判決」で、特許権の帰属は会社側にあると認定されたものの、「相当な対価」について「司法が客観的に定めるべき」だとされ、現在、その額を算定するための審理が続いている。

 同11月には日立製作所の光ディスク関連特許を巡る訴訟で、東京地裁が、元社員に発明の対価として約3500万円を支払うよう命じる判決を出した。人工甘味料の製法を開発した味の素元社員が同社に総額20億円の支払いを求める訴訟も、同地裁で係争中。オリンパス元社員の提訴は95年で、一連の訴訟より前に起こされている。

 今回の訴訟で、一昨年の2審・東京高裁判決は「日本企業の多くが社内規定により『相当な対価』の額を一方的に定めてきた実態があるとしても、それは法規に違反する取り扱いが行われてきたことを示しているにすぎない」と判断。

 これに対し、22日の最高裁判決は、企業が社内規定などをあらかじめ定めることは構わないが、発明の対価として不足分が生じた時は、これを支払わなければならない、と指摘した。「社員の発明は会社のもの」という意識の上に立って、少額の報奨金支払いで報いてきた企業に対し、改めて意識改革を迫った司法判断と言える。

 一方で、近年、報奨金引き上げなどによって企業研究者の厚遇化を図る企業も出始めている。特許法は「相当な対価」の算定方法について、「発明で受ける企業側の利益と発明への企業側の貢献度とを考慮して定めなければならない」と規定するだけで、具体的な方法を明示しておらず、どれだけ報奨金を支払えばいいのか、対応に悩む企業も少なくない。算定方法の明確化に向けた議論も今後、必要になるだろう。(社会部・石原明洋)(読売新聞)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030422-00000204-yom-soci

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