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2003年04月19日(土) 18時43分

30年前のビル建材に有害物質のPCB 兵庫県調査朝日新聞

 68年から72年にかけて完成した建築物のビル壁面や窓枠の継ぎ目に使われた「シーリング材」に、有害化学物質のポリ塩化ビフェニール(PCB)を含むものがあったことが、兵庫県立健康環境科学研究センターの調査でわかった。現存建物は環境を汚染している恐れがあるほか、老朽化で解体された場合でも、廃材は厳重な管理が必要なのに、通常の廃材と一緒に処分されていた。県内の建築物から判明したが、全国の建物でも使用されていたとみられる。環境省も実態調査に乗り出す。

 センターは99年に県内の大気中のダイオキシン濃度を調査した際、鉄筋コンクリートの建物の屋上で、異常な数値を検出。1年以上かけて汚染源を調べ、すき間をふさぐパテ状のシーリング材からPCBが揮発していたことがわかった。

 このシーリング材は「ポリサルファイド系」と呼ばれる合成樹脂系の中でも、68〜72年の製品。PCBの含有率は最大で19%だった。

 この時期完成した市役所庁舎やホールなど県内82の公共建築のうち1割にあたる八つの建物で使用されていた。二つの建物では室内空気のPCB濃度が1立方メートルあたり65ナノグラム(ナノは10億分の1)、同386ナノグラムと、周辺大気中の数百倍に達した。

 環境庁(当時)が72年に作った暫定基準は、大気中の濃度は1立方メートルあたり500ナノグラム以下。同センターは「汚染は健康に影響のないレベルとみてよいが、一部の建設関係者以外にはほとんど知られていなかった発生源なので対策が必要だ」としている。

 シーリング材メーカー29社が加盟する「日本シーリング材工業会」(東京都)によれば、68〜72年のポリサルファイド系シーリング材の国内生産量は計7564トン。事務所ビルや公共施設など鉄骨鉄筋コンクリートの高層建物の外壁の継ぎ目や窓枠部分が多い。1棟に数トン使われることもあった。普通のマンションやアパートには「使われている可能性は低い」(同会)とし、民家にはほとんど使用されていないという。

 72年の製造禁止後、PCBを含む廃棄物は「特別管理廃棄物」とされ、安全な場所への保管と数量の届け出が義務づけられている。しかし、老朽化で解体されたPCB混じりの廃材は、通常のコンクリート廃材と同様、浸出水の処理施設や防水構造の不要な安定型処分場に廃棄されてきた。

 環境省産業廃棄物課は「使用量や場所などに不明な部分が多い」とし、PCBのこれまで知られていなかった用途や処理方法を実態調査するため今年度予算に1300万円を計上している。

 <PCB> 無色で粘性がある油状の液体で、高温や生体内でも分解されにくく、その絶縁性から高電圧のかかる変圧器などに使われてきた。しかし、PCB混入で問題化した68年の「カネミ油症事件」を機に、72年に製造が禁止された。特に毒性が高い「コプラナー型PCB」はダイオキシンの仲間に分類される。00年には、東京都八王子市の小学校2校で蛍光灯が破裂し、絶縁に使われていたPCBが児童にかかる事故が起きた。PCB廃棄物の処理を事業者に義務づけた「PCB処理法」が01年に制定され、処理事業が始まった。

 <国立環境研究所の酒井伸一・循環型社会形成推進・廃棄物研究センター長の話> シーリング材の一部にPCBが含まれることはドイツやスウェーデンで近年指摘されていたが、日本にも同じ問題が存在することが、この研究で明らかにされた。環境汚染のリスクがどの程度か、兵庫県の調査を発展させる形で全体像を明らかにしたうえ、分解処理まで視野に入れた回収の仕組みを検討する必要がある。

(04/19 16:56)

http://www.asahi.com/national/update/0419/018.html

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