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2003年04月09日(水) 17時30分

イラク戦争ニュースの人気ウェブログ、情報の盗用が発覚(上)WIRED

 イラク戦争の解説で名をあげようと試みる多くのウェブログ運営者と同じように、ショーン=ポール・ケリー氏は、地理的にも経験の面においても、自分が有利な位置にいるわけではないと、よく承知していた。

 絶大な人気を誇るウェブログ『 http://www.agonist.org/ アゴニスト』を運営するケリー氏は、前線から遠く離れたテキサス州に住んでいる。報道の経験といっても、地元紙でたった3週間働いたことがあるだけだ。それでも、過去数週間にわたって、ケリー氏は、1日に数十の戦争関連ニュースを自分のサイトに掲載してきた。

 情報の中には、報道機関などが流したものもあるが、大部分は出所が明かされておらず、とくにリアルタイムに近い戦闘情報は、世界各地のハイレベルな情報源から集めたものと考えられていた。

 戦争の詳細情報を求めてケリー氏の洞察に満ちたサイトを訪れる読者数は増加し(最近のある1日では11万8000ページビュー)、『ニューヨーク・タイムズ』紙やテレビネットワークの米NBCが提供する『ナイトリー・ニュース』、オンライン版『 http://www.msnbc.com/news/892398.asp ニューズウィーク』、米ナショナル・パブリック・ラジオからインタビューを受けるなど、称賛の声が高まっていた。

 唯一の問題は、ケリー氏が提供する情報の大部分が剽窃したものだったということだ。テキサス州オースティンに本社を置く民間情報会社、 http://www.stratfor.com/ ストラテジック・フォーキャスティング社(ストラトフォー)が提供する有料ニュースサービスから、そっくりそのまま盗んでいた。

 「そのとおりだ。私は過ちを犯した。馬鹿なことをした」とケリー氏は認めている。

 ワイアード・ニュースによる一連の取材では、ケリー氏の話は二転三転した。最初は、情報源を明かさずにストラトフォー社のニュースを引用したのは、1日に4、5本の記事だけだと言っていたが、その後、「6日か7日は、半分がストラトフォー社からの情報だった」というところまで認めている。

 ケリー氏は、いくつか散発的に盗用しただけでなく、ストラトフォー社の情報を自身ですっぱ抜いたニュースとして提供してもいた。たとえば、イラクでの軍事作戦に関する詳細な報告をまとめて使ったこともあった。同氏はストラトフォー社独自のニュースレター『 http://www.stratfor.com/corp/Corporate.neo?s=IRA&c=d US-イラク・ウォー』から大量に盗用しており、このニュースレターを購読していることは本人も認めている。

 「私が調べた(アゴニスト)ページの記事の多くは、一言半句違いのないものだった」と、ストラトフォー社の主任アナリスト、マシュー・ベイカー氏は語る。

 ケリー氏が剽窃をしている事実を最初に暴いたのは、『ジェネラル・ロイ』(ロイ将軍)というハンドルネームのウェブログ作者だ。ロイ氏は先週、自分の戦争支持サイト『 http://radio.weblogs.com/0120495/2003/04/01.html ストラテジック・アームチェア・コマンド』で、ケリー氏が1日に10を超えるストラトフォー社の情報を盗用したと実例を挙げて非難した。

 ロイ氏は、ストラトフォー社が3月31日(米国時間)に、ウェブサイトの技術的な問題のせいで、ニュースレターの電子メールを大量に送ってきたため、剽窃に気づいたという。同じ日にアゴニストに掲載された、このニュースとそっくりの記事が、画面を眺めていたロイ氏の目に飛び込んできたのだ。

 ロイ氏は、ケリー氏にねらいを定めていたわけではないと主張している。ストラテジック・アームチェア・コマンドは1日当たり3000ページビューで、ケリー氏のサイトのトラフィックと比べれば少なく見える。ロイ氏は、剽窃は耐えられないことなので、「『ブロゴスフィア』(Blogosphere)[ウェブログの書き手が作りあげるサイバースペースを意味する造語]に審判を委ねる」ことを望んだと話す。

 ロイ氏によると、ストラトフォー社から3月31日に電子メールで送られてきたニュースの中には次のような記事があった。「米軍は、アス・サマワ近くの検問所を突破しようとしたとされる車に発砲した。1人が死亡、3人が負傷した。米当局は、死亡した男性はイラク兵だったと述べている」

 40分後、アゴニストにこのニュースがそっくりそのまま掲示されたという。

 アゴニストは同日、アン・ナジャフの飛行場占領に関するニュースを掲載した。ケリー氏は、どの部隊が先頭に立ったか、どの方向から攻めたか、などの重要な点について詳しく報じた。「占領した」(captured)という言葉を「掌握した」(seized)に換え、inやandといった語をいくつか省いていることを除けば、ストラトフォー社のニュースとそっくり同じだったとロイ氏は語る。

 ロイ氏から剽窃だと非難されたケリー氏がまず、アームチェア・コマンドの告発ページにリンクを貼り、記事の一部は「コピー&ペースト」したものだがそうでないものもある、という注意書きをつけて3月21日の記事を再掲載したのは、褒めるに値することだろう。「この場で情報源をすべて挙げられればと心から希望する……。私には時間の制約があることを理解してください」とケリー氏は書いている。

 だが、正しい情報源としてストラトフォー社の名前を挙げなかったこととは別に、ケリー氏が、独自の匿名の情報源から提供された情報だと誤魔化そうとした例が少なくとも2件ある。イラク戦争が始まった3月20日、ケリー氏は特定の情報に関して「ある人から聞いた」と書いている。もう1つの例では、情報源は「トルコ人の友人」となっていた。

 ロイ氏がケリー氏の剽窃にたいする告発文を掲載した後、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の学生、ダン・ペティーさんは、ケリー氏が情報源も偽っているとロイ氏に知らせた。ペティーさんもストラトフォー社のニュースレターを購読している。

 ペティーさんによると、ケリー氏は、「イラクの国境沿いの町にいるトルコ人の友人によれば、推定約2000人の米軍兵士がトルコの国境沿いの町シロピに(到着した)」という記事を掲載したという。だが、ロイ氏から剽窃を非難された後、ケリー氏はこの記事の情報源をストラトフォー社に変更したようだ。

 トルコ人の友人からの情報として掲載された最初の投稿について質問されたとき、ケリー氏は「私のサイトでそのようなことは掲載されていない」と答えた。その後、「書いたという記憶はない」と述べた。

(4/10に続く)

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