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2003年03月31日(月) 17時00分

イラク民間人の犠牲者数を集計するウェブサイトWIRED

 イラク戦争で亡くなった民間人の数を、随時集計しているウェブサイトがある。多くのトラフィックを集めており、この痛ましい問題についての権威ある情報源となりつつあるようだ。

 このサイト『 http://www.iraqbodycount.net/ イラク・ボディー・カウント』によれば、同サイトには1日平均10万人の訪問者があるという。また、『ボストン・グローブ』紙や『サンノゼ・マーキュリー・ニュース』紙、AP通信などのニュースメディアでも、同サイトの数字が引用されるケースが増えている。

 「爆撃がいかなる結果をもたらしているか、われわれは責任をもって記録している」と語るのは、同サイト開設者の1人、ジョン・スロボダ氏(52歳)。「(民間人の死が)1件たりとも忘れ去られないようにしているのだ」

 このサイトではまた、Javaスクリプトを使ったウェブカウンターを開発し、犠牲者の最新の数字をどのウェブページにも掲載できるようにしている。すでに他の200ほどのサイトがこのカウンターを設置しているという。

 イラク戦争で民間人の死ほど議論を呼んでいる問題はないが、そのわりに犠牲者の数を集計している組織はイラク・ボディー・カウントをおいて他にないようだ。メディアも米軍も、イラク政府も、あるいは赤十字のような人道組織も、この戦いがいかにイラクの民間人の命を犠牲にしているか、数字で把握することはしていないのだ。

 1月に開設されたこのサイトでは、16人が死者数の調査にあたっている。ほとんどが米国とイギリスの学者や音楽家だ。

 サイトを立ち上げたのは、イギリスのキール大学で心理学の教授を務めるスロボダ氏と、フリーランスで調査の仕事をしているロンドン在住のハミット・ダーダガン氏だ。

 2人がサイトを始めたのは、ニューハンプシャー大学のマーク・ヘロルド教授に触発されてのことだという。ヘロルド教授は、米軍がアフガニスタンを攻撃した際、民間の犠牲者数を集計する方法を考案した。 http://www.hotwired.co.jp/news/news/culture/story/20020107203.html 米国でほとんど報道されていなかった(日本語版記事)アフガニスタン民間人の死は、重大な問題だと考えたためだ。教授は現在、顧問という形でイラク・ボディー・カウントのプロジェクトに関わっている。

 スロボダ氏は、このプロジェクトが「多分に政治的な」ものであることや、調査に参加している人の多くが反戦活動家であることは事実だとしながらも、数字自体には政治的意味はなく、ただ事実を反映しているだけだと話す。何の加工もされていない同サイトのデータは戦争支持派、反対派ともに利用できるもので、実際これまでも両方の陣営が数字を引用している。

 この数字は、戦争による恐ろしい犠牲を物語る材料になる一方で、ハイテク兵器と綿密な計画を用いれば犠牲者を最小限に抑えられることを示すものにもなる。とりわけ、じゅうたん爆撃が行なわれた第2次世界大戦やベトナム戦争と比較すれば、差は大きいというわけだ。

 「このデータ自体には、何ら政治的なメッセージはない。データを見る人が、自分の政治的見解に沿って、そこから読み取りたいことを読み取っているのだ」とスロボダ氏は述べた。

 同サイトでは、英BBC、『ニューヨーク・タイムズ』紙、『フォックス・ニュース』といった多数の主要ニュースメディアの報道を分析し、民間人の死者数を集計している。

 爆撃、ミサイル攻撃、銃撃戦など、1件の軍事行動において、最低2つのメディアが民間人の死亡を報じれば、サイトのデータベースに記録されることになっている。

 死者数が報道によって異なることも多いため、サイトでは報道されたうちの最多人数と最少人数を記録している。そのため、サイトにはこれまでの最多死者数、最少死者数の2つの数字が表示されている。27日午後(米国時間)の時点では、最少227人、最多307人となっている。

 スロボダ氏によれば、サイトは必ずしも犠牲となった民間人の正確な数を集計しているわけではないという。「われわれは死者の数を数えているわけではなく、報じられた死者の数を数えているのだ」

 また確認できる場合は、誰がいつどこで、どのように命を奪われたかという詳細なデータも記録しているという。

 サイトのトラフィックは、ほとんどが米国からのものだとスロボダ氏は語る。『 http://news.yahoo.com/ ヤフー・ニュース』に掲載されるイラク戦関連の記事すべてに同サイトへのリンクが張られているために、多くの米国人がサイトを訪れているのだという。

 サイトには激しい批判が寄せられることもあるが、そのほとんどはイラク政権の残虐性を指摘するものや、民間人の死の多くはイラク政権に責任があると主張するものだ。それに対し、スロボダ氏はこう述べている。「われわれには、自国の政府に対する責任がある。現政権を選挙で選んだのはわれわれだ。爆弾に使われている費用はわれわれの税金だ。だから、このプロジェクトもわれわれの手でやろうと決めたのだ」

 オンライン・ジャーナリズムに詳しい、コロンビア大学ジャーナリズム大学院のスリーナス・スリーニバサン準教授は、このサイトはデータの収集においても、収集したデータを広く知らせることにおいても、インターネットの新たな使い方を提示していると話す。

 準教授によれば、犠牲者数の情報をコントロールする——米国は数を少なく、イラクは数を多く発表する——ことは対立する双方の利益になるため、もしこのサイトの死者数が正確ならば、他に類のない有意義なサービスを提供していることになるという。

 「これは以前の戦争では見られなかったものだ。インターネットが一般市民にもたらしている新たな情報の利用法といえる」とスリーニバサン準教授。

 米国防総省にコメントを求めたが回答は得られなかった。だが、アフガニスタン攻撃中の2002年1月、国防総省の広報はワイアード・ニュースに対し、米軍は自軍の死者数を追跡する手段しか持ち合わせていないと述べている。

 「われわれは米軍の死者数しか記録していない。米軍以外の死者の数は追跡していないし、その手段も持ち合わせていない……それが民間人でも非民間人でも」と広報は語った。

 また、米軍は「民間人の犠牲を最小限に食い止めようと力の限り努力している……。むろん、いかなる民間人の命が失われても遺憾であり、犠牲者が出てしまった場合、それは決して意図したことではない。付近に民間人がいるときは、目標への攻撃を避けている」とも述べている。

[日本語版:近藤尚子/高橋朋子]日本語版関連記事

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