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2003年03月07日(金) 00時00分

ATM土曜有料化 都銀の手数料横並び  『談合体質』見え見え 公取委も調査開始 東京新聞

 いま一千万円を普通預金で預けても利息は年間、百円にすぎない。なのに土曜日、現金自動預払機(ATM)でお金を引き出すと、手数料百五円を取られる。それだけでも十分に腹立たしいが、より問題なのは、手数料有料化が大手都銀の横並びで決められていることだ。公正取引委員会も調査に乗り出した銀行の「談合体質」を探った。

 「これまでも独禁法違反の調査については、違反が確認された時点でなければ公表は避けてきた。だが今回は国民の関心も高く、調査していることを明らかにしなければ逆に、『お墨付きを与えた』とも受けとられかねない。このため、調査していることを認めることにしている。そもそも、大手都銀が相次いで手数料の有料化を決めたことに道義的な問題がないことはないのだから」

 公取委調整課の担当官はきっぱりそう言い切る。

 土曜有料化は、業界団体の全国銀行協会(全銀協)会長行のUFJ銀行が先陣を切って昨年十二月から実施した。続いて東京三菱が先月十五日、三井住友が今月一日から実施し、みずほは新年度上半期に予定している。

 時間差があるとはいえ四大メガバンクそろっての同額手数料値上げに、独占禁止法違反を指摘する声も強まり、国会でも取り上げられた。小泉首相は衆院予算委で、「皆が同じというのは不思議な話だ。むしろ値下げして収益を上げている企業はたくさんある」と銀行の“談合”を示唆し、厳しく批判した。

 手数料の土曜有料化問題だけでなく、銀行業界では営業上の重要な決定はまず全銀協の会長行が先陣を切って実施、その後さみだれ式に各都市銀行が実施するケースが目立っていた。公取委関係筋は「以前からこの点に着目し業界を調査し内々に横並び慣行の改善を求めた」と明かす。

■「各行の判断」全銀協は否定

 その「指導」もあってか昨年、普通預金金利を史上最低水準の〇・〇〇一%に引き下げると決定した時は会長行の富士銀行(当時)ではなく東京三菱銀行が先行するなど先陣役を変えた。それでも四大メガバンクは横並びで同金利に踏み切っている。今回の土曜手数料有料化では「全銀協の会長行が先陣役」も復活した。露骨な談合的やり方に「公取委も本腰を入れざるを得なくなったようだ」(同関係筋)という。

 こうした「談合疑惑」について全銀協広報室は「手数料の有料化や金額は各行の経営判断で決めている」と否定するばかりだ。

 だが「談合」と疑いたくなる銀行の横並びは、このほかにいくらでもある。

 富士銀行(現・みずほ銀行)OBの高木勝・明大教授は「さみだれ式の横並びはまだまし。先月、予約受け付けが始まった個人向け国債の場合は、年間千二百六十円の口座管理手数料を各行一律で一斉に実施した。証券会社や郵便局で国債を買う場合には手数料はかからないのに」とあきれる。

■「土木業界より談合体質強い」

 日本証券経済研究所主任研究員の紺谷典子氏も「よくニュースになる建設土木業界より、銀行の方が談合体質が強い。一九九四年十月から金利自由化が実施されたが、談合体質は改善されなかった」と話す。

 「振込手数料で、料金が安くて利益が薄い『文書』をなくし『電信』だけになったのも、談合体質のせいだ。少しキーボードをたたくだけなのに高すぎる。ATM手数料にしても、欧米の銀行では、そんな機械的手数料は取っていない」

■背後に“やよい会”の影

 では、大手都銀はどのような手口で横並びを取りまとめるのか。実は、その決定をする組織が背後にあると言われている。「やよい会」と呼ばれる業界の非公式な親睦(しんぼく)組織だ。

 この問題に詳しい金融評論家の笹子勝哉氏は「前身は五〇年代にできた『楽有会』です。当時の富士、住友、三菱、三井、三和、第一の六行の企画部長でつくっていた。六行会とも言われた。議題によっては部次長や企画担当役員も加わり、月一回程度の割合で会合を持つ。赤坂の料亭やゴルフ場で開いたりする」と話す。四大メガバンクになった今でも「機能しているはずだ」という。

 「やよい会」の役割は二つあると笹子氏はいう。

 「一つは対大蔵(現財務省)や対日銀の裏の窓口。当局から金融政策情報を受け行政側と折衝する役だ。かつて田中角栄首相に、ある頭取が公定歩合のことをたずねた。田中首相は『今年の梅はそろそろ七分咲きかな』と言った。当時の公定歩合は何分何厘で表示したから意味はすぐわかる。それはやよい会でも報告され公定歩合の変更はみんな事前に知ったはずだ」

 「もう一つは貸出金利や住宅ローンの金利変更などや、新しい金融商品を手がける場合だ。許認可権を持つ財務省の感触を確かめたり、実施する段取りを話し合う。今回の土曜日有料化もやよい会で話し合っているはず」とみる。

 その上で笹子氏は横並び体質は金融行政にも原因があると指摘する。「金融当局にとっても、中央に窓口をつくりそこを通じてアメをあげるから公平に分けろと言っていた方がやりやすかった。だから横並び体質になった。やよい会はその折衝役ということ」

■ドル箱収入源に強いこだわり

 さらに四大メガバンクが談合批判を浴びながらも、手数料有料化にこだわった点にも言及する。

 「各種手数料収入の収益に占める割合は大きくなっている。みずほ銀では一月に公表した実質業務純益予想が三千八百億円。そのうち手数料収入は千億円近くあると見ている。純益の二割を超える。他銀でも一割近い。今後も口座管理手数料など十や二十の手数料の設定を検討している」

 だが経済評論家の佐藤朝泰氏は、こうした銀行のやり方を「預金者が見放しつつある」とみる。

 「預金者も銀行の『だましのテクニック』が分かってきている。振り込みのコンピューター化は二十年前に始まり、口座を増やすための無料サービスだった。でも、銀行は預金者がその便利さを覚えたころを見計らって、他行への振込料金を取り、続いて自行他支店への料金も取るようになった。次は、普通預金口座でも“保管料”を取るしかない。金を貸さず、国民を愚弄(ぐろう)するだけの銀行なら、国有化した方がよっぽどいい」

 さらに「メガバンクの相も変わらぬ横並び体質をみて、国民も『大きいところほど駄目だ』と分かったはず。どこでも金利は安いのだから、サービス面で差別化するしかなく自由に選択する時代になっていく」

■頼みの公取委も旧大蔵OB大半

 一方、公取委は独占禁止法違反で銀行業界を追い詰められるのか。桐蔭横浜大学の鈴木満教授(経済法)は懐疑的だ。公取委の歴代委員長は、竹島一彦・現委員長を含め旧大蔵省OBが大半を占め、同省が監督する金融関係の摘発は発足当初の四八年、銀行の金利カルテル一件だけだからだ。

 「本家の財務省を意識し金融機関への摘発が弱腰になっている。今回の調査を担当している調整課はもともと各省庁との調整係、本気で摘発するなら審査局で取り組むべきだった」


http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20030307/mng_____tokuho__000.shtml

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