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2003年03月02日(日) 08時09分

イレッサ副作用、警告遅れる 1カ月前には危険認識朝日新聞

 肺がんの治療薬「イレッサ」の副作用による間質性肺炎で死亡する患者が相次いでいる問題で、薬の輸入販売元アストラゼネカ社(大阪市)が、医療現場に警告する緊急安全性情報を出す1カ月前の昨年9月、副作用とイレッサの因果関係を認めたうえで、添付文書の改訂を検討していたことが、社員のメールの写しから明らかになった。最終的に厚生労働省の指示で情報を出したのは10月15日になってからだった。

 関係者によると、メールは同社安全性情報部の担当者がイレッサの開発や安全性を検討する担当者にあてた。日付は昨年9月12日で、同11日にあった担当者打ち合わせの内容が記されている。

 打ち合わせでは副作用である間質性肺炎の症例が検討されたとみられる。メールは報告症例について「全体としてイレッサとの関連性を否定することは難しい」と結論づけた。当時、海外を含めて「60例程」の報告があり、「決して発現率が低いとは言えない」とし、「イレッサとの関連性を肯定するという前提で、今後の対策を検討する必要がある」と、危険性を認識していた。

 今後の対策として添付文書の改訂の必要性とMR(医薬情報担当者)から医療機関への情報提供などをあげた。「次のようなオプション(選択肢)が考えられる」として(1)添付文書は改訂しない(2)記載を変更する(3)より重い注意喚起として「慎重投与」などの項にも記載する——をあげている。

 また「厚労省から何らかの指示がくる可能性は少なからずある」と予想し、「改訂しないと回答する明確な根拠を示すのは難しい」と記す。イレッサは世界的にも日本で初めて承認された抗がん剤であることから「日本の添付文書改訂は海外での審査に影響を与えるため、本社(英国)の意向に沿った形で厚労省と交渉を進める必要がある」としている。

 また厚労省に「改訂しない」と伝えた場合、「今回乗り切ったとしても、症例が蓄積された場合、何らかの改訂をせざるを得ない」としている。

 メールでは打ち合わせの結論を受けて、添付文書改訂チームでの検討を依頼している。

 打ち合わせがあった昨年9月11日時点で、同省に報告されたのは、日本の副作用症例の約10例(死者6人)で、ア社が把握していた約60例とは大きな隔たりがある。

 同省が副作用多発を懸念して、添付文書の改訂に伴う緊急安全性情報を出すよう指示したのは10月初めで、15日に発布された。安全性情報は企業の責任で出すもので、同省が指示するまでア社から改訂の意向は伝えられなかったという。

 イレッサは承認後、約2000の医療機関で使われ、9月末時点では約7000人の肺がん患者に投与されている。メールの時点では、千数百人が投与を受けたとあり、同社が緊急安全性情報を出すまでに数千人の患者に投与された可能性がある。

 一般に抗がん剤に副作用はつきものとされ、市販後はいかに副作用に注意するかが重要。医療現場への副作用情報伝達の遅れは致命的となる。

 同社は文書の存在を認めた上で、「詳細情報の収集や報告された症例の精査は時間を要するプロセスだったが、最大限努力したと考えている」と話している。

    ◇

 ■イレッサ■ 肺がん治療に使われる抗がん剤で、一般名ゲフィチニブ。英国のアストラゼネカ社が90年代から開発。昨年7月、世界に先駆けて日本で承認された。同社日本法人によると、国内の使用患者は1月末現在で約2万4千人。うち473人(2%)に間質性肺炎や急性肺障害が起き、173人が死亡した。一方で投与患者の2割に効果があるとされる。正常な細胞も攻撃する従来の抗がん剤と異なり、がん細胞を主な標的とするため、当初は重い副作用が少ないとみられていた。(08:08)

http://www.asahi.com/national/update/0302/008.html

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