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2003年02月28日(金) 00時00分

不正車検事件の背景 多忙な検査官 悪質業者が威圧 東京新聞

 自動車の安全確保と公害防止を目的にした自動車検査制度の根幹を揺るがすような事件が、国の車検場で起きた。民間車検場を指導監督する国の機関が、自ら安全基準に適合しない車を通していた不正車検事件。警視庁は、東京運輸支局(東京都品川区)の複数の検査官が不正を行っていたとして、十八日に同支局を家宅捜索、全容解明に向けて捜査を続けている。国が認める「不正の常態化」はなぜ、これほど広範囲にまかり通ってきたのか。

 (社会部・不正車検事件取材班)

 一九九五年、米国の圧力に押される形で、車検行政にも規制緩和の波が押し寄せた。民間の整備工場などで車を点検・整備しなければ受けられなかった車検が、同年以降は国の車検場で先に車検を受けられるようになった。

 先に車検が合格になれば、車を整備する必要がなくなり、車検費用を安く抑えることができる。車の利用者は、国の車検場に自ら車を持ち込み始め、車の持ち込みを代行する車検代行業者も多数参入する。いわゆる「ユーザー車検」だ。

 日本自動車会議所の「数字でみる自動車」などによると、二〇〇一年度のユーザー車検は一九九五年度の二倍に増えた。これに対し、検査職員の数は行政改革で九五年度の千四十二人から〇一年度の千四人へと減った。

 そうした状況下で、一部の代行業者が不正改造車などを車検に通すよう圧力をかけ始める。関係者によると、業務量が多い東京、神奈川両運輸支局では、一部の検査官が対応に追われる中で威圧に屈し、さらに多くの代行業者につけ込まれた。

 しかし、支局側は組織的な対応を取らず、現場の検査官任せにして、不正がズルズルとまん延していったという。関東運輸局管内では、三人に一人以上の検査職員が内部調査で不正を認めている。

 ■検査官も不正疑惑

 だが、不正の背景が威圧だけか、というとそうでもないようだ。

 捜査関係者は「代行業者一人に対し、支局にいる職員は大勢。毎回威圧に屈したとも考えにくい」と指摘。検査官が主体的に関与する悪質な不正があったとみる。複数の車検関係者も「特定の業者と仲のいい検査官はいる」と打ち明ける。

 悪質な不正の一つとして、車を検査せずに車検を通す「ペーパー車検」がある。警視庁交通捜査課の調べでは、通常は機械で印字される検査票の検査結果欄に、検査官の印鑑が押されているなど不自然な検査票が複数見つかっている。

 関東運輸局は改善策として、威圧などがあった場合に備え、ポケットに隠しておける非常ベル遠隔装置を配布したり、一人で問題を抱え込まないためのチーム制を導入。これまでも検査コースに非常ベルはあったが、業者の仕返しを恐れ、ベルを押す検査職員は少なかったという。

 また、警察との連携を強化。昨年七月から今年一月までに同運輸局管内で起きたトラブル三十七件のうち、十二件を警察に通報。三件で車両の所有者が脅迫容疑で逮捕されるなどした。今年四月からは不正改造車への規制も法的に強化される。

 再発防止は威圧への対策が中心で、内部監査の充実策については疑問の声も上がる。ある業者は「不正車検の疑いを知らせても、どう調べているのか分からない」と指摘。不透明さの解消には、なお課題を残している。

 <メモ>
 不正車検事件 昨年5月、東京運輸支局(当時は東京陸運支局)で複数の検査官が長期間にわたり、不正に車検を通していたことが本紙の報道で発覚。国土交通省が検査職員の自己申告による全国調査を実施した結果、計194人の検査職員が約990台の車を不正にパスさせていたことが分かった。同6月、東京運輸支局長ら12人が戒告、現場の検査官ら205人が訓告や厳重注意となる異例の大量処分が行われた。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20030228/mng_____kakushin000.shtml

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