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2003年01月08日(水) 20時24分

[なら非公開白書]/5 保護と守秘 正しい啓発が必要 /奈良毎日新聞

 ◇公表控え大事件に発展も
 プライバシーの保護と守秘義務。確かにどちらも重要だが……。
  ◇  ◇
 奈良市保健所は、病原性大腸菌O157のような感染症や食中毒が発生しても患者が1人の場合は原則、公表しない。「患者のプライバシー保護」を最大の理由とするが、真に市民の視点に立った対応といえるのかは疑問だ。
 中核市移行で昨年4月発足した市保健所は5月、「偏見や差別を生む恐れがある。患者が多数なら市民の健康を守るために発表するが、1人の場合はしない」との基準を示した。報道各社の反発で7月に「症状などによって判断する」としたが、なお「県の基準と合わせる必要もある」と慎重だ。
 市保健所は「患者が1人なら感染拡大の可能性が低い」というが、感染源・経路や患者数の特定には数週間かかる場合もある。そもそも発生を知らされなければ、何の対応もできない。その間に第二の被害を生む可能性がないと言い切れるのか。
 園児が死亡した生駒市立保育園O157集団感染事件(01年)でも問題になった点だ。保健所は「保健所の仕事は発表ではなく、予防」としたが、新聞やテレビを通じた迅速な情報提供と注意喚起も保健所の重要な役割なのではないか。
 プライバシーの保護が重要なのは当然だが、死亡事案などを除き、発表、報道されるのは市郡単位の住所と性別、年齢程度。個人が特定されると思えない。偏見を生まないためには正しい啓発が必要で、事実の公表・非公表とは別に論じられるべき問題だろう。
  ◇  ◇
 情報をつまびらかにしないことで被害が拡大した事件が実際に起こった。裁判費用名目に多数の依頼人から現金を詐取した元奈良弁護士会の河辺幸雄被告(53)=公判中=の巨額詐欺事件では、事件発覚前に複数の依頼者から同弁護士会に対して調停の申し入れがあった。にもかかわらず、弁護士会は会規定と守秘義務を盾に一切公表しなかった。その後も、何も事情を知らない人からの依頼は続き、起訴被害総額だけでも約2億円に上る事件に発展した。
 守秘義務は何のために、誰のためにあるのか。守らなければならないのは被害者であって、河辺被告ではない。弁護士の懲戒権を持っているのは各弁護士会と日本弁護士連合会だけであり、弁護士の懲戒に関する情報は弁護士会にしかない。弁護士会が適切な措置を取らなければ、刑事事件にならない限り市民は弁護士の非行事実を知ることができない。
 日弁連は91年3月、「(懲戒処分につき)相当と認めるときは公表することができる」と運用基準を設けた。これを受け大阪弁護士会は95年、処分決定前に懲戒などの請求内容を公表するよう会規定を改正した。昨年4月には依頼者に和解金を渡さなかったなど十数件の非行を繰り返し、懲戒処分に向けた調査を実施していると報道機関に初めて公表した。一方、奈良弁護士会は河辺被告の事件後の昨年7月になってようやく事前公表するよう規定を改正した。
 河辺被告の事件は、奈良弁護士会が被害を拡大させる一因になったといっても過言ではない。 【行方一男、野村和史】(毎日新聞)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030108-00000003-mai-l29

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