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2002年12月19日(木) 00時20分

<マンション訴訟>景観守る住民の努力を評価毎日新聞

 都市の景観を重視して18日、高層マンションの一部撤去を命じた「国立マンション訴訟」の東京地裁判決は、利益優先の業者に警鐘を鳴らし、住民に「景観権」を認める初の司法判断となった。不動産会社やマンション業者は「厳しい判決」と受け止めているが、居住者の「財産権」との兼ね合いや、実際に撤去が可能なのかといった課題も残る。景観権をめぐる過去の裁判も振り返りながら、今後の問題点を探った。 【森本英彦、清水健二、三木陽介、古田信二】

 ■景観守る住民の努力を評価

 故山口瞳氏がエッセーで「日本で一番美しい大通り」と称賛した東京都国立市の「大学通り」は、1934年に住民が桜を植樹して以来、文教都市のシンボルとなってきた。60年代からたびたび持ちあがった高層マンション建設は、反対運動によりすべて計画変更され、高さ制限のない「住宅専用地域指定」の動きも、住民が撤回に追い込んだ経緯がある。

 いわば、住民の努力で勝ち取った景観であり、これが「都市景観」の特殊性といえる。自然の山並みや海岸線、所有者の負担で維持されている神社仏閣などから、住民が一方的に「景観の利益」を得ているのとは、大きく違う点だ。

 判決も、法的に保護される景観を「地域住民が自己犠牲を伴う長期間の努力で自ら作り出したもの」と限定している。司法が初めて認めた「景観権」を得るのは、容易ではないといえる。

 「景観」をめぐるマンション問題は各地で出ているが、その背景には、バブル経済の崩壊後、大企業が所有していた都心部の広大な敷地が売りに出されたことがある。広い土地には、高層マンションの建設が可能で、業者にとっては高層の方が、利益も大きい。だが、一等地に住む「旧住民」にとって、景観が損なわれることへの不満は大きい。判決の見解に沿えば、景観を守るために、住民がどれだけの時間、どれだけの力を注いだかが焦点になってくる。

 住民の被害救済として、金銭ではなく建物撤去を命じた理由について、判決は被告の明和地所(東京都渋谷区)が住民側を敵視したことを挙げ、「社会的使命を忘れた」と非難した。業者にも住民と歩調を合わせて景観を守る「自己規制」を、強く促したと言える。

 高見沢邦郎・東京都立大教授(都市工学)も「景観は地域によって考え方が異なり、地域でルールを作るしかない。判決は住民が守ってきたルールを、法律や条例の規制に近いところまで高めた点で意義がある」と語る。

 ■撤去には困難も

 判決は、同マンション4棟のうち「大学通り」に面したイーストコート(134戸)について、地上20メートルを超える部分(7〜14階に相当)の撤去を命じた。実際に取り壊すとしても、判決の確定後となるが、可能なのだろうか。

 明和地所は「撤去するとすれば、屋根部分に新たな防水工事などが必要になり、技術的に可能か不可能かは分からない」としている。別の大手総合不動産会社の担当者は「人が居住している状態では、騒音対策や安全性確保などに大きな困難を伴う」と指摘する。

 イーストコートは「訴訟の影響で販売時期を逸し、マンション市況も低迷している」(明和地所)ことなどから、分譲を断念し、賃貸に切り替えて入居者募集を始めたばかり。まだ2世帯しか入居しておらず、撤去対象の7階以上には1世帯しか住んでいない。撤去のハードルは、通常のマンションよりは低いといえそうだ。

 一方、入居者は一様に戸惑いの表情を浮かべた。別棟の12階に住む主婦は「入居したのは4、5カ月前。係争中であることは知っていたが……。何も言えません」と言葉少な。70代の主婦も「個人ではどうしようもない問題」と困惑した様子だった。報道陣の問いかけに、無言で出掛ける住民の姿も目立った。

■業者は「厳しい判決」

 マンション業界は今回の判決について「特殊なケースで起きた特異な判決」(大手不動産)、「会社と住民、行政との間に(事前の説明不足など)ボタンの掛け違いがあったのではないか」(建設会社)と語るが、厳しい判決内容に驚きは隠せない。国土交通省は「関係者が参加して事前に明確なルールを作っておくことが必要だ」(住宅局)と指摘する。

 別の不動産会社幹部は「入居が始まっているマンションの一部を取り壊すことが、現実的と思えない」と疑問を投げかけ、景観権について「観光地ならともかく、市街地に広げたことは驚き」ともいう。

 今年改正された建築基準法では、地元住民らが都市計画の提案を行うことが来年から可能になり、住民が積極的に街作りに参加できるようになる。マンション計画に、反対運動は少なくないが「説明を重ねて住民に納得してもらうしかない」(大手不動産)ようだ。(毎日新聞)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20021219-00000126-mai-soci

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