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2002年12月15日(日) 13時58分

「ごみ」も海を渡れば商品に 外国船員に売る中古業者朝日新聞

 集めた品物は修理しないし、洗わない。モノの価値は変わらないのに、自分の手を通って海を渡れば「ごみ」が「商品」になる。外国船を求めて港に集う中古品販売業者たちから日本の姿の一端がかいま見える。

 愛知県の三河港。

 朝9時、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の小さな貨物船に、中古品販売業者が荷物を積み込む。10年以上前の冷蔵庫22台、洗濯機15台、古い自転車に瓶詰めのジャム……。すべて日本人が「捨てた」ものだ。

 買い手は、日本の1万円札を握りしめた船員たち。「賞味期限は大丈夫か」「ペダルの軸にひびが入っている」。厳しい注文をつけてくる。

 各地の港には「不用品」を積んだトラックが行き来するが、税関を担当する財務省も全国の実態はつかんでいない。

   □   □

 関東地方の中古品業者(53)。2トントラックで着いたのは茨城県の鹿島港。自治体が処分した放置自転車100台を外国船に納めた。「ほかに欲しいものは?」。日本語と片言の英語、筆談で交渉が始まる。ミシンは1台2000円、電気ポットは1個500円で40個。「テレビや扇風機は?」。さらに薦めていく。

 業者は元ミシン販売業。十数年前に倒産し、ホームレスを使って粗大ごみの中古家電を集め、船員に売り始めた。北は宮城県から南は三重県まで。1日に500キロ走ることもある。常に現金決済。「証拠が残ると困る取引先が多い」。作業ズボンのポケットに100万円を無造作にねじ込んでいる。

 人の身勝手、あふれすぎたモノ。さまざまな事情でごみが生まれる。

 コップや鍋、写真アルバム……。引っ越しの依頼主が一時預けたきり、引き取りに来ない「引っ越しごみ」はフィリピンの雑貨業者に送られた。

 産廃業者からも最近、外国製スナック菓子がコンテナ3個分、持ち込まれた。ある商社が輸入したが、菓子の香料が問題になり、倉庫で眠ったままになった。「こっそり処分してくれ」と頼まれて外国船に積んだ。

   □   □

 船員からの注文も、品物を売りたい取引先からの連絡も携帯電話に入ってくる。

 「業務用冷蔵庫が手に入った。いらない?」

 解体業者からだった。

 「いくつある? 暇なとき、取りに行くよ」

 また着信音。今度はイラン人ブローカー。「01年製のCDコンポが3000台あるけど、1台1000円で買わないかい」。処分に困った倉庫業者の横流し品という。

 商品になる「ごみ」はいくらでも舞い込む。それでも狙った「商品」は探しに出かける。

 大規模団地一帯の粗大ごみ置き場。同業者も来ている。競争だ。欲しいものの一つは炊飯器。市のごみ回収車が来る午前9時ごろまでが勝負だ。1時間後。ストーブや電気ポットでトラックはいっぱいになった。

 行政とは違う、陰のリサイクル。自分ではそう思っている。しかし、ふと考え込む時も。日本人が捨てているものっていったい何だろう……。

    ◇

 環境省によると、家庭などから出る一般廃棄物は年間で5145万トン(99年度)。東京ドーム139杯分にのぼり、1人1日あたりでも1キロを超す計算だ。一方、リサイクル率は年々高まっているとはいえ、まだ13.1%にとどまっている。

(13:38)

http://www.asahi.com/national/update/1215/013.html

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