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2002年12月08日(日) 03時21分

<自殺願望サイト>知り合って1カ月の男女が心中毎日新聞

 東京都練馬区のマンション一室で今年10月、男女2人が心中しているのが見つかった。2人の“出会い”は、インターネットの自殺願望の掲示板だった。見ず知らずの男女が、死ぬためだけに出会い、そして命を絶った。その間、わずか1カ月余だった。 【草野和彦、川辺康広】

 10月24日、同区内のワンルームマンション1階の無職の男性(30)方を父親が訪ねた。玄関や窓はガムテープで目張りがしてあった。部屋の中央で、息子と、知らない女性が並んで倒れ、絶命していた。そばには、まだ新しい七輪が置かれ、練炭をたいた跡があった。一酸化炭素中毒死だった。

 女性の身元は、持っていた運転免許証から大阪市内の会社員(32)と分かった。同月11日に家出し、1週間後に家族から捜索願が出されていた。2人とも死後10日前後と推定された。一緒に生活した形跡はなく、女性の家出後、間もなく自殺したとみられた。

 「インターネットの自殺掲示板で知り合った〇〇さん(男性の名前)と死にます」。女性は自宅に家族あての遺書を残していた。「生きる気力をなくした。人と話すのも嫌だ」とあった。女性の家族は警察に「子供のころから自殺願望があった」と話した。

 男性のパソコンには、10月9日に女性に送ったメールが残っていた。「いつ来ますか」「七輪で確実に死ねます」「知り合ってすごく短い1カ月でしたね」。東京駅から男性の自宅までの行き方も説明していた。

 パソコン画面を通じて9月初めに知り合ったとみられる2人。だが、女性が家を出るまで顔を合わせた形跡はない。

 男性は日本海側の地方出身だ。父は「上京してからは定職に就いていなかったようだ」と警察に話した。しかし、3年ほど前にできたばかりのマンションの家賃は月々きちんと払われており、収入はあったようだ。連絡が取れない息子に不安を覚え、上京した父。近くの店で道を尋ねてようやくたどり着いた息子の部屋。遺書もなく、自殺の動機は思い当たらなかった。

 ある捜査員は「女性の遺書に比べ、男性のメールからは悩みや悲そう感は感じられない。何か死ぬことを楽しみにしているようにさえ読めた」と話した。

 女性の遺書には、こうも書かれていた。「やはり1人で死ぬのは寂しい。相手は誰でもよかった」

 今回、自殺した男女がどのサイトの掲示板で知り合ったかは明らかになっていない。

◇ネットにあふれる自殺掲示板 16万アクセスのサイトも

 インターネット上には、自殺に関するサイトがあふれており、あるサイトは00年4月の開設以来、アクセス件数が16万件を超えた。少年から高齢者まで、世代別の掲示板まで用意されている。

 今回の男女と同世代とみられる人たちが集う「成人のための自殺掲示板」。そこには「私は、もう、この世に未練もなくなったのでもうすぐ行きます」「殺人事件をみるとうらやましいって思います。殺されたい」などと書き込みがあった。

 98年、ホームページで自殺相談を受けていた札幌市内の男性(当時27歳)から青酸カリを宅配便で受け取り、杉並区内の女性(同24歳)が服毒自殺する事件があった。男性も女性の後を追うように服毒自殺し、自殺ほう助容疑で被疑者死亡のまま書類送検された。

◇病理形態広がった

 岩井弘融・東洋大名誉教授(社会病理学)の話 インターネットを通じた社会病理の形態がまた広がった感じだ。2人は恐らく精神的に孤独な人たちで、直接顔を合わせないだけに、共感、同情しやすかったのだろう。現代の自殺の形なのだろうか。

◇出会いの形変えた

 小田晋・帝塚山学院大教授(精神医学)の話 初対面の男女が心中することは昔からあるが、インターネットが人の出会いの形を劇的に変えている。出会いが記号化し、死ぬという行為まで成立してしまう世の中になってしまったのかと思う。札幌のケースのような反社会的行為とは言えないまでも、驚く。

◇30代前半が「岐路」

 評論家の赤塚行雄さんの話 家族など近距離間のコミュニケーションが断絶し、気持ちの行き場がなくなっていることが、短期間で死という極端な結論に走ってしまう一因だろう。高学歴化、長寿化で、人生の岐路は30代前半あたりになりつつある。かつての10代のような生きることへの悩みを、この年代が抱いても不思議ではない。(毎日新聞)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20021208-00000109-mai-soci

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