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2002年10月07日(月) 00時24分

<内部告発>企業の不正暴く 通報者保護が大きな課題 毎日新聞

 雪印食品や日本ハムグループの牛肉偽装、東京電力の原発トラブル隠しなど、著名企業の不祥事が次々と「内部告発」によって暴かれている。告発につきまとう「裏切り」「密告」といった否定的イメージが薄れ、組織健全化の「切り札」と受け止める意識がうかがえる。一方で、原発トラブル隠しを国に告発した人の情報が企業側に筒抜けになっていた事実も発覚し、内部告発を受け付けるシステムの未熟さを示した。今後は、通報者をどう保護するかが大きな課題になる。 【野原靖、奥野敦史、田村晃一】

 00年12月。通産省(当時)は東京電力に調査指示書を渡した。福島第1原発1号機の蒸気乾燥器の自主点検データに関する調査。その書類には、判読可能な米国人の署名が記されていた。トラブル隠しの内部情報を提供した技術者の署名だった。告発した人物を保護するという「常識」は欠落していた。

 勇気ある告発をしても、改善されるのか。手痛いしっぺ返しを受けるのではないか——。そんな懸念を解消するための動きがある。大阪の企業監視グループ「株主オンブズマン」に参加する弁護士らが今月29日設立を目指して準備を進める「内部告発支援センター」(仮称)だ。

 企業による食品・薬品の不正表示や総会屋・暴力団との交際、粉飾決算などについて内部告発を受け、調査したうえで捜査機関などに通報する。インターネットなどでの公表も検討している。告発者の匿名性を守るため、調査は法的に守秘義務がある弁護士や公認会計士に限定するという。

 それでも、内部告発者をどこまで保護できるかは検討課題だ。内部の会議では「会社を解雇された内部告発者から『面倒を見てくれ』と訴えられたらどうするのか」といった意見も出た。結局「たとえ不正が明らかでも『内部告発者を守れない』と判断したら、調査を断念せざるを得ない」と結論づけた。

 こうした民間による支援制度作りの背景には、「内部告発者保護制度が法制化されるには相当な時間がかかる」(阪口徳雄弁護士)との読みがある。ここ数年、NECやイトーヨーカ堂など企業の間で、不利益な扱いをしないことを前提に内部通報を受け付ける部署を設ける動きも出ている。しかし、首相の諮問機関・国民生活審議会の消費者政策部会が公益通報者保護制度の導入について検討を始めたのは、今年9月になってからだ。

 既に内部告発者の保護を定める法律はあるものの、99年の茨城県東海村の臨界事故を機に改正された原子炉等規制法や船員法、鉱山保安法など限定的で、諸外国には後れを取っている。

 日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会消費生活研究所の宮本一子所長によると、米国、英国、韓国、オーストラリアなどで内部告発者保護が法制化されている。米国が個別の法律ごとに保護規定を盛り込んだ「個別型」なのに対し、英国は幅広い分野を一つの法律でカバーする「包括型」で、98年制定の公益開示法によって告発者が不利益を受けることはないとされ、解雇や損害を被った場合は賠償が認められる。

 今後の内部告発の取り扱いについて、国民生活審議会消費者政策部会委員の浅岡美恵弁護士は「組織の締め付けが強い日本の場合、告発をためらったり、告発しても組織にもみ消される恐れもある。日本ではやっと内部告発がクローズアップされ出した段階。もっと議論し、日本の風土を踏まえ、告発によって公益の目的が達成される制度を検討すべきだ」と指摘する。

 日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会消費生活研究所が00年11月、18歳以上の社会人を対象に行ったアンケート(有効回答数381)で、「内部告発についてどう感じるか」との問いに45・1%が「公益のためならよい」、38・1%が「内部でいったん警告をしたのに改善されなかった場合はよい」と答え、8割以上が条件付きながら内部告発を肯定した。

 反対に、「内部の不正や違法を告発するのは裏切り」としたのはわずか2・1%、「告発しなければいけないとは思うが、自分の身を守りたい」は4・7%だった。同研究所では「マイナスイメージを持っている人が思ったよりはるかに少ないことに驚いた」と話している。

 国家公務員の職務に関係する内部告発者の保護に限っては、民主党と社民党が99年ごろから法案を練っている。次期国会で両党などが共同提案する方針だ。

 両党の法案では、国家公務員の職務に関係する違法な事実や、人の生命、健康に重大な影響を与える恐れがある事実などを公務員や市民が知った場合、内閣府の外局に新設する「行政適正化委員会」(仮称)などに報告できる。告発者は氏名が秘匿され、不利益な扱いを受けないことが保障される。同委員会は調査し、対象機関に是正を勧告できる。

 ■企業不祥事を指摘した主な内部告発■

 企業          告発内容

雪印食品 倉庫会社社長が、自社の倉庫で牛肉偽装が行わ

     れていたことをマスコミに

日本ハム 子会社関係者が「子会社の社員が伝票を国産

     グループ 牛に書き換えた」とファクスで近畿農政局に

USJ  倉庫会社の元アルバイトが、直営レストラン

     で賞味期限切れ食材の使用などをマスコミに

東京電力 点検請負会社に派遣されたGEの元社員が、

     点検記録の改ざんを当時の通産省に

(USJはユニバーサル・スタジオ・ジャパン、GEは

ゼネラル・エレクトリックの略)


[毎日新聞10月7日] ( 2002-10-07-00:24 )

http://news.lycos.co.jp/society/story.html?q=07mainichiF1007m131&cat=2

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