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2002年09月13日(金) 00時00分

ジー・オーグループ、“石原知事の娘”騒動 なぜ詐欺に遭う 東京新聞

 世紀を超越した不景気国家ニッポンに、またしてもうさんくさい詐欺話が持ち上がった。主役は「ジー・オーグループ」名誉会長の大神源太容疑者と、自殺したとされる“石原都知事の娘”を名乗る女性実業家だ。はたから見れば「こ、これは」と絶句するしかない言動や行動に、なぜ多くの人がはまりこむのか−。

 「世界共通語として大神語をつくる」

 「オレはキムタクよりもいい男」

 「物質主義の誘惑には微動だにしない」

 三万人以上ともいわれる会員を集め、巨額資金をだまし取ったとして警視庁に逮捕された大神容疑者の伝えられる“語録”だ。自ら率いたジー・オーグループの会報には「世界を救う」「国際貢献」の文字も。

 この大神容疑者は行動も奇抜だ。五億円も投じて主演、監督、脚本をすべてこなした映画「ブレイズ・オブ・ザ・サン」を制作、お披露目パーティーに乳首が透けてみえるシャツで現れた。この前後フィリピンの銀行を買収し「大神銀行」という名を付けている。

 俳優兼銀行経営者兼実業家−。この人物の実像はどうなのか。同グループの元側近が重い口を開く。

■「話し方は幼稚で教養がない」

 「話し方や言葉遣いが幼稚で教養がない。何でも自分の思い通りになると思っていて、逆らえば解雇か降格になる。融資案件に反対した幹部に『おれが法律だ。忘れるな』と言った」

 さらに別の元側近は−。

 「会員に配る冊子『エントリーガイド』には毎月、高級ブランドのスーツ姿で登場し、『大神会長・救世のご教示』を示し、写真入りで護身術を解説した。毎月曜日は和太鼓を十回たたいて朝礼が始まり、彼が登場するビデオを上映した。これにびっくりして辞めた社員もいた」

 一方、「石原慎太郎都知事の娘」を名乗って約九億円を集めたとして、被害者との間で大トラブルとなった揚げ句、死んでしまった長野県上田市の事業グループ「ミイヤコーポレーション」の故新井みや子代表も負けず劣らずだ。

 「石原プロモーションがバックについている」

 「莫大(ばくだい)な遺産を相続したが、処理するためとりあえず現金が必要」

 「松田聖子の娘の沙也加(SAYAKA)は、ミイヤの専属タレントになる予定だ」

 大神容疑者に通じる奇抜系行動もある。同コーポレーションの元社員は、「『(新井氏自身の)気のパワーが入っている』という数珠を五千円で買わされた」と話す。

 さらに世間の注目を最も集めた“都知事の娘”について元社員が証言する。

 「一年ほど前、『重大な発表がある』と社員を集め、『都知事とある女優の間に生まれた娘』と“告白”した。それ以降『都知事がバックにいる』などと公言するようになって…。『慎太郎先生からもらった』といってポルシェにも乗っていた」

 もっとも故新井代表自身は死の直前、「(都知事の)娘じゃありません。周りが言っていただけ」などと弁解していたが。

 異様な言動、わざとらしいパフォーマンス−。だれもが思う。「なんでこんな人物に金を預けるのか」。この疑問に弁護士たちに答えてもらった。

 悪徳商法の被害者対策に長年取り組む消費者問題研究家の堺次夫氏がまず説明する。

■初の被害が大半 だます側は進化
 
 「一九九七年ごろにもオレンジ共済事件やKKC事件、和牛商法事件などの大型の悪徳商法事件が相次いだ。それから五年近くたちのど元過ぎれば熱さ忘れるで被害がまたぞろ出てくる」。同時に「実はだまされる人のほとんどは『自分は気を付けていたのに、今回ばかりは魔が差した』と後悔する人が多いように、初めて被害に遭う“初心者”が大半だ。一方で、一番研究しているのがだます側なんだ。数々の事件にかかわった詐欺師らが、かつての悪徳商法の悪いところは消して、いいところだけを集めている」。つまりだます側は“進化”しているようなのだ。

 悪質商法に詳しい山本政明弁護士が、この“進化”した詐欺師たちの話を真に受ける被害者たちの心理状態を解説する。

 「一般的にはどう見てもうさんくさい話であっても、その中に少しでも真実味があるとそれを信じ込んでしまう。周囲がだまされていると指摘しても受け入れられない。一種の洗脳状態が起きる。これに自分の友人や知人がうまくやっているといううわさを聞くと、乗り遅れたくないという群集心理も働く」

 さて今回のジー・オーグループによる巨額詐欺事件の被害者心理のメカニズムも同様だったのか。被害弁護団の弁護士は「被害者もみんな最初は『うさんくさそうだなあ』と思って『これぐらいの金額なら無くなってもいい』ぐらいの額で始めている。そこで多少なりとも配当金が出ると少しずつ、投資する金額が増えていく」と語る。

■「CMや著名人使い権威付け」

 さらに「(ジー・オー側は)信用のあるテレビ局でコマーシャルをしたり著名な学者の寄稿文を使うことで、権威付けしている。かなり巧妙な手口でやっており、被害者にまともな団体だという印象を与えた。怪しいと思っていた被害者の中にも、そういった『手口』にだまされ次第に深みにはまっていった人も多い」と指摘する。

 小出しにする配当、テレビや学者の巧みな利用…。やはりうさんくささの中に、ほんの少しの真実があると、人々は飛びついてしまうようだ。

 前出の堺氏は「被害者にとってうそも百回聞けば真実になり、千回聞けば信仰になる。金を出した瞬間、被害者はもう『信者』だ。その金額が大きければ大きいほど、自分がだまされたとは思えないし、思いたくない。被害者が、だまされたと気付くのに時間がかかるため、なかなか被害実態が明らかにならない、発覚の遅れが、そのまま被害の拡大につながっている」と指摘する。

 では忍び寄る悪徳商法から身を守るにはどうすればいいのか。

■「摘発より勝る啓発はない」

 堺氏は「『摘発に勝る啓発なし』で警察当局がどんどん事件を手掛けて、それをメディアを通じて白日の下にさらすしかない」とした上で警告する。

 「元本保証で高金利という商品に出資していませんか。その話は自分の親しい人から聞きませんでしたか。覚えがある人はあらためて確認してください。決して、してはいけないことは、商品を出している当事者に聞くこと。泥棒に『泥棒してますか』と聞いて認めますか。逆に言い含められるだけ」


http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20020913/mng_____tokuho__000.shtml

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