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2002年08月11日(日) 12時24分

取水口にクラゲ襲来、防戦必死の原発 福井・若狭湾朝日新聞

 原発15基が集中立地する福井県の若狭湾。海水浴客でにぎわう毎年夏、原発関係者は海からの「侵入者」におびえている。クラゲだ。群れをなして原発を襲い、出力をダウンさせ、時として原子炉停止に追い込む。原発側は防止網を張ったり、泡のカーテンで追い払おうと試みたり、防戦に必死だ。

 8月初旬の昼下がり。原発の海水取水口そばにあるゴミ取り装置に、半透明のぬらぬらとした生き物が大量に張り付いていた。正体は直径10センチ前後のミズクラゲ。一部は干からび、辺りは生臭いにおいでむせかえる。

 毎年5月すぎ、水温が20度を超えると、動きが活発になったクラゲが数万匹もの群れとなって取水口に押し寄せる。関係者は「沖合から白い線が一直線にこちらに向かってくる。またやって来た、やれやれという感じ」と話す。

 日本原電敦賀原発(同県敦賀市)では昨年度で約70トンのクラゲを回収したが、今年はすでに約130トンを回収している。関電高浜原発(同県高浜町)では多い年で約90トンを回収している。

 原発は、タービンを回した蒸気などを冷やすため大量の海水を取り入れている。同県内で最大の発電量の関電大飯原発(同県大飯町)では、1秒間に約318トンにものぼる。クラゲはこの人工的な流れに乗ってやってくる。クラゲが大量にゴミ取り装置に張り付くと取水量が減る。発電機効率が低下し、電気出力も下がってしまう。

 今年も6月以降、核燃料サイクル開発機構の新型転換炉「ふげん」(同県敦賀市)で4回、関電の高浜原発2号機で1回、出力低下が起きた。

 いずれも低下の幅は2%以下とわずかだったが、クラゲの流入量が多くなると、深刻な被害が起こる。99年には、クラゲのため、高浜原発2号機の出力が76%までダウン。「ふげん」でも、原子炉を手動で緊急停止させる事態となった。

 来襲は9月下旬ごろまで続く。

 新潟県柏崎市と刈羽村にまたがる東電柏崎刈羽原発では99年以来、クラゲによる出力低下が起きていない。来襲は若狭湾で目立つ。「ミズクラゲの研究」などの著書がある安田徹・元福井県栽培漁業センター所長(64)は、若狭湾は全国でも有数のミズクラゲの繁殖地という。「クラゲが卵を産み付けやすい海草が海底に繁茂し、えさとなるプランクトンも豊富だ」

 各原発では網を張ったり、ゴミ取り装置を大型化させたりして来襲に備えている。日本原電敦賀原発は敦賀商工会議所と共同で、「エアバブルカーテン」を使った実証試験を始めた。海底の空気放出管から約35メートルにわたって泡が噴き出し、クラゲをはじき飛ばす。三浦勉研究員(34)は「実現すれば、クラゲの流入を7、8割カットできる」と期待する。

 それでも、クラゲの影響を完全になくすことはできない。各原発では24時間態勢で作業員がゴミ取り装置にたまったクラゲを回収するが、産業廃棄物として処理するため、1サイトで年間数千万円かかるという。

 電力会社幹部はため息まじりに話す。「結局のところ人海戦術。自然を相手に抜本的な解決策はなかなか見つからない」

(12:13)

http://www.asahi.com/national/update/0811/010.html

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