千葉県市原市の旅行業者「さくら会」による旅行業法違反事件で、同会が約１０年前から倒産寸前の旅行業者を次々と乗っ取り、その社名とクーポン券を使って各地の旅館で宿泊代金踏み倒しを繰り返していたことが、関係者の話で分かった。千葉県警は、同法違反（無登録営業）で逮捕した経営者の伊藤秀一容疑者（４５）＝同県市原市五井＝を、近く詐欺容疑で再逮捕する方針だ。

　関係者によると、伊藤容疑者らは、倒産寸前だった東京都や福岡県などの少なくとも５社の旅行業者と接触し、会社の買収を２０００万〜３０００万円で契約。白紙のクーポン券の束や印鑑、小切手帳を受け取ると、金を払わず行方をくらましたという。伊藤容疑者らは、これらのクーポン券を使って会員制の格安旅行を主催、全国の旅館や国民宿舎と後払い精算の契約を取り付け、代金を踏み倒していたらしい。

　「全国旅行業協会」（東京都港区）によると、東京都中央区の旅行業者分だけで、被害に遭った宿泊施設はハワイのホテルを含め６０件余、被害金額は約２５００万円に上るという。

　今年４月、約３０人分の宿泊費約３０万円の被害にあった秋田県増田町の旅館経営者は「千葉の人は普通の温泉には飽き、おたくのような温泉で体を癒やすのを希望している、と持ちかけられ、クーポン契約に応じた」と話す。ふすまの張り替えなども要求され、宿泊代とは別に約７０万円の出費を強いられたという。


［毎日新聞６月８日］ ( 2002-06-08-15:01 )

http://news.lycos.co.jp/society/story.html?q=08mainichiF0608e059&cat=2