悪のニュース記事

悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。

また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。

記事登録

2002年05月31日(金) 00時00分

救え 東京の“弁護士過疎” 東京新聞

 東京には弁護士が日本一多い。なのに“弁護士過疎地”とも言われる。弁護士事務所が、オフィス街に集中していることや、採算の合わない面倒な事案を受けないケースが多いからだ。昨年、第二東京弁護士会(二弁)が新宿に、少額事件や公益性の高い案件も扱う公設事務所をオープンしたら、依頼が殺到したという。今年六月十七日には、東京弁護士会も続いて開設、第一東京弁護士会も計画中とか。司法改革が進むなか、東京の弁護士過疎は救えるのか。

 東京有数の繁華街。新宿三丁目交差点そばのビルの六階に「東京フロンティア基金法律事務所」(電03・5312・2820)がある。二弁が昨年九月に開いた公設事務所だ。広さ約三百三十平方メートル、常駐弁護士七人と事務員七人が働く。奥に打ち合わせ室が五室あり、スペースは十分だ。

 「相談は多い。面倒な事件が多くて間に合わないぐらいです」

 丸山輝久所長はせわしそうに話す。オープン以来、相談だけで七百八十九件、実際に受け付けたのは、一般民事百十八件、クレサラ(クレジット・消費者金融)事件百三十二件、刑事事件三十六件の計二百八十六件。最初は弁護士三人で始めた。この八カ月で、弁護士一人で四十件以上こなしていることになる。

 「証券トラブルやクレサラ事件が多く、普通の事務所よりバラエティーに富んでいる。でも、最大の特徴は、ほとんどが紹介のない『一見さん』。お金のない人や、分割払いの人が多く、採算が合わない」と丸山さん。

 日本全国に、弁護士は一万八千八百四十五人。約半数の八千九百五十一人が東京にいる。その偏りは、以前から問題になっていた。特に、地方都市に二百三ある裁判所支部管内には、弁護士ゼロの“弁護士過疎地域”も多く、そこへの支援は急務。

 日弁連は一九九九年、弁護士過疎地への公設事務所設置計画を始めた。これに呼応する形で、二弁も東京フロンティア基金法律事務所を設置したのだった。

 地方だけでなく、東京のど真ん中、新宿も“過疎地”だったことが、同事務所の開設で証明されたわけだ。が、司法の世界では周知の事実だったという。

 丸山所長は「弁護士は、裁判所に近い港区、千代田区に集中。下町には少ない。敷居は高く、一見さんは断られやすい。面倒な案件は引き受けない例も多い」と説明する。同事務所は、過疎地に送るスタッフの養成なども手掛ける。

 では、弁護士過疎地の人たちは、トラブルをどう解決してきたのか。

 ある弁護士は「泣き寝入りする人や、地方では、暴力団に頼むケースも多い」。他の弁護士は「事件屋に頼むケースも多い。彼らは、サラ金(消費者金融)被害者を助けるとか、夜逃げさせてあげる、とか言って、食い物にする。悪徳弁護士と提携したり、弁護士でないのに解決を引き受けたりしている」と話す。

 六月には、豊島区役所前に、東京弁護士会が「東京パブリック法律事務所」の名称で公設事務所(電03・5979・2855)を開設する。所長に東池袋法律事務所の石田武臣弁護士が就任する。ビルの二階一フロア約二百二十一平方メートル。常駐弁護士七人のほか、約十人の事務員が勤務。

 同公設事務所も、弱者救済や過疎地へ送り出す若手弁護士養成を目的としているが、もう一つ、「弁護士からの裁判官任官の支援」を掲げる。

 日本は、法曹一元化のシステムで司法試験合格後に、判事、検事、弁護士が固定化されやすい。石田弁護士は語る。「行政訴訟、国家賠償訴訟などで市民側の勝訴率は低い。市民感覚やバランス感覚のある弁護士出身の裁判官が必要だ。米国や英国では弁護士から選ばれる。地方で修行した後、東京の大きな事件を経験し、裁判官になる。再び弁護士に戻るなど、流動性が必要。個人事務所では、柔軟に動けないが、公設事務所だと、仲間がバックアップできるので、環境が整う」

 公設事務所は、法曹界変革の要にもなるようだ。しかし、面倒な事件が多い公設に人材や金が集まるのか。

 「若い人の中には、地方や公設事務所を経験したいという人はいる。これまで、環境がなかっただけ」と石田弁護士。

 問題は、採算性。丸山所長は「独立採算は難しいので、会全体として考えるべきだ。同期の人の平均収入くらいは払ってやらないと、新しい人は入ってこない。これは、弁護士自身の改革運動。ふんぞり返っていてはだめ。制度だけでなく、人間を変えていかなければ」と語る。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/thatu/20020531/mng_____thatu___000.shtml

この記事に対するコメント/追加情報を見る

ニュース記事一覧に戻る

トップページ