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2002年05月27日(月) 00時00分

オンラインゲーム ブーム来るの? 東京新聞

 「エバークエスト(EQ)」というオンラインゲームがある。インターネット上の仮想世界を冒険する米国の人気ゲームだが、プレーヤーたちの呼称は「エバークラック」。もちろん冗談だが、その中毒性はコカインと一緒だというわけだ。パソコンの普及率が高い米国や韓国では、EQのようなオンラインゲームにのめり込む若者が増えているという。この熱狂、やがて日本にも来るかもしれない。

 (中山洋子)

 「まるでみずほ銀行のようだ」。横浜市港北区の会社員男性(32)があきらめたような口調で話す。

 ■「PS2」向け初 今後の試金石に

 今月十六日にゲームソフト大手のスクウェアから発売された「ファイナルファンタジー(FF)XI」の相次ぐトラブルのことだ。剣と魔法の世界を舞台にするFFシリーズは世界で三千八百万本を出荷し、ゲーム機の命運を左右するほどの“怪物”ソフト。かつて家庭用ゲーム機の「次世代機」争いで、プレイステーション(PS)の圧勝を決定づけた実績がある。

 FFXIはPS2向けのソフトで、シリーズ初のオンラインゲームとして登場した。

 オンラインゲームに消極的といわれる日本の市場がどう変わるか、このソフトの成否が試金石ともみられている。

 が、FFXIの船出はまさにみずほ銀行をほうふつとさせるものだ。

 接続トラブルを回避するため、初回は十二万本に絞り込まれたが、開始後にアクセスが殺到、利用できないユーザーが続出。その後も接続トラブル、スクウェア側のメンテナンスで断続的にゲームのできない状態が続いている。同社は発売二日後に「満足なサービスを提供できない」として六月末まで月額利用料(千二百八十円)を無料にすることを決めた。

 前出の男性のもとにFFXIで遊ぶためのBBユニット(接続機器)が届いたのは発売日から一週間以上が経過したころ。さらに、メンテナンスのため十五時間も「お預け」をくらった。ようやくできると思ったら、今度はゲームソフトの読み込みに二時間かかった。「僕の場合はネットからの情報で、初日のプレーヤーより心構えはできていましたが、子供だったら泣きますよね」と苦笑する。

 ネット上では「BBユニットがまだ届かない」「一時期に発売されたPS2には、仕様が合わないものもある」などの情報、苦情が激しく飛び交っている。

 「(月額料金が)二重課金されたプレーヤーもいるみたいで、ちょっとしたお祭り状態です。とにかくプレーするまでの苦労があまりに多くて。それだけに、ゲームを始めることができたときはうれしかった」

 スクウェアでは「このゲームはプレーヤーと一緒に作っていきたい」と話すが、トラブルはまだまだ進行形だ。週末もなぜかプレイオンラインにつながらなかったが、この男性は「じっくりやっていくしかないですね」と忍耐強い。

 日本のオンライン市場は、家庭用ゲーム機を媒体にこれまでになく熱を帯び始めている。FFXIを切り札に市場制覇を狙うPS2陣営に対し、ドリームキャストで人気を集めていたセガの「ファンシースターオンライン」が任天堂のゲームキューブに移植される。マイクロソフトもXboxのオンライン展開に力を入れている。各社の動きは、ゲームの主流がオンラインに変わると示しているかのようだ。実際、米国や韓国では数年前から、若者たちの熱狂ぶりはすでに社会問題にもなっている。
 
 EQがクラック(精製コカイン)と称される理由は、仮想世界から離れられなくなるプレーヤーが続出したためだ。昨秋、米国の男性=当時(21)=がゲームに関するメモを残して銃で自殺した。この男性はEQにはまった揚げ句に仕事を辞め、自殺する直前まで一週間ぶっ通しでゲームを続けていたという。遺族は、自殺した理由の一端がゲームにあると訴えている。
 
 米国では、「EQ中毒」の夫や恋人、子供を持つ家族らによる告発グループ「EQ未亡人の会」などもあるほどだ。
 
 オンラインゲーム歴の長い三十代の男性は「ゲームにはまっている人にとって、ゲーム世界とリアルとの区別はたぶんついていない。実際、自分の分身であるキャラクターが死んだときなんか、本当に心拍数が上がるし、それが仲間のミスが原因だったりすると相手に殺意さえ覚える。毎日五、六時間も一緒に遊んでいる相手が異性だったら、恋愛感情が生まれるのも当然」と話す。
 
 韓国では昨年九月、他人のIDとパスワードを盗んでゲームのキャラクターを無断で削除した男が逮捕された。二百五十万人の会員を誇る韓国最大のオンラインゲーム「リネージュ」をめぐり、ライバルのキャラクターを抹殺してほしいという依頼を受けての“殺人”だった。
 
 殺されたのは仮想世界のキャラクターだが、報酬は現実の三百万ウォン(約三十万円)だった。
 
 ゲーム雑誌「週刊ファミ通」などを発行しているエンターブレインの浜村弘一社長は「オンラインゲームはまだ始まったばかりの市場。ID盗難、回線無断使用、ゲーム内のアイテムがネットオークションで売買されるなど根深い問題を抱えている。しかも、問題はまだ韓国、米国でもすべて出切ったわけではない」と指摘する。
 
 “パソコン先進国”を席巻するオンライン熱だが、日本にもやってくるのだろうか。
 
 浜村社長は「FFのトラブル自体はとても残念だが、障害を乗り越え実際にプレーした人の評価は高い。どんなジャンルでも質の高いゲームが出るかどうかで盛衰が決まるが、FFは(オンラインの)主要ソフトとして十分責任を負えるだけの品質を持っている」と評価する。
 
 一方で、東京・渋谷のネットカフェ「Necca」を経営する韓国資本のコンピューター関係会社インターピアの田中康之氏は「社会問題が起こる程度には広まるでしょうが、米国や韓国ほどには広まらないのでは」と分析する。
 
 ■ブロードバンド遅れた日本市場
 
 日本でオンラインゲーム市場が育たない最大のネックがブロードバンドの普及の遅れだ。徐々に解消されてきているとはいえ、「常時接続」を前提とするゲーム環境としてはまだまだ十分とは言えない。
 
 田中氏は「韓国では小学校の入学と同時にパソコンを与える家も多い。街中のいたるところにPC房(ネットゲームカフェ)があり、子供たちが学校帰りに立ち寄っている。日本では、子供たちにそんな環境は与えられていないし、家庭用ゲーム機の文化がすでに生活に深く根差しています。投資しなければならない額に比べて、どれだけ楽しめるか。日本のユーザーたちは計算しているはずです」と話した。

 (メモ)

 オンラインゲーム インターネット上で遊ぶゲーム。プレーヤー同士が一対一で対戦するもの、マージャンゲームなどのように小グループで遊ぶものなど形式はさまざまだが、米国の「ウルティマ オンライン」の大ヒットを皮切りに数千人が同時に参加する形式のロールプレイングゲームが主流になっている。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20020527/mng_____tokuho__000.shtml

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