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2002年05月27日(月) 17時50分

『クレズ』の感染力は史上最悪WIRED

 『クレズ』(Klez)が、史上最悪の感染力を持った電子メールウイルスとして、公式に認められた。

 電子メール受信箱に入ってくる確率が最も高いワーム型ウイルスは、1年近くにわたって『 http://www.hotwired.co.jp/news/news/technology/story/20010821306.html サーカム(日本語版記事)』だった。しかし、今ではウイルス対策企業数社が、サイバー空間の歴史上『クレズH』(Klez.H)ほど蔓延したウイルスはないと考えている。これらのウイルス対策企業の推計によると、クレズHは、4月半ばに初めて検知されてから数時間で何十万台ものコンピューターに感染したという。

 そして今のところ、クレズが消える気配は見られない。

 「もう送られてくるクレズのメッセージを数える気もしない。クレズに感染した電子メールの総数は、数日前にサーカムを超えた。しかも、その数にはクレズ関連の電子メールすべてが含まれているわけではない」と嘆いているのは、ウイルス対策ソフト『 http://www.nod32.com.au/nod32/home/home.htm NOD32』のオーストラリアの販売代理人、ロッド・フュースター氏。

 クレズの場合、感染した電子メールの添付書類を膨大な数のユーザーに開かせる力も興味深いが、それ以上に関心を引くのは、とくに巧妙でも最先端技術を駆使しているわけでもないクレズが、どのようにウイルス対策アプリケーションをスパムメール発生機に変えているかという点だ。

 多くの場合、ネットワークを通じて入ってくるウイルスを監視するソフトウェアは、ウイルスに感染したメッセージが来ると、受信メールからウイルスが検出されたと警告する電子メールを、送信者へ自動的に送り付ける。

 しかしクレズは、 http://www.hotwired.co.jp/news/news/technology/story/20020426305.html 送信者のアドレス(日本語版記事)を詐称する手口を使っているため、ウイルス警告を間違った相手に大量に送信する結果となっている。クレズを送ってもいないし、コンピューターが感染してもいないユーザーが警告を受け取っているのだ。

 多数のウイルス対策専門家は、すべてのウイルス対策会社に対して、自動警告システムを一時的にオフにするようユーザーにアドバイスする必要性を呼びかけてきた。

 「クレズはウイルス対策業界を利用——そう、まさに利用——して、厄介さを3倍にすることに成功した。ウイルス対策会社は、そのような自動返信システムを無料の広告手段として長年使ってきた。ウイルスを撒き散らす連中もバカではない。連中は自分の周囲で何が起きているかを認識して、そのシステムを操作する。ウイルス対策業界の最大の敵は、業界そのものではないかと思うこともある」とフュースター氏は語っている。

 ウイルス情報サイト『 http://www.vmyths.com/ Vmyths』のロブ・ローゼンバーガー氏によると、クレズは、自分が何年も声を大にして主張してきた問題を、単に浮き彫りにしただけだという。

 「ウイルスについての警告はいつだって、ウイルス自体と同じくらい大きな混乱を巻き起こす。人々から善意の警告が大量に来た後で、今度はウイルス対策ソフトからの自動警告が来る。このような警告は、大部分のウイルスと同じように、ネットワークと受信箱を詰まらせる。警告が実際に問題解決に貢献するという証拠を、私はまだ見たことがない」とローゼンバーガー氏。

 信頼できるウイルス対策会社から警告を受け取ったのに、自分のコンピューターが実際にはクレズに感染していなかったことが判明して憤慨したユーザーもいる。

 ニューヨーク在住のグラフィック・アーティスト、シド・ルービンさんは次のように不満を述べている。「『ノートン・アンチウイルス』ソフトから、私が送ったらしい電子メールからクレズが検出されたという警告の電子メールを何通か受け取った。それで、私のコンピューターからクレズを http://www.kaspersky.com/news.html?tnews=20140&id=224687 駆除する方法を探そうと、数日間も苦労する羽目になった。その時間がすべて無駄だったなんて信じられない」

 ウイルス対策会社の一部は、スパムを撒き散らす問題の存在を認めている。しかし、クレズがこれほど急速に広がった原因の1つは、標準的な警告システムではクレズによる虚偽の送信者情報に対処できなかったことだと述べている。そのせいで、実際に感染したコンピューター所有者に対し、「あなたは知らないうちにウイルスを拡散させている」と通知することが難しかったというのだ。

 「つまり、ウイルスが検出されないままコンピューターに居座る時間が長引くことになる。その分、感染も広がるというわけだ」と英メッセージラボ社のアレックス・シップ氏は述べた。

 『 http://www.hotwired.co.jp/news/news/technology/story/20000508301.html ラブ・バグ(日本語版記事)』など、よく知られる他のウイルスの中には、最初に出回ったとき、クレズより速いペースで広がるものもあった。2000年4月5日には、メッセージラボ社でスキャンした電子メール24通に1通の割合でラブ・バグのコピーが含まれていた。これに対して、現在クレズを含む電子メールの検出率は、170通に1通程度でしかない。

 しかし、最初に登場してから48時間以内にピークを迎えて消えていったラブ・バグとは違って、クレズHは4月半ばに初めて発見されて以降、すばやく着実に感染を http://www.messagelabs.com/viruseye/report.asp?id=100 広め続けている。

 クレズはいくつかのランダムな行動をとるため、多くのユーザーは受信箱にクレズが届いても識別することが難しい。クレズを含んだ電子メールが届くときの件名はさまざまで、配信不能で戻ってきた電子メールを装ったり、感染したシステムからクレズを除去するツールを装ったりする場合もある。

 このような特徴は、どれもウイルスの世界で決して目新しいものではない。クレズは歴代の流行ウイルスが利用したテクニックを、うまく組み合わせただけだ。

 米セントラル・コマンド社の製品責任者、スティーブン・サンダーマイヤー氏は次のように述べている。「トップの座を獲得するのに、新しい技術や巧妙な手口は必要ない。クレズは、あっと言わせるような新しいレシピで作られたのではなく、よくある材料を少し違った組み合わせで使っているだけだ」

 クレズの作者(あるいは作者たち)は、クレズの「レシピ」に絶えず手を加えている。2001年10月以降、6つのバージョンのクレズが登場しており、ウイルス対策専門家は新しいバージョンのクレズがまもなく出現すると予想している。

 「クレズが大きな成功をおさめたため、誰かが改良して、さらに強力なものを作り出そうとするのはほぼ確実だ。いやむしろ、クレズの原作者がまだ新しい改良版の開発に取りかかってないとしたら驚きだ」とフュースター氏は述べた。

[日本語版:南 雅喜/湯田賢司]日本語版関連記事

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