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2002年05月01日(水) 16時51分

カネボウの新サプリメントはダイエットの救世主になるか?WIRED

本記事は2002年の注目すべき記事(WIRED NEWSに見る日本)として再編集されたものです。本記事の初出は2002年3月1日です。

 グレープフルーツからキャベツまで、脂肪の燃焼を助けるとして脚光を浴びた食品は、これまでにもいろいろあった。

 そして、今、 http://www.oregon-berries.com/ ラズベリーの登場だ。

  http://www.kanebo.co.jp/ カネボウが、ラズベリーを原料にして、脂肪を分解する効果のあるダイエット用サプリメント剤を開発したことを発表した。5月には市場に登場する予定だ。

 同社によると、臨床試験に協力した人の70%に、1週間の連用で体重の減少が認められたという。

 臨床試験の参加者数や期間、錠剤の服用以外の食生活上の変化の有無など、研究についての詳しい情報は明らかにされていない。栄養学の専門家の間には、ラズベリーケトンに脂肪の燃焼を促進する効果があるのか疑問視する声もある。ラズベリーケトンは、ラズベリーに含まれる香気成分だ。

  http://www.acsh.org/ 米科学健康協会の栄養部門責任者、ルース・カーバ博士はこう語る。「スーパーマーケットや健康食品店に行けば、寝ている間や入浴中、あるいは逆立ちしている間に脂肪を燃焼すると謳う健康補助食品(サプリメント)がたくさん並んでいる。新しい宣伝文句のついた新製品が次々と登場するが、あまり効果のあるものはないと思う」

 ラズベリーケトンの摂取により脂肪が燃焼されることを検証する、他の研究者からの論文はまだ出ていない。

 しかし、こういった製品を米国内で販売する場合は、そんなことは問題ではない。サプリメントなら、製品の効果について米食品医薬品局(FDA)に証明する必要がないのだ。安全でさえあればよい。しかも、FDAには、安全性に関するデータを確認する義務はないため、問題が見つかるのはサプリメントが市場に出てしまってからになる場合が多い。

 日本の法的規制も米国同様に緩い。その結果日本で売られているサプリメントや処方箋のいらない市販薬には、品質が悪く誇大宣伝されているものも多い、と http://www.aesgp.be/ 欧州大衆薬協会(AESGP)からの http://www.aesgp.be/Proceedings-Acrobat/RomeConferenceReport-2.pdf 報告書(PDFファイル)は論じている。

 カネボウによれば、錠剤1つに生のラズベリー1000個分に相当するケトンが含まれているという。

 「怖い話だ。私なら、それほど濃縮されたものを体に入れたいとは思わない」と語るのは、 http://www.fimdefelice.org/bio.html 米医療革新財団の設立者で会長を務めるスティーブン・デフェリス博士だ。

 デフェリス博士は、臨床研究によって効果を証明することをメーカーに義務付ける、新しいサプリメント認可システムを作りたいと考えている。そのために、管理機関のより厳しい調査と監督責任を定める http://www.fimdefelice.org/clip.nrea_reintro.html 法案を米国議会に提出した。

 残念ながらこの法案は議会を通過しなかった。

 高タンパク質の食事を奨励するロバート・アトキンズ博士の『アトキンズ流ダイエット』に挑戦したことのある人なら、「ケトン」とか「ケトーシス」という言葉を知っているだろう。炭水化物の摂取量を食事全体の5%以下に押さえると、人間の体は、炭水化物より先に直接脂肪を燃焼するようになる。これがケトーシスと呼ばれる状態だ。

 アトキンズ博士は、このケトーシスの状態を望ましいゴールだと捉えるが、栄養学者たちはこれは危険だと言う。

 米農務省 http://www.nal.usda.gov/fnic/ 食品栄養情報センターの登録栄養士、リズ・ヒル氏は、「これは非常に体に悪く、通常は極度の肥満症の治療として医師の管理下でのみ行なわれるものだ」と述べる。

 いずれにしても、ラズベリーケトンであれなんであれ、ケトンが人体に何らかの影響を及ぼすという証拠はどこにもない。

 カネボウにコメントを求めたが得られなかった。

 ニュージャージー州にあるラトガーズ大学のヘンリック・ペダーセン教授(化学・生物化学工学)は、ラズベリーケトンの食品香料としての可能性を研究してきた。

 ペダーセン教授は、ラズベリーケトンによって脂肪を燃焼させるといった研究論文は見たことがないとしながらも、考え方はとくに驚くようなものではないと言う。

 「植物に含まれる化合物の中に、人間の健康増進に役立つ可能性を秘めたものがたくさんあるのは事実だから、さほど突拍子もない主張ではない」とペダーセン教授。

 だが、それほど簡単に脂肪を減らせる方法があるのなら、製薬会社がとっくに見つけているはずだ、とカーバ博士は反論する。

 「大事なのは、本当に大きな効果があるなら、きっとわかるはずだということだ」とカーバ博士は語った。

(この記事にはロイターが協力した)

[日本語版:藤原聡美/小林理子]


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