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2002年03月01日(金) 00時00分

だまされ続けた法の番人 「訴訟詐欺」事件 東京新聞

 借用書を偽造し、裁判所を利用して、被害者から金を巻き上げていた自称「闇金融の帝王」・杉山治夫容疑者(63)。警視庁が逮捕した容疑はいわゆる「訴訟詐欺」だ。だまされていたのは裁判官という事件の構図で、法の番人が長い間、杉山容疑者に手玉に取られていたことになる。

 「実際には金を借りていない人がたくさんいるのに、裁判所は借用書に本人の印鑑と署名があるというだけで、簡単に被害者敗訴の判決を出した。結果的に、被害は止まらなかった」とある男性は悔しがる。杉山容疑者が社長を務める金融会社「日本百貨通信販売」(東京・新宿区)による「訴訟詐欺」の被害者の一人だ。

 犯行の手口は簡単だ。同社が金を貸したという内容の「借用書」に、借り主の住所、氏名を書き込み、印鑑を押す。この紙切れ一枚を「証拠」として、主に簡易裁判所に貸金返還訴訟を起こすだけだ。

 借り主とされ、訴えられた人は、借りた覚えがないから、裁判所からの呼び出し状を受けても放置するケースが多く、そのまま欠席判決で敗訴。その結果、杉山容疑者に給料など差し押さえられた。

 仮に裁判で「借りていない」と主張しても、裁判所は署名、押印があるということで、借り主の言い分を認めないことが多かったという。

 結果的に裁判官は、杉山容疑者にだまされ、偽造の借用書を本物と認定し、杉山容疑者を勝訴させたことになる。

■2年間で500件提訴 容疑者連日“出勤”

 本紙が調べただけでも、杉山容疑者は一九九四年以降、東京地裁で三百件以上の訴訟を提起している。東京簡易裁判所にいたっては、警視庁捜査二課の調べで、この二年間で約五百件にも達する。ほぼ連日にわたり、杉山容疑者は、裁判所に“出勤”していた状況なのだ。

 裁判所の調停委員を長く務めた一人は「何度か調停の場で杉山容疑者を見た。簡裁書記官や裁判官の多くも杉山容疑者を知っているはずだ」と証言する。

 「日本百貨通信販売被害対策連絡会議」(呼び掛け人・岩重佳治弁護士)が把握しているだけでも、「借りていない」と主張している人は、五十人近くに達する。

 「そもそも杉山容疑者が証拠として提出する借用書は、おかしな点が多い」と指摘するのは、同会議の弁護士の一人。

 例えば、問題の借用書には、期日までに返済できない場合は、その五年後の努力目標日が書かれている。それでも返済できない場合は、さらに五年間延長されるという内容だ。

 「普通の金融業者が、返済期日をどんどん延長することはない。貸金請求の時効が五年であることから、時効逃れのためにやっているとしか思えない。このため、提訴時期は、貸付日から十年以上経過しているケースが多く、元本が少額でも、金利や遅延損害金がついて返済総額が膨れ上がっている」

■「書類証拠の偏重裁判所は反省を」

 この弁護士は、裁判所の問題点についても言及している。

 「矛盾だらけの訴訟で、借りていないと主張する人が多いことも、裁判所は分かっていたはずだ。杉山容疑者本人の補充尋問するなり、申し出があれば、印鑑鑑定などをすべきだった。書類証拠の偏重に陥っているなど、裁判所として反省すべき点がなかったのか。検証が必要だ」


http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20020301/mng_____tokuho__000.shtml

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