悪のニュース記事

悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。

また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。

記事登録

2002年01月24日(木) 00時11分

<雪印食品>甘い運用逆手に 再建途上の不祥事 乳業株も暴落毎日新聞

 輸入牛肉を和牛肉と偽って、国に在庫を買い上げさせる。狂牛病問題をめぐる農水省の緊急対策を悪用していたのは、集団食中毒事件で消費者の不信を買った雪印乳業の子会社、雪印食品だった。グループあげて信頼回復に取り組んでいた雪印にとって、今回の不祥事が及ぼす影響は計り知れない。チェックの甘い運用が露呈した農水省の責任も問われそうだ。

 雪印乳業には23日早朝から消費者や株主からの苦情電話が相次ぎ、職員は謝罪に追われた。社内では「再建計画にも影響は当然出る。将来どうなるか見当もつかない」と不安の声があがった。

 雪印乳業は事件以降、主力の牛乳・乳製品の売り上げが戻らず、01年3月期単体決算の売上高は前年比33・5%減の3615億円で、44年ぶりに業界首位から3位に転落した。01年9月中間決算でも、売上高は事件以前と比べ25%減で、牛乳・乳製品は35%減だった。

 雪印乳業は1000人の希望退職を決めていたが、業績回復が遅れ、昨年11月には新たに500人を02年度中に削減する計画を発表している。

 西紘平社長は23日、「食中毒事件を反省し、法令順守を指導、教育してきたが、徹底が至らなかった。改めて法令順守を徹底する」とのコメントを発表し、雪印食品に事実関係の徹底究明を強く指示した。

 雪印食品の吉田升三社長はこの日の会見で「ブランドの信頼回復はグループの課題だった。(不祥事で傷をつけることは)あってはならないと進めてきたのに……」と顔をゆがめた。吉田社長ら経営陣の引責辞任は避けられないとみられる。しかし、事態は同社の問題をはるかに超えて、雪印グループ本体の存続にもかかわりかねないほど深刻だ。

 「こういうことが起こりうるとは信じられない」。武部勤農相は23日の記者会見で憤った。補助金適正化法は制度の「公正な使用」を求めているが、それぞれの信頼関係から成り立つ面も大きい。いわば「性善説」的予算だ。雪印食品はこれを逆手に取った。

 「牛肉在庫緊急保管対策事業」は、牛肉保管に約91億円、牛肉の買い上げと焼却費に約201億円の予算を組んだ。昨年10月18日の全頭検査が導入される前に生産された国内牛肉(1万2626トン)を倉庫に保管し、順次焼却するための措置だ。日本ハム・ソーセージ工業協同組合など6業界団体が各企業から牛肉の種類、倉庫の場所などを記した実施計画書を農水省の特殊法人「農畜産業振興事業団」に提出。承認されれば、補助金の交付を受ける。

 同事業団によると、チェックは在庫証明と現地検査の2種類。現地検査では、同事業団が全国259倉庫のうち31倉庫を選び、同職員2人1組が昨年末から今月末まで検査を行う。検査総量は約6000トン。全体のほぼ半分に達する。

 職員2人は倉庫で在庫証明などを見て、肉の部位、数量などを調べる。箱を開けて目視で肉を確認する。ただ、サンプル数は少ない。例えば、倉庫在庫数3200〜1万箱の検査数は32箱で1%以下だ。目視では肉や脂肪の色、肉の形など国内産と海外産を見分けるというが、農水省食肉鶏卵課の大野高志食肉調整官は「(国内産か海外産かを)100%判別できるかと言われれば難しい」と話す。

 同事業団の松田豊食肉生産流通部長は「意図的に不正されたら、防ぎようがない」といい「1社の不正のため業界全体が色眼鏡で見られる」と嘆く。

 同省、事業団は再発防止策の検討を始めた。関係者によると、検査倉庫数を増やす▽倉庫でのサンプル数を増やす——の2点。「全倉庫検査も視野に入れる」と話す関係者もいるが、事業団の検査体制は10人5組が限界で、現状では困難だ。

 捜査当局の反応は早かった。兵庫県警は、23日、ただちに関係者の事情聴取を始めるなど本格捜査に乗り出した。雪印食品は、農水省の「牛肉在庫緊急保管対策事業」を悪用して在庫の輸入牛肉を売り、既に約900万円を受け取っている。不正な現金取得に詐欺罪を適用できるかが、今後の捜査の焦点になる。

 兵庫県警は当面、関係資料の押収を進めながら、牛肉の詰め替えにかかわった7、8人の社員ら関係者からさらに詳しく事情を聴き、詐取の意思があったのかどうかなどを解明する方針だ。

 また、雪印食品は23日の記者会見で、「関西ミートセンター長が狂牛病の影響で在庫が増えたため独断で不正をした」と、本社の関与を否定している。県警は偽装の指示系統についても捜査を進め、組織上層部も視野に入れながら立件の可否を判断する意向だ。

 23日の東京株式市場では、取引開始と同時に雪印食品に売りが殺到、「雪印ブランドがさらに傷つく」という懸念から親会社の雪印乳業も急落した。雪印食品は前日比20円(21・73%)安の72円、雪印乳業はストップ安寸前の同49円(21・87%)安の175円まで暴落して取引を終えた。

 雪印乳業株は、00年6月以降の集団食中毒事件発覚で600円台から300円台まで暴落。昨年9月には狂牛病問題などを受けて下落に拍車がかかり、昨年12月17日に200円の大台を割り込んでいた。(毎日新聞)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20020124-00000155-mai-soci

この記事に対するコメント/追加情報を見る

ニュース記事一覧に戻る

トップページ