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2001年11月24日(土) 23時48分

クローズアップ:「ぼったくり」店、9割減 規制逃れ潜在化も毎日新聞


 性風俗店やバーなどの法外な「ぼったくり」を取り締まる条例が、全国各地で制定されている。忘年会シーズンの12月から施行される広島県を含め、計5都道府県。先陣を切った東京都では、対象地域の悪質店が10分の1以下に激減した半面、業者側の規制逃れによる被害の潜在化も懸念されている。過去には殺人事件も引き起こしているぼったくりを一掃して、安全な歓楽街を実現出来るのか。新条例の効果と課題を探った。 【竹中拓実】

 ■従来は「民事」

 氷点下まで気温が下がった夜だった。今年1月17日未明。友人と2人で東京・上野に繰り出した会社員(44)は、路上でにこやかに誘い掛けるホステス(28)に連れられてバーの扉を押した。その熱心さに根負けしたし、1人1万円から7000円への値切り交渉にあっさり応じてくれたのが気に入ったからだ。

 果物1皿とワイン1本のささやかな3次会だったが、レジに立つママ(29)の一言にほろ酔い気分は吹き飛んだ。「10万9000円」。薄暗い店内で、じっとこちらを見据えるママの目。カウンターの男性従業員にも無言の圧力を感じた。

 2人の他に客はいなかった。仕方なくキャッシュカードを取り出した会社員にママは冷たく続けた。「カードは1割増しです」。後で確認すると、3割以上高い14万8000円が引き落とされていた。

 このママとホステスは3月に同条例違反で逮捕された。従来なら「民事上の問題」にとどまった可能性のあるケースだが、昨年11月に施行された条例で刑事責任を問えた。

 条例施行は今年6月以降、大阪、北海道、福岡と名の知れた繁華街を抱える自治体で相次ぎ、広島が続く。いずれも東京とほぼ同じ内容だ。

 警視庁によると、東京都の規制対象4地区(新宿、池袋、渋谷、上野)では、取り締まりが功を奏して、約290店あったぼったくり店が、今月初めには19店にまで減少した。同様に、大阪では10月末現在、87店から12店に減少、295人の客引きは139人に半減。北海道でも約30店が約10店に減り、福岡も相談件数が半減したという。

 こうした規制の背景には、長引く不況による一部業者の悪質化がある。まず、95年1月、東京・新宿のバーで法外な料金請求を突っぱねた男性(当時43歳)が店員に暴行され殺害された「暴力バー」事件などで社会問題化。99年9月、東京・池袋のバーで追加料金の支払いを拒否した会社員(同31歳)が、暴行されて死亡したうえにキャッシュカードで現金約200万円を奪われ、昨年10月には大阪・ミナミの風俗店で、睡眠剤を飲まされた男性(同49歳)が死亡する事件が起きた。

 この間、街頭で女性が声を掛けて店内に連れ込む「キャッチバー」、追加と称して徐々に金銭を請求する「タケノコはぎ」など手口は巧妙化している。

 ■「プチぼった」

 新条例にも、“イタチごっこ”の課題が浮上している。一つは、規制地域から規制を受けない地域に移って同様の営業を続ける店が増えている点だ。東京では、昨年12月に池袋から足立区内に店を移し、ぼったくりをしていたとされる個室マッサージ店の経営者が、風営法(禁止地域内営業)を適用されて逮捕されている。

 12月からは新たに六本木(港区)、錦糸町(墨田区)、五反田(品川区)の3地区が規制対象になることが決まった。しかし、条例では、警察官が店に立ち入り、帳簿などを検査できるよう定められていることから「過度の規制を避けるべきだ」との指摘があり、「町のイメージが悪くなる」という声も上がる。取り締まり強化を理由に、安易に対象地域を拡大できないのが実情だという。

 もう一つは、客が泣き寝入りする程度に請求額を抑える「プチぼった」の出現だ。たとえば、「6000円ポッキリ」という客引きの話で入店しても、請求はサービス料込みで2万〜4万円で、抗議に対しては「6000円は入店料」と突っぱねる——。警視庁の捜査員も「実態把握が難しい」と嘆くが、「最初から知っていれば入店しないような金額を請求するのは条例違反」との解釈で摘発するという。

 そろそろ、年末年始の宴会シーズンが始まる。錦糸町で飲食店を経営する業者(53)は「客引き行為がひどく、安心して歩けないほど。まじめに営業している店は迷惑している」と新たな規制に期待をかける。警視庁保安課は「プチぼったは、繰り返しやっていれば請求額がエスカレートする傾向にある。そうした芽を摘むためにも、被害に遭ったら必ず届けてほしい」と呼び掛けている。

 ■東京都ぼったくり防止条例

 正式名称は「性風俗営業等に係(かかわ)る不当な勧誘、料金の取り立て等の規制に関する条例」。性的サービスを行う風俗店と、バーやキャバレー、ホストクラブなど客の接待を行う飲食店を対象に、実際の料金より著しく安い金額をうたって勧誘する行為や、乱暴な言動で料金を請求する行為を取り締まる。客に見やすい場所への料金表示も義務化した。対象地域は都の公安委員会が指定する。違反した場合、6月以下の懲役か50万円以下の罰金が科せられるほか、店側は最長8カ月間の営業停止処分となる。

      ◇各地のぼったくり防止条例◇

    施 行 日      取り締まり状況 

東京都 00年11月1日 10店の経営者ら30人を逮捕(10月末現在)

大阪府 01年6月1日  6店を摘発、24人を逮捕(同上)

北海道 01年9月1日  2店の客引きら15人を逮捕(同上)

福岡県 01年10月1日 1店の経営者ら2人を送検(11月19日現在)

広島県 01年12月1日 ———

[毎日新聞11月24日] ( 2001-11-24-23:48 )


http://www.mainichi.co.jp/news/flash/shakai/20011125k0000m040091000c.html

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