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1999年12月08日(水) 00時00分

番外編(中)現代社会の歪み、悩める男と女読売新聞

◆自分見失わせる「呪縛」

 性の問題は、男女の力関係やストレスなど、現代社会の歪(ひず)みを象徴的にあぶり出す側面がある。

 夫から暴力的なセックスを強要される「家庭内レイプ」の記事には、「私も同じ境遇にある」と、首都圏在住の主婦(50)が涙ながらに電話をしてきた。「きょうも朝からアダルトビデオを見せられ、同様の行為を求められた。断ると顔がはれあがるまでぶたれるので、仕方なく従ってきた。高校生の息子にも気づかれた。どうすればいいのでしょう」。相談機関をいくつか紹介して、受話器を置いた。

 さらに、面倒くさいからとセックスを避ける「拒性症」や、逆に、現実から逃避するためセックスにのめり込む「性依存症」など、社会の歪みが原因と思われる性の問題を取り上げた記事にも、「夫婦仲はいいが、うちの娘も拒性症なのでは?」と、心配する母親など、様々な問い合わせの電話が寄せられた。

 東京近郊の男性会社員からは、「32歳になるのに、性体験がなく、女性と付き合ったこともない。セックスから疎外感を感じている私のような存在も忘れないでほしい」と、ファクスが届いた。

 会ってみると、180センチを超える長身、甘い声。外見からは、女性にもてないとはとても思えない。

 「性欲がないわけではないが、今は家業の手伝いが忙しく、盆暮れもなく、平日は午後11時まで働きづめ。これでは、せっかく知り合っても、デートの約束がストレスになる」と話す。

 ただ、この男性の場合も忙しさだけが原因ではないようだ。1年前、年上の女性に誘われたが、応じることができなかった。「コンドームを着けていても、もしも妊娠させて結婚を迫られたら困る。性病も怖い」という言葉に、強い思い込みが感じられた。

 結婚5年、神奈川県に住む30歳代の主婦は、「子供が欲しいのでセックスしなくちゃと、気ばかりあせる。夫と本を見ながらいろいろ練習しているが、1度もうまくいかない。私、夫のペニスを見るのが怖いんです」と、手紙で悩みを打ち明けた。

 国立千葉病院産婦人科医長で世界性科学会理事を務める大川玲子さんは、こうした悩みを抱える彼、彼女らを、「人1倍まじめで不器用なゆえに、セックスについて何でもありに見える現代社会のはざまで極端に憶病になり、自分を見失っている」とみる。

 男は強くリードしなければならない、女性にとって初めてのセックスは苦痛に満ちた儀式であるなど、社会の定説といわれるいろんな呪縛(じゅばく)にとらわれていることが問題だと指摘する。「ちょっとした条件の違いで、だれもが同じ悩みをもちうる。でも、社会の呪縛は、何か変だなと思うところから解けるもの。自分と、自分が信頼するパートナーの感性をもっと大切にして、いい関係を築いてほしい」

http://www.yomiuri.co.jp/feature/sfuukei/fe_sf_19991208_01.htm