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1999年11月13日(土) 00時00分

(13)ピル選択、欠かせぬ信頼読売新聞

◆無責任な人は願い下げ

 今年9月、低用量ピルが解禁されて2か月余り。利用はまだそれほど広がっていないが、夫婦や恋人の関係に少なからず影響を及ぼしていくかもしれない。

 「今日からピル解禁」のニュースを見た日の夕方、東京の会社員、香織さん(31・仮名)は、2歳上の彼に「私も飲んでみようかな。どう思う」と話し掛けた。

 付き合い始めて5年。これまで避妊にはコンドームを使っていた。コンビニから自分で買ってきて、言われなくとも自分からちゃんとコンドームを使う彼の姿に「きちんと私のことを考えてくれている」と信頼を寄せていた。

 しかし、「わざわざ医者に行かなくても、別に今のままでいいんじゃない?」と、大して興味なさそうな態度。それでも「コンドームつけないで、エッチできるんだよ」と水を向けると、「それはいいな」と急に乗り気な様子に内心少しがっかりした。

 今まで避妊に失敗した事はない。でも、毎月生理が来るまでは、いつもかすかなれでがれでた。生理が来た時の何とも言えない安ど感。「自分が妊娠するわけじゃないし、結局、彼にはこの不安は分からないのかな」

 東京・青山にある青山病院産婦人科医師の早乙女智子さんは「ピルを使ったセックスを選択するためには、カップルの間で信頼できるパートナーシップを築くことが重要」と思っている。女性の体や毎日服用しつづけることへの思いやり。コンドームを使わなくて済むだけに、性感染症にかかる危険性が高まるため、相手も病気を持っていないという信頼も欠かせなくなる。

 都内の金融会社に勤める礼子さん(27・同)は、半年前から付き合い始めた彼には、ピルを飲んでいることを隠しコンドームを使い続けている。避妊に対して、彼がどんな考えを持っているかも知りたかったし、過去の性体験が分からず、病気に対して不安があったからだ。「ただ『大丈夫だよ』なんて言う無責任な男だったら願い下げ。これからは妊娠に脅えないで私が相手をふるいにかけることができる」

 ピル解禁の必要性を積極的に訴えて続けてきた日本家族計画協会クリニック(東京・市ヶ谷)所長の北村邦夫さんは、カップルの間でピルが話題に上ることを歓迎している。それが避妊を含めた2人の性を考える大切なきっかけになるからだ。「ピルを使い始めたことで、お互いの関係を深めているカップルも増えているように思う」と話す。

 北村さんに紹介された短大生の薫さん(21・同)と、社会人の和也さん(21・同)のカップルはピルの代金を折半している。そのことについて、「2人の間の事だから当たり前」と口をそろえる。

 こんなカップルはまだ少ないが、これまでほとんど1人で来院していた女性の中に、パートナーを伴う人が目立ってきた。そろって性感染症の検査を受けるカップルもいる。北村さんはピルが日本の男女関係を今後どう変えていくか、楽しみに見守っている。

http://www.yomiuri.co.jp/feature/sfuukei/fe_sf_19991113_01.htm