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1999年11月09日(火) 00時00分

(10)本命以外に“予備の”恋人読売新聞

◆1人に絞れず 独りは寂しく 居場所探し

 東京・池袋に住む高校三年生の景子さん(18・仮名)愛用の手帳は、丸い小文字でびっしりと埋まっていた。遊びやデートの予定、1日の出来事などが書いてあるという。

 「この前カレシに手帳見られて、別の子とのエッチがバレて、別れちゃった」。はやりの厚底ブーツに、ショートパンツの彼女はあまり懲りているふうもない。「男だって浮気するし、いろんな人と経験したい気持ちってあると思う」。仲良しの由香さん(18・同)も「カレシ一人だけだと、いなくなったら寂しいよね」と横から口を挟む。

 アンケート調査を基に今の若者の恋愛意識を分析した「現代日本フツーの恋愛」の著者で東京学芸大助教授の山田昌弘さん(家族社会学)は、若いカップルの間で、本命の恋人のほかに、予備の彼、彼女を“ストック”として持つ傾向があると指摘する。

 今年の初夏に、関東圏の大学生の男女約900人を対象に行った調査で、恋人以外の最も親しい異性との関係を聞くと、「二人きりで親しく話す」が一番多く36%。「二人きりで出かける」13%、「セックスすることがある」も5%だった。

 ストックがあれば、いつも強い立場に立てるし、情熱が冷めたり、嫌な面が見えたらすぐにバイバイできる。山田さんは「昔ほど一人の人への思い入れがなくなった」と言う。かつて、恋愛の到達点だったセックスや結婚も、もはや特別な意味を持たなくなった。

 首都圏の高校生をターゲットにした月刊雑誌「東京ストリートニュース!」の編集長をつとめる藤林仁司さん(42)によると、高校生カップルの恋愛サイクルはますます短くなっているそうだ。「普通は2、3か月、長くて半年で、男女ともに次々と新しい恋人を見つけている子も少なくありません」と話す。

 街でクラブで、インターネットを通じて、異性との距離が近くなった。だれか一人にこだわらなくても、次のだれかと簡単に知り合える。「メールアドレス、携帯電話の番号をたくさん知っている子は尊敬される。顔が広い子ほど男女を問わず人気者なんです」

 同誌編集部が開いているホームページの掲示板に、高校生たちが携帯電話で送ってくるメールには「今、すっごく寂しいの」「今日、超ヒマ、だれかメールちょうだい」など、「つまんない」「退屈」「暇」という言葉が多いという。ほんの短い時間も、一人でいるのは寂しくて、とにかく自分を楽しませてくれるだれかがほしい。「表面的な付き合いに思えるかもしれませんが、一見自由に見える彼らなりの懸命の居場所探しとも言えます」と藤林さん。

 景子さんは、友達と街で楽しく遊びながら、一人になると、時々「だれかと互いにハマれたら幸せかも」と思うことがあるという。

 「私だけを一直線に見てくれる男がいて、私もその人しか見えなくなればハマるかもしれないけど……。今の時代、そんな男、絶対いないよね」

http://www.yomiuri.co.jp/feature/sfuukei/fe_sf_19991109_01.htm