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1996年04月25日(木) 00時00分

オウム麻原被告、罪状認否を留保 初公判で意味不明な意見読売新聞

 オウム真理教の元代表・麻原彰晃(本名・松本智津夫)被告(41)の初公判は24日午後も、東京地裁刑事7部(阿部文洋裁判長)で続けられ、地下鉄サリン、元信者の落田耕太郎さんリンチ殺人、麻酔剤密造の3事件の罪状認否が行われた。しかし、麻原被告は、宗教的用語をちりばめ、意味の取りにくい意見を約3分間陳述したものの、起訴事実を認めるかどうか肝心の認否は明らかにしなかった。これについて同被告の国選弁護団は「認否を留保する」と補足説明した。きょう25日の第二回公判では、検察側が3事件の冒頭陳述を朗読する。

 初公判で最も大きなポイントだった罪状認否は午後4時30分から行われた。裁判長から、起訴事実についての意見を求められた麻原被告は「絶対の幸福を得られるように、お手伝いをしたいと思う心、マイトリー、聖慈愛の実践」などと特異な言葉を多用した意見を述べた。

 陳述の中で、「聖慈愛などの実践を行うことで、私にふりかかる不自由にとんちゃくしない」といったことも述べたため、阿部裁判長が「それは起訴状の内容について、『実践』として行ったということか」と聞き返した。

 これに対し、弁護団が「それは弁護人の意見陳述で述べたい」とさえぎり、麻原被告は起訴事実を認めるかどうか、明確にしなかった。

 続いて、渡辺脩弁護団長は「起訴事実に関する認否を留保するということです」と説明した。「認否留保」は、罪状について何も明らかにしないという点では「黙秘」と同じだが、「留保」は公判のどこかの段階で認否を述べるという含みがある。しかし、弁護団はいつどのような状況になれば認否を述べるのか、についても明らかにしなかった。

 また、弁護団は「社会的予断に左右されず、公正な裁判を実現していくことが必要だ」と意見を陳述。「地下鉄事件の共謀に関する証拠を検察側が事前に開示しないのは問題だ。このため弁護団は、問題とされた被告の行為が何なのか、今も具体的にはわからない」と述べた。

 検察側はこの日、地下鉄事件の3807人の死傷者全員の名前や治療期間、被害に遭った場所をすべて読み上げたが、朗読には休憩時間を除いても約3時間50分かかった。

 ◆被告弁護団の対応を批判 東京地検次席

 麻原彰晃被告の初公判閉廷後、東京地検の甲斐中辰夫次席検事は記者会見し、「地検としては迅速かつ適正な裁判を求める刑事訴訟法の趣旨にのっとり、全力を挙げて公判に取り組む」とコメントした。

 麻原被告が罪状認否を留保したことに対しては、甲斐中次席は「検察側としては手持ち証拠の開示は一般事件以上に積極的に行っており、現段階になっても認否ができないということは理解できない」と、被告弁護団の対応を批判した。

 麻原被告の意見陳述の内容については「宗教家でないのでコメントできない」と述べた。

http://www.yomiuri.co.jp/features/kyouso/past/ky19960425_02.htm