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1996年04月25日(木) 00時00分

麻原被告すべて指示 殺人容認の教義実行 検察が冒頭陳述読売新聞

 オウム真理教の元代表・麻原彰晃(本名・松本智津夫)被告(41)の第二回公判が25日午前10時から、前日の初公判に続いて東京地裁刑事7部(阿部文洋裁判長)で開かれた。検察側は、初公判で麻原被告が罪状認否を留保した地下鉄サリン、落田さんリンチ、麻酔剤密造の3事件について冒頭陳述を行い、いずれも麻原被告が教団幹部らに指示して実行されたと指摘した。検察側は、麻原被告が90年4月ごろから「現代人はすべて悪業を積み重ねている」として一般人も「ポア」の対象に含め、無差別テロを容認するようになったと主張。地下鉄事件は捜査かく乱の目的とともに麻原被告にとっては、この「ポア」の教義の実践でもあったことを、新たに明らかにした。

 ◆証拠申請1万点を超す

 約4万字にのぼる冒頭陳述では、まず、教団の教義に言及。87年1月の段階で、「グルの命令」による殺人を正当化する「ポア」の考え方が説法で示されていたことを指摘した。

 「ポア」の対象は当初、教団への敵対者とされていたが、その後、敵対者の家族にも向けられるようになった。さらに、総選挙に完敗した2か月後の90年4月には「現代人はすべて悪業を積み重ねているから、ポアすることで魂を救うことができる」とし、一般人への無差別殺人も容認するようになったと指摘した。

 冒頭陳述によると、地下鉄事件については、昨年2月28日に教団幹部が起こした仮谷清志さん拉致(らち)事件で教団に対する強制捜査が近いと危機感を抱いた麻原被告が3月18日未明、車中で「科学技術省大臣」故村井秀夫幹部や顧問弁護士の青山吉伸被告(36)らと協議。首都中心部を大混乱に陥れるような無差別テロ事件を起こすことが強制捜査を不可能にし、警察組織に打撃を与えるとともに、「ポア」の教義にも合致すると考え、東京の地下鉄車内でサリンをまくことを決意。「厚生省大臣」遠藤誠一被告(35)にサリンの生成を指示、村井幹部に「お前が総指揮でやれ」と計画の実行を命じた。

 その際、村井幹部は実行役に「科学技術省次官」の横山真人被告(32)ら4人を選んだが、麻原被告はさらに「治療省大臣」林郁夫被告(49)を加えるよう指示した。このあと、村井幹部が「諜報省大臣」井上嘉浩被告(26)らと、地下鉄霞ヶ関駅を通る営団地下鉄3路線の5列車にサリンをまく具体的な計画を立て、5人の実行役のほか、「自治省大臣」新実智光被告(32)ら5人を送迎役に選んだ。

 林被告らは、同月20日午前8時ごろ、村井幹部から受け取ったサリン入りのポリ袋を傘で突き刺して5列車内でサリンを発生させ、3807人を死傷させた。実行役から、報告を受けた麻原被告は、犯行は自分の意思に基づくものなので、安心するよう述べるとともに、「ご苦労。これはポアだからな」などと言葉をかけた。

 また、落田さんリンチ事件の冒頭陳述によると、落田耕太郎さん(当時29歳)は94年1月、教団施設で療養していた女性の治療法に疑問を抱いて教団を抜け出した。落田さんは同月30日、女性の長男の保田英明被告(28)と2人で、女性を救出するために山梨県上九一色村の第六サティアンに忍び込んだが、井上被告らに捕まった。麻原被告は「ポアするしかないか」と幹部らに落田さんの殺害を提案し、保田被告に「お前は帰してやるが、落田を殺せ」と命じて、落田さんを絞殺させ、遺体をマイクロ波加熱装置で焼却させた。

 冒頭陳述のあと、検察側が1万点を超す証拠を申請。午後には、これについて弁護側が証拠採用に同意するかどうかの意見を述べ、同意証拠の取り調べが行われる。

http://www.yomiuri.co.jp/features/kyouso/past/ky19960425_01.htm